友人たちにlolをインストールしたことを打ち明けた後、私は彼らに付き合ってもらいながら、AI戦を何度か繰り返しました。基本的な部分で分からないことも、色々と教えて貰ったり、lol用語の説明もしてもらいました。その中で私は、「フラッシュ」と呼ばれるサモナースペルを取得する必要があることを教えてもらい、その「フラッシュ」を取得するには、サモナーレベルを上げなければならない事も知りました。サモナーレベルは、そのアカウント、所謂プレイヤー自身のレベルのようなもので、そのレベルを上げるには色々と条件がありますが、とりあえずAI戦を繰り返すことでサモナーレベルを上げ、フラッシュを取得するのが、私の目先の目標となりました。どうやらこのフラッシュとやら、基本的にはどのレーン、どのチャンプを使うにも必須との事らしく(一部はチャンプの性質も踏まえて敢えて持たなかったり、戦略としてフラッシュを選択しないということもあるようですが)、これが無いとノーマルに突っ込んではいけない、ということではありませんが、戦うにはなかなか厳しいようです。
そうして私は何とかフラッシュを取得し、一応はノーマルに行く為の準備を整えることができました。前回ではよく分からなかったルーンというものも、まずは全てを説明しても覚えられないだろうということで、友人たちから参考になるサイトを教えてもらい、一先ずはそこを見て同じルーンを選択するという方法を取ることにしました。そして私はついに、緊張しながらも友人たちに引っ張ってもらい、初のノーマル戦へと乗り込むことになったのです。
初のノーマル戦デビューで選んだチャンプは、勿論ジンクス。AI戦でもずっとこのチャンプを使っていたので、ジンクス以外の選択肢はありませんでした。後は慣れた友人たちが、空いているところのチャンプをそれぞれピックしていく。もう相手はAIなんかじゃない、同じ人なんだ、と改めて考えると、より緊張して手ががちがちに固まる………。多分VCでも緊張するとか怖いとかそういったことを終始繰り返していた気がしますが、友人たちは優しく励ましてくれていました。サモナーズリフトに降り立つ5体のチャンピオン。ついに私のノーマル戦が始まったのです。
結果、ぼっこぼこにやられて終わりました。他のレーンを見ている余裕は全く無かったので、その試合のmidやtop、jgの状況は一切覚えていませんが、botレーンはただひたすらに死んではレーンに戻り、そしてまた死んで……を繰り返しました。AI戦の時には当たっていたこちらのスキルは全て避けられ、AI戦では対面しなかったよく分からないチャンプのスキルというスキル全てに当たり、友人のsupの懸命な介護も虚しく、ぼろ負けだったと思います。私はとにかく必死だったので、相手のbot二人がどんなチャンプだったのか覚えていない……、というより、ジンクス以外のチャンプの名前と顔がまだ一致していない段階だったので、実際その時もそれが何というチャンプなのか分からないままに戦っていました。
とにかく全く楽しくなかったことは、はっきりと覚えています。試合自体はもしかしたら勝っていたのかもしれませんが、ただ繰り返し死んでいただけの私は、ひたすらに相手の先輩プレイヤーにしゃぶりつくされただけで、ゲームに勝って試合に負けた、というのが正しいのでしょうか。とにかく本当に楽しくなかったのです。最早このぼこぼこ具合は、「悔しい!絶対に上手くなってやる!」というモチベにすらならず、
「もうノーマルなんか行きたくない。AI戦で十分楽しい」
と、ただ茫然とそんな事を思うのでした。
私のそんな様子が、空気に出ていたのでしょうか。友人たちは、私の良かった点を必死に探して褒めてくれようとしていました。初心者なのにあそこまでできるのはすごいよ!と、必死に励ましてくれて、私の中の消えかかっているlolの灯を何とか繋ぎとめようとしてくれていました。私のせいで、supをやってくれた人も終始レーン戦では蹂躙されていたというのに、それでも嫌な顔1つせず、ここが良かった、あそこもよかった、と褒めてくれるのです。そんな風に気を遣わせていることすら申し訳なくて、もはや泣きそうでした。ゲームで惨めな気持ちになって泣きそうになることなんて、私の人生の中では初めての経験で、その味は甘くてクリーミーで、こんな素晴らしいキャンディーをもらえる私は、きっと特別な存在なのだと感じました。
今では私がおじいちゃん。孫にあげるのはもちろんヴェルタースオリジナル。
なぜなら彼もまた特別な存在だからです。
その後、すっかり心が折れてしまった私を、友人たちは何度もノーマルに引っ張っていってくれました。どれだけぼこぼこにされても、私には購入したチャンピオンがジンクスしかいないので、このチャンプを使い続けなければなりません。今になって思うと、ジンクスは初心者にはあまりお勧めできないチャンプなような気がします。あくまでも私の経験談ですが……。それに、対面する相手の人も、味方の友人たちがそこそこlolをプレイしていて内部レート的なものが働いているのか、それなりの熟練者たちばかりなのです。何が何だか分からないまま殺される、という状態がずっと続くのは、なかなかしんどいものがありました。それでもやっていくうちに、少しずつチャンプを覚えていったり、もっとスキルを上手く使うコツ、CSを取る時もどんな時も、小刻みに上下左右動きまわって、相手のスキルに簡単に当たらないようにする、などと言った知識を得ることができました。まあ勿論、それでも1キル2キル取れればいい方で、毎回10デスは当たり前みたいな状態でした。
こうして書いてあることから感じられる通り、私はノーマル戦にデビューしてから、lolをこれっぽっちも楽しいと思うことはありませんでした。むしろその逆で、ゲームしてても永遠に殺されるだけなのでストレスばかりが溜まり、VCでもつい口数が少なくなりがちで……。「死んでもいいやー、初心者なんだし!仕方ない仕方ない!」というメンタルを持ち合わせていなかった私は、1回1回死ぬ事に悲しみに襲われ、また相手のプレイヤーが馬鹿にするように私の死体の上でエモートを出したり踊る姿を見ていると、もう二度とこんなゲームやりたくないとすら思っていました。
ではなぜ、私がここまでlolを続けることができたのか。そこでlolを辞めなかったのか。それには、2つの理由があります。
まず1つ目の理由は、その当時一緒にやっていた友人たちが、本当にlolが上手くてかっこよく見えたからです。彼らは謙遜して、口を揃えて「上手くないよ」と言っていましたが、私にとっては誰よりも上手く、かっこよく見えていました。勿論、どんなゲーム、どんなプレイヤーにも上には上がいて、特にlolのような奥が深い難しいゲームなんて、上を見ていたらキリがないでしょう。でも私にとっては、誰よりも上手く、こんな風になりたい、と思わせてくれる友人たちでした。
当時の私は、1戦2戦程ノーマル戦をやると、精神的にも肉体的にも疲労とストレスを感じて、それ以降は休憩と称して友人たちのプレイを配信してもらい、それをぼーっと眺めるという事が多々ありました。時には私の勉強になるようにとジンクスをピックしてくれて、そのプレイを見せてくれたりもしました。そのプレイは、当然ながら初心者の私とは全く違っていて、どんどんとキルを持ち、後半にかけて止まらなくなっていく暴走パンクガールを何度も目にしました。「こんな風にできたら、きっと楽しいんだろうなあ……」そうぼんやりと眺めて、楽しそうにプレイする友人たちを見守っているのが、その時の私にとっては何よりも楽しい時間だったのです。
今まで興味が湧かなかったチャンプも、友人のプレイを見ている内に、好きになっていったり、使ってみたいと思うようにもなりました。初めてチャンプのイラストを見た時、とても可愛いとかかっこいいとか思えなかったチャンプも、友人がそれを使ってキャリーしているのを見ると、「かっこいいな……。私も使ってみたい」と感じるのです。不思議ですね。そうやって配信を見ていくうちに、徐々にチャンプの名前やスキルを覚えていきました。
また、時には私から必死にお願いして、友人たちにcrashに出てもらうこともありました。友人たちはあまり興味が無い様子でしたが、普段のノーマルとは違って真剣にプレイする彼らを見て見たくなった私は、「お願いします!!!!」と頼み込み、友人たちはそれを断れないままに日程を合わせて、crashに出場することになったのです(勿論私は観戦者で、プレイするのは友人たち)。私はそこで、バンピックというものを初めて見ることができました。試合前に対戦相手が使っているチャンピオンを見る事ができて、そこである程度絞ってチャンピオンをバンするのか、それとも単純に自分が苦手とするチャンピオンをバンするのか。バンピックも試合の勝敗にかなり大きく影響し、とても重要なことなのだと知ることができました。たまに相手がラックスをバンしているのを見ると少し草が生えました(ラックス100万ポイント君もメンバーにいた為)。
crashでは、普段ノーマルをやっている時とは違って、みんなそれぞれ得意とするレーンを選び、得意とするチャンピオンを選んでいました。ノーマルでは「別に負けてもいいや、練習だし」という意識の中でプレイしているのもあって、crashでのみんなの「勝ちたい」という真剣な雰囲気が新鮮で、私は終始祈るように見ていました。相手のjgの位置を細かく報告し合ったり、サモスペ使用の報告、「〇〇したいから寄ってほしい」というコール等、ノーマルでは聞けない、見れない友人たちの姿を見れたのです。彼らが1勝をもぎ取った時は自分のことのように嬉しかったし、惜しくも1敗してしまった時は泣きそうな程悔しかった。私の中では、最近記憶に新しいDFM vs C9の試合よりも、友人たちのcrashの方が熱く、応援したいと思うような、記憶に残る試合でした。
多少でもlolをプレイし、そのルールを知ったことによって、私は友人たちのlolのプレイを見ることがとても楽しくなっていました。時には彼らの真似をして、溜まったプルーエッセンスを使ってチャンプを購入し、プラクティスモードで木人相手に触ってみたりもしました。身近に目標となる人たちが沢山いたお陰で、私はlolを辞めること無く、見ているだけという形であっても、lolから離れることはありませんでした。どんな褒め言葉や励ましの言葉よりも、彼らのプレイ自体が、私のlolのモチベになっていたのです。
そして、私がlolを辞めなかったもう1つの理由。それは、あるチャンプとの出会いがきっかけでした。
ジンクスは、やっている人ならば分かると思いますが、べた足チャンプで狙われると弱い、特に後半エンジンがかかるまでの間は耐える場面が多いチャンプです。加えてADCという立場にあるチャンプたちは、初心者が触るには難しく(まあ初心者からするとどのレーン、どのチャンプも難しいですが)、立ち位置や判断を間違えると速攻蹂躙されます。キルを持ち、育てば誰にも止められない反面、とても脆くて弱く、コケるとなかなか立ち上がることが難しい……、と私は思いました。
私はジンクスというチャンプを完全に見た目だけで選んだので、それが初心者でも扱えるチャンプなのか、理解できるチャンプなのかといった部分は丸々無視して使っていました。特に最初は、そう何体もチャンプを購入できる訳ではないので、私が持っているチャンプなんてこのジンクスと、よく分からないフリーチャンプのみ。既にジンクスを購入してしまっているので、私がノーマルに連れて行かれる時はこのチャンプを出す他ありませんでした。
しかし、ノーマルで蹂躙されていくうちに、段々とある思いが浮かびあがってきます。
「私にはこのチャンプはまだ早いんじゃないか………?」
友人たちのプレイを見ていたお陰もあって、徐々にlolのことを知り始めていた私は、ある程度ブルーエッセンスも溜まってきたことだし改めて自分が使うチャンプを見直そうと思ったのです。もっと初心者にお勧めで、スキルが単純なチャンプ……。そんなチャンプはいないだろうかと。ネットで初心者にお勧めのチャンプを調べたり、実際に友人たちに聞いてみたりしました。でもどれもあまりしっくりこない。もっと私にぴったりなチャンプはいないものか。
そうして、ページをスクロールしていく私の目に入ったのは、ある1体のチャンプでした。
「こ……、これだ……!!!このチャンプだ!!!!」
私はそこでやっと出会ったのです。初めてAI戦をやった時、私に色々と教えてくれた、あの、
ユーミパイセンと。
