27日ソワレSチーム、28日マチネBチーム各1回観劇。
キャストは公式HP参照(手抜き)。
原作は高校生の時に読んでいる筈なのですがまーったく覚えておらず(笑)。
確か新潮版で読みましたが、今回の舞台の為に新訳である河出文庫版を再読いたしました。
しかし、特に上巻がまーったく進まず(笑)。もう本当に苦行のようでしたが、下巻に入ると一気に読み進めることができて3時間くらいで読み切りました。
そんなわけで初見でのざっくりとした感想。
2時間15分幕間なし暗転なしのノンストップ。
その長さは全く感じず、逆に短く感じました。
この長い原作を枝葉ざっくざっく切り落としているためとてもわかりやすい分、最初は駆け足のようにも感じた。
苦行の様な上巻部分が特にざっくりと切り落としていますね。
ミセスジョーが亡くなるのも早っ!て思った。
ハーバートが単なる紳士指南役にすぎないのが物足りなかったり、モリーがなぜジャガーズのところにいるのかわかりにくかったり(手首をピップに見せるところとかは原作読んでないと意味が分かりにくいと思う)、 ハヴィシャムを捨てた相手が誰だったのかというのも説明はされていなかったり(セリフでにおわせているところはあったがはっきりとは言っていない)と描ききれていない部分はやはりこの短さだから難しいでしょうし、そこは枝葉の部分なのかなと思ったりもしますが、ジョーの温かさは原作通りで素敵でした。
ただどちらのチームにもその行間部分においてもう少し深み(特にSチーム)が欲しいと思った。
2チームを比較しての感想としましては、断然Bチームが好きです。
どちらのキャストもそれぞれ魅力的ではありましたが醸し出す世界観がBチームの方が好みであり、自分の中でしっくりときた。
そしてキャスティング・組み合わせが絶妙だと思いました。
特にシングルキャストである笠原さんのアダルトピップと山﨑さんのジャガーズはこの二人以外考えられない。
ずっと舞台に出ずっぱりなのにそう感じさせない、それでいて存在感を感じさせることにおいては笠原さんしか考えられないな。
物語を収束させる点においても。
そしてやっぱり山﨑さんはとにかくうまい。
常にクールでありながらも中には熱さを持っているところ。本当に素敵でした。
Wの組み合わせにおいてはシャッフルバージョンも気になるところですが最初から観られないの確定なので残念(平日ソワレ行けないよ)。
最初に観た時にエステラとハヴィシャムが変わると全く違ってくるのではないかと感じましたがその通りでありました。
しかし、ヤングピップは特に大きな違いはないかと思ったのですがこれもまた違っていた。
端的にいうとBチームはピップとピップをめぐる人たちの物語、Sチームはピップの成長物語という違い。
前者は物語が中心、後者はピップが中心という風に感じました。
松本さん自身が非常にニュートラルなので流れに流されている感じでしたが、関戸さんは流れに逆らっている。意思を持ったピップでありました。
鼻持ちならない感じや「取るに足らない」感が強かったのは関戸さんの方。
ピップとしての個性は関戸さんの方が好みだったんですが、全体の流れとしてはそのニュートラルな松本さんを中心としたところが好み。
青木さんのエステラがピップ同様自我が強いけれども自我を殺されてもがいているのに対して、久保くんのエステラは最初から自我がないけれども感情は揺れ動いている。
今回私の中で一番の出色は久保エステラだと思っています。
DVDなどで色々観て青木さんはこのような感じになるだろうと予測できていましたが、その予測通り美しく残酷なエステラでそれはそれで魅力的でした。
ただ、ずーっと観ていて何かピンとこなかった部分が久保くんのエステラでかちんとパーツがはまった感じ。
Bチームが断然好きである要因としては久保エステラにあるような気がします。
そしてそのエステラを育てたハヴィシャムも予想通り全く違っていた。
倉本さんのハヴィシャムには朽ちていく美しさがあり、芳樹さんのハヴィシャムには少女のまま時が止まった美しさがありました。
だから青木エステラ・倉本ハヴィシャムはより人間的であり、久保エステラ・芳樹ハヴィシャムは全く現実感がなく幻想的でありました。
下手奥の額縁の後ろに横向きで座っている芳樹さんの佇まいが美しくて言葉にならないくらい。
舞台セットが床に朽ちた花をあしらえていてたりして非常に美しいのですが、額縁の中の芳樹さんの美しさがまた絵画のようでこの世のものではない感が強かったです。
ぶっちゃけこの回は最前だったのですが、美しく儚げで気高いハヴィシャム様を堪能できて眼福でありました。
今思い出せるピンとこなかった部分としては、エステラがピップにハヴィシャムの過去を語るシーンを挙げます。
その部分がSチームは説明調で冗長に感じたのですが、Bチームでは感じなかった。
両エステラの滑舌の差もあると思うのですが、その時芳樹さんの方だけは踊っているんですよね。
踊りでハヴィシャムの過去からの闇を表現していてそれが彼女の哀しみを強く感じました。
他のキャストについて。
なんといっても奥田ジョーがいい!
最初に仲原さんの方を観て仲原さんのジョーも素敵だなと思ったんですが、 あの不器用だけれどもピップへの愛情たっぷりなところがより素敵でした。
ミセスジョーも肝っ玉ぶりがどちらもいいけれど、及川さんちょいちょいアドリブ入れてる(笑)?
ピップやジョーを叩くときに見えてないはずの笠原さんもついでに叩いてたよ!
絞首刑の見物人役では関戸さんが及川さんのお尻を触るのはいつものことなんでしょうか(爆)。
で、及川さんの裏役の方ですが、男装にしか見えないのはなんでや(笑)?
あまりにもミセスジョーが女性にしか見えないのでウェミックさんは男装にしか見えなかった。
緒方さんのミセス・ジョーは叩いたりする時にちょっと仲原さんのジョーに遠慮があったような気がしたんですが、及川さんは遠慮も何もありゃしない(笑)。
ビディーはどちらも可愛いけれど、若林くんの方が純朴な感じがした。
ピップにきつく言われた時に千葉くんのビディーは怒っているけれど、 若林くんのビディーは悲しんでいる感じ。
マグウィッチとモリーが表裏というのも面白いなと思いました。
どちらのマグウィッチも魅力的ですが、モリーの方はあのー船戸さんは出落ちですか(笑)?
ウォプスルは藤原さんシングルで正解だなあ。
ただ、27日は普通の声だったのに28日にはガラガラ声でびっくり。
前説から「お聞き苦しい声で申し訳ありません」だったのですが本当に辛そうだったので心配。
ハーバートは前述通り原作ではもっとおいしいんだけど、藤波くんはやっぱりうまいなと思いました。
フレッシュでは八木澤くんの存在感が光りました。
カミーラでも借金取りでもこんな役者さんいたっけ?と思う程のベテランっぽかったです(笑)。
さて、芳樹さんの裏役ですがね。
観る前から煽られていたからどうだろうとドキドキしていたけれど思った程ではなかった(どんなけひどいの想像してたんだ)。
顔芸はドリフターズのヒゲダンスの志村けんさんのようでした。
面白くする必要はまーったくないが私が面白いのでもっとやれやれ(笑)。
Sチームはこの日終演後トークショーがありました。
内容は「男たちのEXPECTATIONS」とタイトルで舞台への取り組みについての真面目なもの。
上手から関戸さん・青木さん・船戸さん・倉本さん・笠原さん・藤原さん。
最初に藤原さん進行で自己紹介の後、倉田さん登場で倉田さんからそれぞれへの役についての質問。
記憶に残っている限りで書きます(あやふやで申し訳ない) 。
関戸さんへはピップがどう変わっていくのかのスイッチについてだったかな。
ジョーの弟子になることになってエプロンをつけたところからピップは大人になったんだと思うっていう答えだったと思います。
あとは仲原さんが後輩だけど兄貴肌なので本当にジョーのように思えるということで
「奥田くんじゃなくて良かったわね」という倉田さん(笑)。あっでもクロッシングがあったわねとも。
そして青木さんへの質問は忘れちゃったんだけど、こんなに年もキャリアも離れた後輩がダブルなのも初めてだという話から、ドレスの着替えは裏エステラが手伝っているが背中とかお肌つやつやで自分がオヤジになった気分だとか、ファンデーションも自分の方が厚塗りでごまかしているとか若さに圧倒されていると延々語っていたため関戸さんに「もういいから」と途中で止められてました(笑)。
もう若くないからと連発する青木さんに「そんなことないわよ」と倉田さん。
フォローかと思いきや「久保くんとの違いは性格」とばっさり(笑)。
そして「青木くんと奥田くんをカップルにしたキャスティングがいちばん失敗したと思った。皆さんくすくす笑ってらっしゃるんですから」というのがいちばんおかしかった。
どこまでも奥田さんがオチなのか(笑)。
船戸さんへの質問も忘れちゃったんですけど(忘れっぱなし)、マグウィッチとモリーの表裏についてだったかな。
そして原作との時系列についての違いがあるので戸惑ったところとか。
モリーがエステラの実のお母さんであること(ネタバレです)をどうやって観客にわからせるかについて「うちは歌やってますから」ということで子守唄を使ったという倉田さん。
で、ここからあんまり時間がなくなってきたからか駆け足(多分青木さんのせいw)。
倉本さんへはハヴィシャムのキャラクターをつかむのに苦労していたけれどどこでつかんだのかというような質問だったと思うのですがこっちは答えを覚えていない(おい)。
どうしても感情を前に出してしまうので出しすぎないようにというスイッチをやっているうちにつかんだというようなことだったかな。
ちなみに倉本さんのつけまつげは笠原さんがつけてあげているらしい(笑)。
楽屋で隣は藤原さんだけど藤原さんがつけると目が悪いので逆になっちゃうからとも。
その藤原さんはキャスティング会議で最初に決まったのが自分だったけれどもそれはなぜか?と逆質問。
それに対して「だってこういう人なんだもの」とばっさりなのがまたおかしかった(笑)。
最後に笠原さんへ。というか笠原さんへの質問というより、ラストの演出について倉田さんがどうしても話をしたかったらしい。
ジョーさんバージョンではエステラがピップの手を取らないで終わるというものだったがどうしてもそこが倉田さんにはやっててしっくりこず。
ディケンズの原作では6つくらいパターンがあったみたいです。
そして開演1週間前にジョーさんがピップの手を取って終わるという脚本を作り直してくれたらしく、やってみてどうですか?という質問。
笠原さん自身もここで終わるのかと思いながらやっていたのでこのバージョンの方がしっくりくるということでした。
私も「希望」を最後に残すという意味ではこのバージョンの方が良かったなと思います。
それまで何度もチャイムが鳴ったけれどもそこだけは倉田さんが言いたかったところらしくそこでなんとか終わらせた感じ(笑)。
終演後27日は物販にいた関戸さんに「素敵でした」と告ってきて、28日はハヴィシャム様に告ってきた(笑)。
というか物販にいると思わなんだ。
至近距離でも美しいことといったらあれ何?天使?妖怪?←おい!
若干もたもたしていたのはご愛嬌ということで♪
次観るのは来年です。