いつ終わるかわからないPHANTOM語り。
この記事で一応終わりとしたい(笑)。
元々オペラ座の怪人は好きでALW版以外も見ていますが、このスーザン・ケイ版の特徴はというとファントムの一生を描いているというところ。
そして芳樹さんバージョンの場合一人の役者が子供から最期までを演じているというところがものすごいものがあるなと今回初めて生で観て改めて感じた次第。

初演はPART1と2が時期が違っていて今回連鎖公演として同時期に上演されたため、初演よりもより、キャスティングが考えられたものだと感じました。
クリスティーヌとルチアーナが同じキャスト(これは前回松本さんがそうでしたが)、船戸さんと関戸さんが常にペア(マドレーヌとシャルル&バリー、タキカーンと王女)。

そして奴隷少女とデューニカが同じ人(田中くん)が演じるというのも考えられている。
どちらもエリックにとっての性的象徴である点。
子供エリックとシャルルを同じ人というのは前回の林さんと同じであり、ここは外せないところでしょうが。

どちらだけ一方を観ても一応話は完結はしているけれど、特にPART1だけだとやはりつらいな。
本当に初演の時は皆さんどう感じたんだろう、「To be continued」で終わっていたわけで(笑)。
やはり1・2観て初めて完結だろうし。
これはかなり難しいのかもしれないのですが、これ1・2わけないで全幕通しでやるバージョンがあっても良かったのになとも思うのです。
蜷川さんのところとかでよくあるやん、5,6時間ぶっ通し(笑)。
そしたら、PART2の回想シーンを減らせるだろうから(PART1を観てない人もわかりやすいように入れている部分もあるので)、
時間をもう少し短縮できるかもしれないよ、5時間くらいにw

それでも初演と比べると冗長だった部分をカットしているところも多いのでテンポよくなっていて見やすくなっていたとは思います。
あとは衣装やメイクが綺麗。

カルロッタが美人すぎる(笑)。
いちばん驚いたのは11月初めて生で観た時の感想でも書きましたが、舞台美術。
プロジェクションマッピングの効果であの小さな劇場が奥行きがある舞台になり、とてもこの規模の劇団がやるレベルではない。
ただ、裏でどたんばたんと聞こえるところがいとをかし(笑)。
本当にみんな全力で働いていたんだろうなというのが想像できます。
あとは幕が結構ガタンガタンと開いたり閉じたりしていてあやういなとドキドキしていましたが、DVD収録の回に紗幕が壊れたそうで(苦笑)。
そのあたりはもったいないなあと感じるもそこがまたいいところでもあるんですけどね。

では章ごとに感想を。
DVDを観た時にそれぞれの感想を残していますので、初演との違いやまだ書いていなかったことなどを中心で。

【第一章 産み落としし者】

初演の「産み落とし者」から変更。こちらの方が日本語として正しいですね。
演出の違いをいちばん感じたのはこの章。
他の章はそれほど印象は変わらないけれど、この章がいちばん初演と違ったものを感じた。
マドレーヌが変わったのも大きい。
初演の両マドレーヌともエリックを愛することを拒否するもエリックの底知れなさに強く惹かれていくよう感じましたが、関戸マドレーヌは愛したくても愛せないという焦燥、そして次第に愛を感じていくというように感じました。
芳樹さんに絞って書きますと、芳樹さんの演技がまた違っていたんですね。
初演の時は本当に得体のしれぬもののようだったが、今回はより人間的になっていた。
だからか普通の姿だったら幸せに暮らせた親子だったのにというのがわかりやすくなっていたのですが、
そこの部分は松本エリックとの方がより感じることができました。
私は初演の青木マドレーヌとの不協和音が好きだったんですよね。
どちらがどちらを狂わせているのかわからないあの空気。
演出の違いと言えば、初演では村人たちがエリックたちを襲うところは後ろだったのが前で演技するようになった。
なので初演よりもより現実味を帯びたため、初演で感じた「閉じた2人の世界」が少し薄れたように思います。
いちばん大きいのはマドレーヌとバリーの逢引を窓から見ているシーン、2人の会話を寝た振りして聞いているシーンが追加されたことかな。
あのシーンを入れることによってより、エリックの人間味を感じた。
逆に羊飼いの人形に狂わされていく描写が減ったため、おどろおどろしい雰囲気がなくなったように思います。
結構そこが好きだったのに(笑)。
最後に本当に根本的なことで私の理解力が足りないからだと思うのですが。

なんでエリック家を出たの(笑)?

あのままいても幸せになれないのはわかっているけれど、その部分がまた初演と印象が違ったのです。
初演では絶望故に出て行ったように感じたのですが、バリー先生との部分を強調したことによって身を引いたのかとも思えるのですね。
バリー先生おもいっきり胡散臭いけどな(笑)。
なぜ船戸さんのバリー先生は結婚詐欺師にしか見えないのか(ひでえ)。

【第二章 産み落とされし者】

ジプシー編はそれ程初演と印象が変わらず。なのでさらっと。
ジャベールは下衆い、下衆いんだけどやはり奥田さん自身の人の好さが出ているような気がします。
私は堀川ジャベールがいちばん好きだな。
征服欲と、どこに触れたらエリックが嫌がるかというのがわかっているいやらしさをいちばん体現していたように思います。

ジプシーダンスは前の振付の方が好きだな、ちょっと物足りない。
でもお姫様抱っこは萌える(笑)。

実は田中くんの演技を生で観るのは初めてだったのですが、どの役もうまいなあと思った。
デューニカが持っている女のいやらしさがすごくうまい。

そして藤原さんの老婆は遊びすぎだと思います(笑)。

【第三章 死にゆく者】

両ジョヴァンニは続投。
なので更に深みを帯びていたと思います。
ただし、組み合わせはチェンジなので印象は変わっていました。
曽世さんのジョヴァンニは松本さんのエリックの方が合っていたように思います。
前回やはり親子ほど年が離れている設定には見えなかったため。
そして笠原さんのジョヴァンニとの相性の良さが想像以上。
第二章までであれだけ酷い目にあっていたのに、魂は損なわれていなくてあんなにきらきらと輝いてとても良い子なのはエリックの本質がこうなんだろうと思わせる、非常にそこが泣けるポイント。
ジャニコロの丘の映像の美しさとあいまったエリックの煌めきが本当に美しくて美しくて。
「お前はいい子なんだよ」という言葉がとても心に響きます。

だからルチアーナさえあんなわがままで癇癪持ちでなければ(涙)。

最初に観た時の久保ルチアーナはそれほどうざく感じず、2回目ではとてもうざくていらいらして、
最後に観た時はルチアーナの感情を表現しようにも未熟であるが故にできないいらだちというのがすごく伝わってきてルチアーナも可哀想と思えるようになった。
なんだかんだいってジョヴァンニはルチアーナに逆らえない、やはりいちばん可愛いんだろうなと思わせるルチアーナでした。

で、ずっと疑問なこと。

この舞台版では初恋のルチアーナに似たクリスティーヌに出会って一目ぼれという設定だそうです。
しかし、ルチアーナはエリック好き好き好きなのはわかるけれども、エリックがルチアーナを想っていたように感じないんですけれど(笑)。
ルチアーナのことを意識はしていたように思うのですがそのへんどういう演出なのか気になるところ。
やはりクリスティーヌは母マドレーヌに似ているから惹かれたという設定の方が最後のキスの重みが違うんと思うんですけどね。


本当にどうでもいいことですが、なぜか「すいとう」という言葉が芳樹さんの場合「水筒」に聞こえて仕方なかった。
松本さんはちゃんと「出納」に聞こえたのに。
あと、「よくこんな俗っぽいもの~」というセリフで必ず笑いをとっていた(笑)。
あの間合いが最高にうまい。

【第4章 抗い難し者】

今ね、チラシ見ながら入力しているんですけどなぜここから漢数字じゃないのか(笑)。
なんか変だけど合わせます。

ナーディルは石飛さん続投。
石飛さんの丁寧な演技が印象的でした。
芳樹さんとのコンビが最初しっくりこなかったのですが(笠原さんとがしっくりきすぎて)、
数こなすことによってしっくりくるようになりました。
10年以上舞台上で会話したことないということだから仕方ない(笑)。

深山さんのレイザーとは本当に楽しそうに可愛がっていましたが(深山さん好きすぎるw)、レイザーとしては宇佐見くんの方が好みです。
深山さんのレイザーは唐突に身体悪くなって死んじゃったって感じがしたのですが、宇佐見くんは徐々に悪くなっていた感じ。

で、ずっとペルシャ編だけがなんだか異質なんだと考えていたのですが、このパートだけエリックが奇形だからということで疎まれているわけではないからだと。
いや、実際には奴隷少女にも拒否られるし、他の人達も内心は嫌がっているだろうが、大后やシャーの後ろ盾があるとはいえ表立っては疎まれていない。
最終的に彼らが疎むようになったのは奇才であるが故の脅威からだから。

でもここのパートは原作読まないと本当にわからないなって思いました。

シャーと大后の同期で親子コンビですが、舞台上では全く絡みがなかった(笑)。
シャーは本当にバカ息子っぽかったなあ(褒めてる)。大后は初演の曽世さんの印象が強すぎたのですが、すうさんはすうさんでまた強烈なキャラクターでした。

これまたどうでもいいのですが、役人(兵士?)たちの衣装が忍びの者に見えて仕方なかった(笑)。
なぜそこで和なんだろうといつも考えてしまった。
多分牧島さんや仲原さんが和風顔だからかもしれない(笑)。

大后のおつきの人である久保くんがなんとも艶めかしくて良かった。

傾国の美女でスピンオフが作れそうなくらい綺麗(笑)。



【第5章 抗いし者】【オペラ座編】

オペラ座が出来る前と出来てからは章が違うのか?

ガルニエは仲原さん続投。
初演でも感じましたがさらに温かみを感じる素敵なガルニエでした。
今回いちばん心に響いたのは「我々の勝利だ」という台詞。
ナーディルの友情は見守り系だと思うけれども、エリックにとって初めて仲間と認められた人ではないかと思います。
エリックは決して一人ぼっちではなかったんだなと。

オペラ座が出来上がってやっとクリスティーヌ登場。
5番ボックスでクリスティーヌを見初めるエリックですが、隣のメグが可愛すぎてけしからん(笑)。
製作発表でしたっけ?芳樹さんが緊張している久保くんに「メグにいっちゃうかもしれないよ」とからかったらしいですが、これはメグにいっちゃう(笑)。
それくらいキラキラしていた松本メグ。

オーラ消さないと(笑)。
カルロッタに呼び出しうけるクリスティーヌに「頑張って!」と励ますシーンもあざといくらいに可愛かったです。

最初観た時ペルシャ編で1幕終わりかと思ったら、まだまだ続いていてどこで1幕終わり?と戸惑いました(笑)。
あとつっこみたいところといえば、「お茶を淹れてくれないかい」とあんなに頼んでいたのに、やっとクリスティーヌがお茶を淹れに行ったらどっかに行っちゃった。
お茶要らんのかーい(笑)。
それとポリーニさんとおつきの人の暴走がひどかった。
特に土曜日は倉本さんがおかしすぎて本気で藤原さん笑ってたもの。
ちなみにその回の物販がこの二人で異常に楽しそうだった(笑)。

さて、オペラ座といえばクリスティーヌがいちばんのカギかと思います。
この久保クリスティーヌを受け入れられるかどうかが、今回の「PHANTOM」という舞台を受け入れられるかという肝になっていた。
他の人の感想を読んでもそう感じました、ダメな人はダメだろうなと。
私自身はクリスティーヌ自体「どっちかはっきりしろー」と思うので好きなキャラクターではないのですが、
このクリスティーヌは「悩むのも仕方ない」と思わせる初めてのクリスティーヌだったかもしれません。
姿形だけではなく魂までもが美しいクリスティーヌと魂が惹かれあうというのを具現化したらこうなるのかと
思わせられたのがクライマックスのクリスティーヌのキスでした。
本当にいつ観てもゾクゾクした。
その前に「おまえなんていらない」という心からの叫び後むせび泣くエリックに「何がお望みなの?」と呼応するクリスティーヌの美しさがたまらなかった。
千秋楽では特にここがぐっときました。

久保くん、しっかり芳樹さんについてきているよというところもぐっとくる(笑)。

美しいといえば、オペラ座の地下へいざなうシーンも美しかったのですが、クリスティーヌが地下通路を一人歩くシーンも美しかった。
あの光景はサンモールまでの道で体感できます(笑)。


これはミュージカルではないので誰も歌いませんが、一貫して芳樹さんの動きが本当に音楽を奏でているようで美しかったです。

まさしく「音楽の天使」」だったなとこの最終章を見ながら感じていました。


曽世さんのラウルは締めは素晴らしいけれど、若い時のシーンでもやけに包容力があるのはこれもジョヴァンニさん入っているからなのだろうか(笑)。
実際PART1では父娘ですしね。
ラウルと言えば観る度に「10歳の頃から秘密を守ってきたじゃないか」という無邪気なセリフが頭に残るようになったのですが、これは最後に墓場まで秘密を持っていくということに繋がるからなんだと気づいてこれまたゾクゾクした。

クリスティーヌにはずっと心の中にエリックがいたけれど、そんな彼女をラウルは丸ごと愛した。
だからこそエリックは最期にラウルに彼女を託したんじゃないかと。
そしてクリスティーヌもエリックへの愛とは違った愛をラウルに感じそして愛していたと思うので、ラウルは決して不幸ではないと思うのですね。

自分が生きていた痕跡を残したくないと持っていたものを全部破壊したエリックだけど、ナーディルやラウル(オペラ座建てた後は出てこなかったけれどおそらくガルニエも)の心の中には生きているんだろう。

トーマの「二度目の死はない」を思い出しました。
だから、エリックも決して不幸ではない。
今まで観たオペラ座の中でいちばんのハッピーエンドだと思います。

大きく変わったのはエピローグ部分。
クリスティーヌとシャルルのシーンを追加したが良かった。
シャルルの活躍を見守るクリスティーヌという図はこれまでの話を観てきた観客にとっては色々感慨深い。
ただ、アイーダの一節を朗読するところがとってつけた印象を覚えるのはやはり久保くんの技量不足によるのかもしれません。
クリスティーヌとしてはその拙さがまた良かったのですがこの締めの部分では弱い。
ここはやはり松本・関戸クリスティーヌがうまかった。

エリックとシャルルが交叉するシーンはとても倉田さんらしいと思えるシーン。
決して交わることがなかった二人だけれども深く深くつながっていると感じさせられるところが心に響く。

「仮面を取り、ただそれだけ」。

長い旅路が終わったと感じさせられる台詞でした。

そして私の長い反芻の旅も終了(笑)。
本当に美しくて心に響く舞台が観られて幸せでした。
惜しむべくはもう少し間を空けて観たかったな。
いつか近いうちに再演を観られることを願って。
その前にDVDだ!