「オペラ座の怪人」がなぜ「オペラ座の怪人」となりえたのか。
スーザン・ケイ原作「PHANTOM」を2011年PARTⅠ、2012年PARTⅡとして上演した舞台をⅠ・Ⅱ連鎖公演として再演。
DVDで初演は観ていましたが生でいつか観たいと切望していた作品でした。
PARTⅠは少年期、PARTⅡは青年期から壮年期としてファントム(エリック)が生まれてから死ぬまでの一代記であります。
主役のエリックを演じるのは、初演から続投PARTⅠ・Ⅱとも山本芳樹さん、Wキャストで同じくPARTⅡ続投笠原浩夫さん、そしてPARTⅠは初役松本慎也さん。
合計4パターンの上演となります。

と、知らない人向けに説明文入れてみた(笑)。

今回観たのは芳樹さんチームでマチネPARTⅡ、ソワレPARTⅠの遡り公演。
本当は1→2で観たかったんだけどこれはこれで不思議な感覚味わえて面白かったです。
アフタートークでおっしゃってましたが、なんと通しでやるのこれが初めてだって(笑)。
PART1を2回、PART2を2回というのはリハ→本番であったけど今回初めてだったというのにびっくり。
そしてこのマチソワをして今頃ですが気づいた。
なぜ、芳樹さんチームのマチソワが休演日前に集中しているからか。

6時間分出ずっぱりでこの分量だから死ぬわ、そりゃ(笑)。

その後、アフタートークも駆り出されていましたがもう本当にぼーーーーーっとしてましたよw
さすがに物販はマチソワとも免除されていたわ(笑)。


まず最初に。
ユーリを観て「何この人すごすぎる」となりずぶずぶはまって今に至るわけですが、今回4歳から最期までのエリックの長い長い旅路を観て、山本芳樹という役者の凄味と引き出しの多さに改めて圧倒された6時間でした、
初演でも圧倒されたのですが、更に深みを増したような気がします。
長い長い一人芝居だという印象だった初演に比べて、今回他者との関わりを強く感じた芝居になっていたように思います。
それによって観ている方がより、エリックの人生を寄り添うようにたどることができる感覚を更に味わえるようになったのではとも思います。
これは多分周りの人物についても更に掘り下げたんだろうなというのを感じました。
エリックは忌み嫌われただけではない、ちゃんと愛されていたんだということが初演よりも感じることができました。
非常に重厚な芝居を観たという充実感を味わえる作品だと思います。

「劇団四季のオペラ座の怪人はすごいらしい」という名キャッチフレーズがありますが、本当に「スタジオライフのファントムはすごいらしい」ので特にオペラ座好きな人には是非食わず嫌いなく観ていただきたい。
他の演目ではあまりおしつけるようなことは言わないのですが(好みの問題があるので)これは観ないともったいないと感じます。
私なんて東京に住んでいたら毎日でも行きたいよ、ほんまに(笑)。

そして今回生で観て思ったことはDVDとの違い。

なんといっても映像美術。
これほど違いがある舞台は初めてでした。
生でしか味わえない美しさでこれだけでも観る価値があると思います。
何が違うって色です。
オペラ座が出来上がってから明るい色に変わる時など息をのむくらいの美しさでした。

ところで色んな演目を観たりイベントに参加したりで役者さんのキャラだとかを知るのは非常に楽しいのですが、それにはデメリットもあって観ていても中の人のキャラが脳内でちらつくという時があります(笑)。
それから前こんな役していたなとかこの人とこの人は前この演目で絡んでいたなとか。
それが今回全くなかった。役を役として観ることができました。
また、決して座り心地のいい椅子ではないためお尻や肩腰にくるかと思ったけれども集中して観ていたからか全く気になりませんでした。
どちらかというと同じ劇場でやった「大いなる遺産」の時の方がばきばきだったかな。
幕間があるかないかの違いがあるかもしれないけれど。

で、初演との違いに話は戻して。
ラストシーンがいちばん変わっていましたね。
その他にも色々マイナーチェンジしていましたが、細かくはDVD観ないとわからない。
でも今観るのは上書きされるからやめとく(笑)。
マドレーヌの「死ねばいい」というセリフがPARTⅡ頭にしかなかったのが第1章本編にも追加されたため唐突感がなくなった。
芳樹さんは演技もかなり変わっていましたが(どちらかというとナチュラルになった)、動きも変わっていた。
ジプシーダンスの後自分でも踊っているところが増えていたり、檻をぐるぐるされる時自分もぐるぐる回っていたのがずっとうつ伏せだったりとか。

それぞれの章でがっつりと絡む相手が初演とみんな違っていたのも印象が違う要因かも。
その中で笠原さんのジョヴァンニとの絡みがいちばんしっくりきました。
私はPARTⅡよりⅠの方が実は好きで、その中でも第1章と第2章が好きなのだが今回いちばんぐっときたのは第3章でした。
本当に2人に流れる優しい時間がとてもたまらなく甘くてそれだからこそ最後の悲劇が痛く突き刺さる。
昔は絡むことも多かったのかもしれませんが、DVD化されているのを観る限りはあまり2人が直で絡む芝居をしているのを観たことがなかったのでこんなに息が合っているとは思わなかった。
ちゃんと老紳士と少年に見えますしね、前回の相手曽世さんは実年令差がほとんどないからかもしれませんがやはり若かったかな。

奥田ジャベールは芝居の相性がいいのは前回でもわかっていたのですが非常に安定していました。
いやあ、下衆いわ(笑)。
そして思いっきりエリックのシャツはだけてくれてありがとう。
シックスパック堪能しました、ありがたやありがたや(爆)。
でも凌辱(未遂)シーンはちゃんと見える席って少ないんじゃないのかと思われる(全然見えなかったんだよー)。
とっても熱い芝居で檻のカギ壊してしまったのもご愛嬌(笑)。

関戸マドレーヌは感想難しいなあ、なんかまだ手探りの様な気がする。
前回の及川・青木両マドレーヌがまたエキセントリックでそりゃこのエリックの母だよなと思わせるところがあったのですが、関戸さんの場合普通の人が奇才を生んでしまったという感じになるのである意味そこを強調した路線にいけばいいのかなとも思ったり。
「キスしてほしい」というところで前回の両マドレーヌは完全拒否だったけれど、関戸マドレーヌだと何回か頼んだら聞いてくれそうな感じがした(笑)。
関連したところでは続投の緒方マリー・ペローがまた芝居が変わっていた。
どちらかというと前より強い(笑)。
特に紗幕で話すときのセリフ回しが早口で間がなさすぎて気になりました。

石飛ナーディルはやはり笠原エリックの方が合っていると思います(まだDVDでしか観てないけれど)。
芳樹さんと合っていないというより笠原さんとのがあまりにもぴったりしているから。
ペルシャ編はこの話の中での位置づけがいちばん私にはわかりにくいのですが、深山さん本当にいったいいくつなんだよーというのが大きな感想(笑)。
なんであんなに子供が似合うの?

でも実はやはり初演の宇佐見レイザーの印象強いなあ。
ナーディルに話を戻すと、4章最後と最終章での「アデュー」との違いが今回すごく泣けた。

最後に久保クリスティーヌ。
母性あふれる松本クリスティーヌとどこまでもファントムについていきます的関戸クリスティーヌと違って、
ファントムとラウルの間を揺れ動く様がALW版クリスティーヌにいちばん近く感じました。
どちらかというと両クリスティーヌはほとんどファントム寄りだったため。
母からキスを拒まれてやっとキスをしてもらったということでうけるカタルシスは松本クリスティーヌでいちばん強く感じたのですが、なんというか久保くんって不思議な役者だよねと感じるのです。
容姿だけではなくなんともいえない美しさがあるんですよね。
正直技巧的にはまだまだ稚拙なところがあるんですが、今まで心を閉じていたエリックが惹かれたというのがわかる説得力がある。
それがおそらく倉田さんが彼を起用している理由なんじゃないかなと思うのですね。

ところでエリックからキスする時クリスティーヌが座っていたのは久保くんとの身長差をカバーした演出なのか(笑)。
お姫様だっこは小柄な松本さんの時でも少しふらついていましたのでどうかなと思ったら動き変えていた。 笠原さんの時はどうなんだろう(笑)。

女神の像のシーンや、ユリの花のシーンなどお気に入りのシーンを生で観られて嬉しかったのですが、
いちばん嬉しいのはカテコで仮面を外すところだ(笑)。
もうね、3時間ずーっと仮面をつけているのを観ているので、外した時のあの美しさと言ったら何?天使?

というわけで最後に萌えの感想で終わります(笑)。

で、そんなマチソワ直後にアフタートーク。
出演者は芳樹さん、笠原さん、緒方さん、司会曽世さん。
本当に直後なので芳樹さんも開口一番「どんなテンションでしゃべればいいのかわからない」でしたから(笑)。
そればかりかいつものおしゃべりおじさん曽世さんも切れ味悪くて多分みんな疲れていたんでしょうね。
さぐりさぐりやっていていつもてきとー笠原さんがいちばん盛り上げようと頑張っていた(笑)。
まったりしていてそれはそれで楽しかったけれど。
芳樹さんは前述通り、通しでやるのが今回初めてであるということと裏で色々あったけれどそれは公演が終わってから話すということで非常に気になるー。
「ではそれは伊勢ツアーで」という笠原さんのボケ(?)にも誰もつっこめず(芳樹さんお伊勢さん行かないから)。
きっと疲れていたんでしょう(笑)。
緒方さんはいつも通り飄々マイペースなのがおかしかった。
初演の時このマリーペローさんで初めて女役回ってきたということから普段からスカート履いて過ごしていたという話から笠原さん色々茶々入れていた(笑)。
あとはみんなこれから2→1、1→2どれくらいあるのかよくわかってないらしいw
今回の2→1はスターウォーズ方式だそうです、エピソードゼロだって(笑)。

次回は松本さんチームも笠原さんチームも観る予定。
どのように違うのか楽しみです。