では続き。前回書いた通り前編が断然好きなんですが、後編では最後に救いがあるところがいい。
これ、実際前編だけ観てたら消化不良だったんだろうなあ(「To be Continued」で終わる舞台はやはり消化不良だと思う)。

そして全編通して観た感想としては、真の主役はやはり林さんだと思う。
プロローグの子エリックの苦悩から、希望あふれるシャルルへつながる最終章。
この部分をいちばん描きたかったんだろうと思うし、このパートは彼しか考えられない。

大人になったエリック(ファントム)を演じるのはそのまま続投の芳樹さんと前編ではエリックを見守るジョヴァンニを演じていた笠原さんとのW。
色んな想いがそれぞれ合ったのでしょうがこのキャスティングは正解だったと思います。
持ち味が全然違うのでまた違った味わいを見せるWキャストでした。

笠原さんのファントムはすごく人間臭くて、奇形じゃなかったらきっと普通に幸せに生きていけたんだろうなというファントムだった。
しかも普通にかっこいい(笑)。

タッパがあるからマントばっさーが凄く似合うんですよね。
あのオーラと色香はこの劇団中ではさすがにいちばんだと思った。

ただの陽気なおっちゃんではなかった(笑)。
芳樹さんのファントムは異形というよりも異質なもの。

それは子供時代の時と同じ印象で普通の姿形でも苦悩していたんじゃないかと思わせる。
その抑圧から爆発したエネルギーがとんでもなくて、舞台を支配する力がすごすぎて圧倒される。
このすべてを巻き込んでしまう力に惹かれてはまってしまったような気がします。
そして芳樹さんかなりヒール高かったよね(笑)。

全体的には芳樹さんの場合、子供時代も演じているというのもあるからかもしれないが4歳から50歳までの長い長い一人芝居を観たという感覚を味わったのに対して、笠原さんの場合はエリックを中心とした群像劇を観たという感じ。
つまりは芳樹エリックコミュ障(笑)。

笠原エリックはなんだかんだいってちゃんと他の登場人物とコミュニケーション取れてるって印象です。


【第四章 抗い難し者】

その前のプロローグで子供から大人へチェンジする際に「見るがいい!」という林エリックと大人エリックのハモリがかっこいんですよね。
流れが自然なのは林→笠原なんですが、ハモリの美しさは林→芳樹かな。
さて、原作読んでいないからなぜイタリアからペルシャへたどり着いたのかがよくわかってない(笑)。
後編の方が原作読んでいた方がいいのかなと思う部分が多かった(きっと原作を読んでいたら話がつながっているんだろうなと思うところも)。
で、ペルシャパート長くないですか?なんかちょっと冗長な気がした。
そしてジプシーダンスはもっと観たいと思ったが宮廷の踊りはもっと短くてもよい(笑)。
このパートは笠原さんチームの方が断然いい。
ナーディルの存在が大きいのでしょうね。

ナーディルとの友情物語が大きいパートなので笠原さんと石飛さんとのがっつりとした芝居がぐっときた。
最後の「さらば友よ、また会おう」もそれまでの物語があるからこそ生きてくる。
SOMでの音楽祭で最後に別れるトラップ大佐とマックスおじさんを彷彿するシーンでした(芝大佐とてっしーマックスで)。
逆に芳樹さんチームはナーディルが客演の方だったからかな。

単体では悪くないですが、芳樹さんと組むと淡々とした仕上がりになってあまりナーディルの存在意義を感じることができなかった。

色んな登場人物が出てきますがなんといっても曽世さんの太后最高(笑)!
もうあのイケズぶり最高!

滑舌が良く、あんなに早口で良くかまないなあと思う程で毒吐きまくりがもうめっちゃ楽しい。
全編通して色んな役演じてらっしゃりますがこの太后がいちばん好きかもしれない。

ここでは当時フレッシュ・現Jr11のメンバーもいい役もらっていますが、宇佐見くんのレイザーがいいですね。
とても子供らしい子供で、庇護欲かきたてられる。
エリックやお父さんとの距離感などそれぞれのキャストにあわせて演じ分けている感がしました。
あと、ほんの一瞬の出番しかなかったのですが奴隷少女の藤森くんも印象的。
彼も退団しているんですよね、惜しいな。
翔音くんは「えらい人」枠なんでしょうか(笑)。

及川さんのヴァイオリン人形はズルいよね(笑)。だってこれ出来る人いないもん。
「ガラスの仮面」のマヤかと言いたくなるくらい完璧なお人形でした。
ただ、マドレーヌと同じ役者が演じることによって物語に何か意味を持たせていたのか、それともたまたまこのお人形役ができるのが及川さんしかいなかったからなのかがちょっとわからなかった。

【第五章 抗いし者】

そしてまあいろいろあってペルシャから追われたエリックさん(あらすじ詳しく説明する気まるでなしw)。
故郷に戻ってきたら3日前にマドレーヌがなくなっていることを知る。
ここのシーンはとても好きです。

マドレーヌの死に顔を見てキスができなかったエリックが初めて、自分にキスできなかった母を赦すという心情をとても丁寧に芳樹さんは演じられていて胸をうつ。
相対する緒方さんのマリー・ペローもいい。

後編ではシングルキャストで前編はせっきーとのダブルですが関戸マリーよりも私は好きです。
せっきーは毒のある役の方が似合う(笑)。
そこでマドレーヌの形見から「オペラ座」コンペの記事がある1年前の新聞が出てきたことによってやーっとオペラ座へ。
オペラ座までたどり着くの長かったなあ、ここまで4時間(笑)?

最初に出会ったオペラ座の建築家ガルニエとのシーンは心温まり印象的です。
あまりガルニエの出番はないのですが、ここは仲原ガルニエがいい。
Wの山崎さんはソツなくうまいのですが、恩師からずっと話を聞いていたエリックにやっと会えたという喜びや温かみが仲原さんの方が強く感じられてとてもいい。

エリックはガルニエに出会えて本当に良かったねと素直に思えるシーンでした。
「エリック」という呼びかけも優しいし、「7歳?それとも8歳?」という語りかけも優しい。

そしてやーっとクリスティーヌとラウル登場。メグはちょこっと、カルロッタも怪演でちょこっと(笑)。
蛙声のシーンもちゃんとありました。
クリスティーヌの衣装は何点あったんでしょうか?どれも綺麗で可愛らしいけど早替え大変そう。
クリスティーヌとラウルとの関係は芳樹さんチームの方が好みです。

というかオペラ座に入ってからはこっちのチームが好み。
ラウルはまっすぐで何も世の中のことを分かってないピュアさが欲しいのでその意味で大さんの方がしっくりきた。
でもラストの締めは曽世さんの方に一票だな。
クリスティーヌはどっちがええねん!といらっとさせられるがそのいらっとさせられるのが強かったのはマツシンの方。
だからか強くファントムがクリスに執着するのも伝わってくる。
関戸クリスティーヌは最初から従順にファントム派のような気がした。

さすがに男性がソプラノの歌を歌えるわけがないので歌は完全になしというのは正解だと思いますが、
ALW版に慣れていると「音楽の天使」はあまり感じられずちょっと物足りない。
ただ、その分エリックの心情に寄り添った演出でよりエリックに感情移入できたように思います。
女神像の芳樹さんは圧巻だった。言葉に出来ないくらい圧倒された。
生で観たら席が立てないレベル。

シャンデリア落下は映像でこんな風に表現してるんだーって思ったんですが実際これ生で観たらどんな感じだったんだろうとも思った。

女神像と並んで最大の見せ場であるクリスティーヌのキス。
これはマツシンの包容力が素晴らしい。
マドレーヌと子エリックとの回想とうまくリンクしていて、いちばん欲しかったキスがもらえたんだという感動。
うずくまるエリックを優しく抱くクリスティーヌが本当に母のようであり女神さまのようで美しいシーンでした。

そしてラストですが。
えっと・・・そこはLNDと同じなのですか(笑)?
いつの間に・・・(以下略・爆)。
しかし、前述通りここは林シャルルの存在感が生きてくるいいシーンです。
エリックの苦悩が救われ希望が残ったラスト。
そして「仮面を取り、ただそれだけ」という最後のセリフが心に沁みます。
トーマのラストの詩の朗読を思い出しました。

カテコはもう本当に本当にベタだなと自分でも思うけれど、仮面をバッとはずした時の美しさにときめく。
仮面をつけているから目を強調するためかアイライン濃いですが余計にそれがうつくしくてたまらない。
マントの裾をそっと手繰り寄せてしずしずと後ろに下がる姿のエレガントさと言ったらあれ何?天使(なんか壊れてきた)?

特典映像は両エリックのインタビューと笠原さんチームのトークショーと芳樹さんチームの開幕直前ドキュメンタリー。
トークショーはとびさんセーラームーンが面白すぎた(笑)。
両エリックのインタビューは千秋楽後だから出し切った感。
特に芳樹さんはまだ抜けきってませんね、ぽわんとしている。それも可愛い。
女神像のシーンについては「頑張るしかないですね、はははは」がもう可愛すぎて本当にあれ同一人物?って思ってしまう。
頬がかなりこけていて大変だったんだろうなと伺えます。
開幕前直前ドキュメンタリーでは演出家はソファーで役者は地べたでどっかの劇団と同じなんだなあと思った(注目するところそこですかいw)。
最後に本当の開幕前の様子が流れていたのですが、円陣組んだ後それぞれみんな気合を入れているのですが、
芳樹さんが真ん中で目を閉じてお祈りをして、その後ぱっと目を開けて大きく息を吸った時の美しさといったらあれ何?天使?←リプライズ。

やはり最後は萌えだらけの感想になってしまった。

合計12時間。堪能いたしました。
コメディも楽しいですが、他と差別化図るにはこういった重厚な作品の方がいい。この世界を表現することはこの劇団だからこそでしょうし、真骨頂を発揮できるんだと思います。
ただ、全力で頭に花つけて歌い踊っているのも大好き(笑)。

色んな引き出しがあるのがいいなと思いました。