「宮崎勤氏」をみなさんは憶えていらっしゃいますか?


 そう、あの1988年~1989年に起きた、幼女連続殺人の犯人である。事件のあらましは、宮崎勤氏が四人の幼女への猥褻、未成年者の誘拐、拉致、殺人、死体遺棄、死体損壊罪で起訴され、当然ながら死刑を言い渡されるというもの。歴史上最悪の残虐な事件として世間は騒然となりテレビは宮崎勤氏で一色となった。これを時代の変わり目として様々な時代論が展開された。(ちょうど昭和天皇が逝去され平成に年号が変わったしね)




 今日、図書館で貸出禁止の、獄中での宮崎勤著「夢のなか、いまも」という本の出版経緯を読んだ。細かい経緯は今は省くとして、私の鳥肌が立ったのは最後の一文であった。


 「私は感無量です」


 え? って思うのは私だけだろうか。どうも彼は極度の言葉ベタで、文章からなんの感情も感じられない。読んでいて、どうにも気持ちが悪くて仕方ないのである。さらに彼はこう書いている。


 「昔から本を出したかった。でも僕には文才がない。でも今回の事件でとても名が売れたので出版をするなら今だと思った。さらに有名になるためでもある」





 いったい彼はどんな人生を送ってきたのか?


 宮崎勤氏は、幼い頃から父親との対話はなく、さらに掌に先天性の障害を抱えており、それによる強い劣等感から成人女性に話しかけることができず、欲望の対象にできなかった。その代償として純粋で無抵抗な幼女をターゲットにし盗撮をするなどして、自慰行為に及んでいたという。裁判の陳述の中で、


 《内向的で協調性に欠け、小学校時代から一人で過ごすことを好んだ。自室にこもって漫画を読み耽り中学校の頃からテレビ番組を録画して収集する趣味を持つようになった。両親の監督、干渉を極度に嫌い、自己中心的な考え方しかできず、自己の意に添わないことに対しては激しい攻撃性を示した(宮崎勤事件~潰されたシナリオ~)より》


 と述べている。こうして性的欲求不満を満たしていたが、ついに行動に出てしまう。


 「誘拐した以上は、帰すとバレるから殺した」


 しかし、よく分からないのが、四人の幼女たちには性的暴行の跡は無かったのである。彼は何が本当の目的だったのか、つまり私にとってはこの事件は未解決なのである。宮崎勤はただのロリコンなのか? それとも快楽殺人者? 私はどちらでもないような気がするのだ。決して擁護などするつもりもないが、この事件なんとなく臭いのである。



 警察は、初動捜査の時点でミスを犯していた。初め警察は保険金殺人と踏んでおり、被害者の身内に執拗な取り調べを行っている。ようは、捜査線上に宮崎勤氏の存在は浮かび上がっていなかったのである。埼玉県警をはじめ、警察庁、警視庁のべ三十万三千人の捜査員が動員されたにもかかわらず、犯人像は不明だった。


 1988年8月22日。今野茂之さん(当時47歳)の二女で幼稚園児の真理ちゃん(4歳)が「友達の家に遊びに行く」と言い残し行方不明になったことから宮崎事件は始まる。そして、正美ちゃん(7歳)、絵梨香ちゃん(4歳)、綾子ちゃん(5歳)を相次いで誘拐、殺害。


 翌年。


 1989年2月6日。今野さん(真理ちゃんの家族)宅の玄関前にダンボール箱が置かれていた。中には焼かれた人骨片が敷き詰められており、B5版の紙(コピー)にワープロで打たれた「真理、遺骨、焼、証明、鑑定」の文字。さらにピンク色のショートパンツのインスタント写真が入れられていた。県警は人骨片に含まれていた乳歯3本と永久歯7本から真理ちゃんと断定。その後も「今田勇子」という女性の名前で、今野さん宅と朝日新聞東京本社宛に犯行声明と真理ちゃんのインスタント写真を郵送。翌月にも双方に告白文を送りつけている。


 1989年7月23日。


 予想外の形で宮崎勤は捕まる。八王子市内で小学一年生の女児(6歳)を全裸にして写真を撮っていたところを被害者の女児の父親に見つかって、通報で駆けつけた八王子署員によって強制猥褻の現行犯で逮捕された。(東京都で捕まったため手柄を警視庁に持っていかれた埼玉県警は地団駄を踏んで悔しがったという)そして、宮崎勤氏は、徐々に全ての犯行を自供し事件は幕を降ろした。


 警察というのは横の繋がりに弱いため、先にのべ三十万三千人の捜査員を動員したと書いたが(埼玉県警は警視庁にも捜査本部を設置し共同捜査を行った)所轄を超えたコミュニケーションがとれなかったため捜査の遅れの大きな原因の一つとなった。また、捜査員のほとんどが外勤の殺人事件では素人警官だったため、聞き込み調査は簡易的だった。こういった警察官の「サラリーマン化」は当時からの問題だと思う。


 この事件は多くの問題点を明るみに出した。まず、幼児愛好家という言葉。要は「ロリコン」のことだよね。これは女の私には理解できないのだけれど、ロリコンと聞いてゾッとする女性は多いと思う。それから、警察によるメディア操作。これも未だに改善されない。そして、警察の横の繋がりの悪さ。死刑制度。。。どれも現在にも続く問題点ばかり。28年経った今でも日本は何ら変わっていないのである。(というか、いつの時代もこれらの問題は孕んでいたのかもしれないが)



 こうして大まかだが「宮崎事件」を改めて見直したときに、色んなことが浮き彫りになってくる。しかし結局、私は宮崎勤氏が何のために一連の行動をとったのか結論づけることができない。なんか安易に片付けられないのだ。こういうことを真剣に考えていると、ひどく気持ちがグラグラする。だけど怖いもの見たさというか、、、長くなったので最後にしますが、事件当時、熱狂的な宮崎勤ファンなるものが存在したそうだ。獄中の宮崎勤氏へ彼女らはたくさんの手紙を宛てた。一時期、ある種のカリスマとなった宮崎勤。謎だ。


 みなさんは、この事件をどう受け止めましたか?