中級コースは残り1コマとなったユキコ。

 

前回、Dr.EKOに背中を押してもらい、とにかく小さいことから変化を起こしていきたいと思えるようになった。

 

ユキコがこの中級コースで一番身に染みたことは『自分としっかり向き合う』時間が少なかったと自覚できたことだ。

 

まだまだネガティブがたくさん自分の中に隠れており、そのネガティブは相当数いることだろう。

 

自分の感情をひとつひとつ、丁寧に扱う。

 

そのためにまず大事だと思ったことは、一人の時間をできるだけたくさん作ることだった。

 

さっそくユキコは実家から離れて職場で過ごすことにした。

 

幸いにもユキコの職場は住むには十分な設備が整っている。

 

次の講座までに、物理的に周りに振り回されない環境に身を置くことにした。

 

そうして初めて一人職場で夜を過ごすユキコ。

 

ユキコ以外誰一人いない建物の中。

 

とても静かな空間に一人ポツンと座っていると少し怖さも感じるが、思っているよりも気を張っていない自分がいた。

 

虫の声しか聴こえず、誰にも邪魔されない、本当に自分だけの空間。

 

そんな中でスラトレを行ってみると、いつもより集中して自分と向き合うことができた実感があった。

 

いつも以上にノートに書き出す言葉が感情的になっている。

 

 

「わぁ、めちゃくちゃノート消費してるな!」

 

 

どんどん今言葉が出てくる。

 

次々と出てくるネガティブをユキコは少しずつ少しずつ癒していった。

 

失敗してしまったと責める自分。

 

変わりたいはずなのに行動できてない自分。

 

失敗も行動も怖がる自分。

 

いろんな自分が出てくる。

 

ノートに向かい、自分の啜り泣く声だけが部屋に響き渡る。

 

怖い。

 

逃げたい。

 

重く苦しい感情がユキコにのしかかる。

 

それでも向き合わなければ、前に進むことはできない。

 

最後の最後で後悔したくない!

 

そんな思いを抱えながらユキコはペンを強く握りしめ、ノートに自分の心を曝け出していく。

 

すると沈んでいた心は少しずつ回復していき、今まで重かった肩がだんだんと軽くなってきた。

 

そして、ユキコの心に、もう少し勇気をもって行動してみたいという気持ちがじわじわと湧き出てきたのだ。

 

この体験をDr.EKOに話してみることにした。

 

 

「お、自分と向き合える感覚を掴むことができたんだね。そうやって一つ一つ成功体験を積み重ねていってね。あなたにはあたなにとっての最短コースを今歩いてるから。」

 

「最後の最後で気づくことができてよかったです。こんなにもネガティブがまだ隠れていたなんて。私、もっと自分と向き合おうと思います!」

 

「ここが踏ん張りどころ!応援してるよ。行動するとネガティブは必死にユキコさんを止めようとしてくるけど、心の反応を見逃さないでね。」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

 

あんなにも心が折れかかっていたユキコだが、最後の最後で心を強く成長させ、無事中級コースは勇気を生み出し終了することができた。

 

初級とは違うレベルアップしたネガティブに悪戦苦闘しながらやり抜いた8週間。

 

行動することで顔を出すネガティブ達。

 

かなり手強い敵だが、これらと戦うにはユキコもレベルアップが必要だ。

 

ユキコ自身、これから自分の行動を少しずつ変えて経験値を積んでいくしかない。

 

成功体験も失敗体験も、全て経験を自分の糧にする。

 

そのためにはまた行動をし続けることが大事だとユキコは学ぶことができた。

 

失敗してもいい、チャレンジすることが大事。

 

焦ることもない、今の自分ができる最大限の行動を進めていく。

 

1日1歩、1mmでも。

 

こうしてユキコは、これからも自分を変えるための行動を少しずつ行っていく。

 

毎日必死にネガティブに立ち向かい、「本当の自分」を知っていくのだった。

 

 

 

 

ユキコ成長ストーリー 第2章 END

 

 

あれから何度も時間を見つけては対話ノートと向き合い、自分の『本当にやりたいこと』を探るユキコ。

 

しかし、問いかけては新たなネガティブに苦戦し、行動しようとしてはネガティブに苦戦し、苦悩する日々が続いていた。

 

計画を立てようにもそもそもはっきりとした目標が見つからない。

 

自分はどうしたいのか?

どうなりたいのか?

 

考えれば考えるほど頭の中が混乱して、どうすればいいのか分からなくなってしまっていた。

 

時間は刻々とすぎていく。

 

ユキコは不安が大きくなってきていた。

 

 

「せっかく8週間コースに進んだのに、何もできなかった。なんて無駄なことをしてしまったんだ。」

 

 

目標をはっきりせることもできず、TODOリスト完成することができなかった。

 

ユキコにスラトレを初めてから感じたことのない大量のネガティブが押し寄せていた。

 

 

「やはり私に中級コースはまだ早かった。」

「もっとポジティブになっている状態でなければいけなかったんだ!」

「初級コースでうまくいったからと調子に乗ってしまった、そんな簡単に自分を変えれるはずがないのに!」

 

 

ユキコは己の不甲斐なさ、情けなさ、いろんな感情を心に抱えていた。

 

見るからに気が沈んでいるユキコにDr.EKOはこう告げた。

 

 

「人には人の成長スピードがあるからね。8週間コースを受講したからといって、すぐにスライバーになれるわけじゃないよ。もう一度初級コースを受ける人だっているんだ。中級を2回受ける人もいるね。一回で自己実現できなかったからダメではないんだよ。」

 

「でも...せっかくの中級コースだったのに失敗してしまったなと思うと…落ち込みます。」

 

「これも失敗と捉えるか、捉えないかはその人次第だね。人によったら『中級コース受けたけど、自分うまくいかなかったよ!まだまだだったみたい』って笑い飛ばしながら人に話す人もいると思うよ。」

 

「そんな人いるんですか?」

 

「これも深堀ネタだよね。一回で成功しないといけないとか固定概念があると落ち込んじゃうかもね。」

 

 

ユキコは自分の今の状況を振り返った。

 

たしかに今回ユキコが挑戦した中級コース、想像していた理想とは違い、スムーズに事は進まなかったかもしれない。

 

だが、それがなんだというのだ?

 

Dr.EKOがいうように『人には人の成長スピード』がある。

 

失敗しても、後退した訳では全くない。

 

むしろ、中級コースに進むことで見つけることができたネガティブを発見することができた。

 

『気付く』ことができたのだ。

 

自分を変えるためにはまず、変えなければいけない自分に『気づかなければ』修正することができない。

 

ユキコはこの8週間でたくさんの学びを自然と掴み取っていた。

 

『失敗を恐れて何も行動できない自分』

 

を見つけることができたのだ。

 

そして、自分には初級では想像できなかったネガティブの存在が蔓延っていることも。

 

最後の最後にユキコは落ち込みから足を踏ん張ることができた。

 

 

「こんなにも私の行動を止めにかかってくるネガティブがいるなんて...これは思っているよりも苦戦しそうだけど、やるしかない。時間がかかってもひとつひとつ丁寧に取り除いていくしかない!」

 

 

Dr.EKOの何気ない声かけがユキコに小さな勇気を芽生えさせる。

 

 

8週間コースを受けていく中でやはり、ロードマップ、ゴール設定を考えることは必須。

 

しかしこのゴール設定がユキコの苦手とする『計画』だった。

 

ユキコは小さい時から計画通りに物事を進めることが大の苦手。

 

 

「私、計画を立てることが大の苦手なんです・・・。TODOリストなんて、いつも決めても達成できなくて・・・。」

 

「その苦手と思っている時点で深掘りだよね。」

 

 

Dr.EKOにそう言われてしまったユキコは何も言い返すことはできない。

 

果たして何故TODOが苦手なのか。

 

ユキコは過去の自分を思い出す。

 

何度思い出しても計画通りTODOを達成できたことはない。

 

数日で行う少ない量であればを達成したことはあるが、長期間計画を立てたものは全てダメだった。

 

 

「私にできるはずがない・・・だって計画性がないもの。」

 

「そもそも自分でもできるTODOリストってのを作ってなかったんじゃないかな?あとここでも失敗を怖がってるね。」

 

 

ユキコはハッとした。

 

そう、また悪い癖が出ている。

 

『失敗したくない』というネガティブがちゃっかりと居座っていた。

 

 

「TODOは必ず自分ができる範囲で作ってね。そしてこれもトライ&エラーで自分に合ったやり方を試行錯誤していこうね。そして、ここでの基本的絶対ルールは『決めたTODOが出来なかった時は、次出来るようになるにはどうしよう?』って考えること。」

 

 

常に失敗はつきもの。

 

しかし、失敗を失敗のまま終わらせないことを学ばなければいけない。

 

 

「なるほど・・・ここでも失敗に対する固定概念が働いてますね。」

 

「そうそう、焦らず着実にやりたいことのために前に進まないとね。まずは毎日1cmずつでも進むことを意識してね。」

 

「はい、やってみます!」

 

 

Dr.EKOに貰った言葉を頭に入れて、さっそくTODOリストを作っていくユキコ。

 

だが、なかなか思うようにTODOを作る作業が進まない。

 

あれもしなきゃ、これもしなきゃ、これも足さなきゃ。

 

やらなければいけないと思うことが山ほど出てくる。

 

TODOを作るだけで頭の中はパニック。

 

そして、タイミングが悪いことに実家に住んでいるユキコは何かと頼まれ事も多く、自分の事に集中したいのになかなか思うようにいかない日々が続いていた。

 

実家のこと、母のサポート、自分の本業のことも気になる。

 

気になってしまうことが多く、思考を整理することが難しくなっているようだった。

 

講義中、そのことに気づいたDr.EKOがこう話を切り出した。

 

 

「もしかして、周りにネガティブに引っ張っている人がいるんじゃない?」

 

「え?うーん・・・どうだろう・・・周りとなると、家族ですかね。」

 

 

最近、実家のことや母の言動をよく注意することがある。

 

特に愚痴が多く、聞くたびに「あまり愚痴は言わないほうがいいよ」と注意するのだが、そのたびにしんどい気持ちやイライラしていることに気づいた。

 

つい母のことが気になってしまうことなどもあり、愚痴を聞くことが大変、でも母には元気になってもらいたいからつい構ってしまうという状況をDr.EKOに話した。

 

Dr.EKOは静かに頷きながら淡々とユキコの話に耳を傾けていた。

 

そしてこう告げる。

 

 

「そっかそっか。でも今のままだとよくないよね。スラトレを受ける上で大前提はまずは自分優先。あと周りのネガティブな感情に引っ張られているなら、なるだけ距離を取るようにしてね、自分に集中するために。」

 

 

今はまだ周りのネガティブに引っ張られてしまうユキコ。

 

確かに身近な人のネガティブは頭にも心にも入りやすく、無意識に反応してしまっている自分がいた。

 

 

「だ、だめだ。自分のことに集中しなくちゃ…。」

 

 

ユキコは自身に言い聞かせ、自分はどうしたいのかを模索し始めた。

 

このTODOリストを考え出す作業から、ユキコの心はだんだん嫌な焦りを感じ始めていた。

 

 

「本当に経験したいことは何?」

 

Dr.EKOにそう質問されたユキコ。

 

言葉が詰まり、苦しそうに眉を潜める。

 

「私が本当に経験したいことって、なんだろう?」

 

やりたいことはたくさんある。

 

お金があれば旅行も行きたい、毎日ゲームだってしたい、好きなときに好きなだけ映画も見たい、美味しい物を好きなだけ食べたい。

 

あげればきりが無いほど、やりたいことはある。

 

でも「本当に経験したいこと」と問われると、こういうお金があれば解決出来ることではない気がする。

 

ユキコが今まで経験することができなかった、本当はしたかったこと。

 

「ありのままの自分で、人間関係を築いてみたい」

 

紆余曲折しながらも深掘りをすることができた一つの夢。

 

ユキコは昔から人一倍他人に気を遣い、友達にさえも気を遣いすぎて自分を偽りながら接してきた。

 

ずっと気を遣うことなく他人と仲良く出来る人を見ると、うらやましくて仕方が無かった。

 

「いつか、ありのままの自分でも受け入れてくれる人と友達になりたいし、親友と呼べるような関係性を築けたらな・・・。」

 

気を遣うことなく、リラックスした状態で、自分も友達もいっしょにいるだけで楽しいと思える存在。

 

そういう気の合う友達が側にいて欲しかった。

 

「でもそのためには、私がまずありのままで生きれるようにならないと始まらないよね。」

 

ここでまたどんどんネガティブな感情が出てくる。

 

「今後会う人に等身大の自分を見せることができる?」

「私って結構変人だから、初めて会う人にありのままで接するのってドン引きされるんじゃないかな?」

「私気を抜くと失礼な発言とかしちゃうかもだし、何も考えずに話すなんて、何を口走るかわからないぞ・・・!?」

 

素の自分をさらけ出すことへの恐怖。

 

どうしても自分の気持ちを偽ってしまう癖。

 

長年培ってきた技術はなかなか直すことに時間がかかりそうだ。

 

「うーん・・・自分を表現できるよう練習するしかないよね・・・。」

 

Dr.EKOに進められたブログが頭をよぎる。

 

出来る物ならやってみたい、という気持ちも少なからず芽生え始めている。

 

しかし、自分のことをネット上に、かつ不特定多数の人に見られるようなブログを書くこと自体に抵抗があった。

 

そしてなにより、『ありのままで生きている自分』がどうしても抵抗が出てしまうのだ。

 

まだ自分の中の答えが曖昧でモヤモヤする気持ちのまま、次のトレーニングは始まった。

 

「本当に自分が経験したいこと・・・探したんですけど、まだハッキリとした答えは出てくれなくて・・・なんだか分からないままです。」

 

「なるほどね。今のユキコさんはゴールが決まってない状態だから、どうしたらいいのか分からなくなってるんじゃないかな?まずは人生のロードマップを決めていかないとね。」

 

「ロードマップですか?」

 

「理想の自分になるための地図みたいなものだね。それを一から考え直してみて、何のために8週間コースをするのかも考えてみて。」

 

自分はなんのために8週間コースを受けているのか。

 

ユキコはまた頭をひねる。

 

ありのままの自分で人間関係を築きたい・・・。

 

キラッキラに生きてみたい・・・。

 

自由気ままに生きれるようになりたい・・・。

 

「でも、自由気ままに生きてもいいの?本当にそんなことできるの?」

 

理想の自分を考え出すと出てくるネガティブワード。

 

だんだん不安感に襲われ始める。

 

「こんな欲にまみれた自分でいいの?」

 

そんなユキコの発言にDr.EKOは不思議そうな顔で話し出した。

 

「貪欲な自分はダメなの?」

 

「うーん・・・貪欲って自分だけ得する人みたいなイメージがあって・・・あまり良い印象はないです。」

 

「へぇ、そうなんだねぇ。でも貪欲って悪いことでもないんじゃない?むしろ目的達成のためには何でもする貪欲な心も必要なんじゃないかな。使い方次第でポジティブな原動力にもなると思うんだ。」

 

その発想はなかった!とでも言うように、ユキコは驚きの表情を浮かべる。

 

「欲を出すことは決して悪いことではないんだ。」

 

ここでもユキコの固定概念が働いていた。

 

『貪欲なことはしてはいけない』

 

別に法律で決まってるわけでもない、ユキコの中だけのルール。

 

そもそも自分に対して貪欲に動くことは誰にも迷惑をかけているわけでもない。

 

欲がなければ何かをしたい気持ちも働くことはないじゃないか。

 

ユキコは貪欲で恥ずかしいと思っていた自分を恥じた。

 

そして、そんな自分でも良かったんだと思えると、胸がほんのり温かくなる。

 

「これも深掘りするべきものの一つだよね。こうやって新しく前に進もうとするときって10週間コースとは違うネガティブが大量に出てくるから、コツコツ取り除いてね。」

 

「前に比べて小さいネガティブですけど、すごく足を引っ張るネガティブがたくさんありそうです。」

 

「ネガティブな固定概念は何万個と出てくるからね。」

 

Dr.EKOはニコリと笑いながら、サラッと気の遠くなるような数字を伝える。

 

でもその通りだ。

 

生きているだけで様々な固定概念が生み出されているんだ。

 

そして私はそれを生み出すスピードが格段に早いのかもしれない。

 

これからもっと忙しくなりそうな自分を変えるためのスラトレ。

 

思っている以上にキラッキラなスライバー人生への道は厳しいもののようにユキコは感じていた。

 

 

 

 

…つづく。

 

 

あれから少しずつ、ユキコは自分が本当にやりたいことを探っていた。

 

「うーん、やっぱり誰かを笑顔にできることをしたいんだけど・・・具体的に何をどうしたいってのが今ひとつ決まらないなぁ・・・。」

 

自分はどうなりたいのか、何をしたいのか、どんな状態でいたいのか。

 

対話ノートで自問自答を繰り返し、やりたいことを書き出していく。

 

その中にひとつ、ずっと前から気になっていることがあった。

 

「ありのままの自分で人間関係を築きたい」

 

この願いが度々出てきているのだ。

 

スラトレを受ける前のユキコは、人目を気にして、友人でさえも気を遣い、自分の意見は後回し。

 

ユキコは今まで自分を偽って人と接してきたと言っても過言ではないだろう。

 

「本音を隠すことなく、自分を偽ることなく人と接することができる人間になりたい。」

 

ただただ周りに合わせて生きる自分は嫌になっていた。

 

そして周りの目を気にして、自分の気持ちを隠してしまう自分を変えたかった。

 

「そもそもありのままの自分をさらけ出すってどうしたらいいんだろう?」

 

今までまったく自分をさらけ出すことが出来なかったユキコ。

 

物心ついた時から周りの空気を敏感に察知し、自己を主張することをしてこなかった。

 

そんなユキコは自分を表現する方法が分からなかった。

 

「うーん、いきなり自分をさらけ出すって難しいな。」

 

ユキコはDr.EKOに相談してみることにした。

 

 

 

「なるほどね、自分を表現する場が必要かもね。たとえばTwitterやFB、ブログなんかもいいかもね。」

 

「ブログ、ですか。」

 

実は過去に何度かアウトプットをする機会を増やしてみてはどうか、とDr.EKOにアドバイスを貰っていた。

 

文章を書くことは嫌いじゃないし、少し興味がある分野でもあった。

 

ただ、ネット上の不特定多数の人に自分の情報を発信することに抵抗が出てしまい、うまく文章が書けなかったり。

 

そもそも何を書いたらいいのか分からず、何度か失敗している。

 

「まずは得意な事から探ってみて、出来そうな物からやってみるのがいいと思うよ。」

 

「得意な事ですか・・・。」

 

自分の得意なことは何か?

 

ユキコは紙に書き出そうとするが、あまり出てこない。

 

「今、ユキコさんが自分の得意なことをあまり書き出せないのは何故だと思う?」

 

「うーん・・・成功したものがないからでしょうか?」

 

「成功体験だけじゃないよ。失敗体験も少ないから自分の得意・不得意が分からないんだよ。」

 

言われてみると確かにそうだ。

 

前回取り除けた固定概念もそうだが、ユキコは今まで何かに挑戦する前から諦めることが多かった。

 

つまり、経験値がかなり少ない。

 

「もっとたくさんトライ&エラーを実践してみないとね。少しでもやりたいと思ったことはやってみる。やりたくないことはやらなくてもいいよ。あとは失敗と成功を繰り返すだけ。」

 

ユキコは自分の経験値のなさに、ガッカリする。

 

10回コースを終えて変わることができたと思っていた。

 

いきなりレベルアップできたとでも錯覚していたのかもしれない。

 

思っているよりも自分の事を理解できていない。

 

客観的に自己分析が出来ていない。

 

ユキコの表情は暗くなってきていた。

 

「出来ることなら失敗なんてしたくないなぁ・・・ブログもやったことないから怖いな・・・。」

 

ユキコは「失敗する」ことにかなり怯える性格だ。

 

「失敗する」=絶対に避けたいこと、と思い込んで生きてきた。

 

小さい時から「失敗しないように」「間違わないように」そう教え込まれてきたのだろう。

 

特に失敗した時の周りの目は恐ろしいものがある。

 

呆れられる様な目。

 

失敗したことに怒り責め立てる人。

 

鼻で笑って馬鹿にする人。

 

失敗した人に対して、冷たい態度を取っている人を何人も見てきた。

 

ユキコも昔は、そんな対応を受けた経験がある。

 

そんな経験が、ユキコの「失敗」に対する恐怖を植え付けていたのかもしれない。

 

Dr.EKOは怖がるユキコにそっと背中を押すようにアドバイスを与えてくれた。

 

「失敗してはいけないって思い込みがちだけど、思い出してみて。人間って赤ちゃんの時から何でも出来るもの?」

 

「いえ・・・そんなことはないはず、です。」

 

「そうだよね、小学生の時はどうかな?例えばユキコさんが自転車に乗れるようになったのは何度も何度も転んで、失敗を繰り返して、やっと乗れるようになったからじゃない?」

 

「そ、そうでした。」

 

「なんで大人になったら失敗しちゃいけないの?いきなり成功の道にたどり着くことなんてほとんどないんじゃない?」

 

確かに、大人になったから失敗してはいけない理由はない。

 

「今確実に成功している人は、見えないところでたくさんの失敗という経験を経て、成功の道を見つけ出したんだよ。人生のほとんどは失敗と成功の繰り返し。しかも、失敗から学ぶことの方が多いんだよ。」

 

Dr.EKOは失敗することにとても前向きで、明るく話す。

 

ユキコは失敗という言葉を口に出すことすら控えめで、恥ずかしそうにモゾモゾしながら答えていた。

 

あぁ、これが様々な失敗を経て経験値を増やしている人か。

 

失敗や成功を繰り返して、たくさん経験し、学んだ人が紡ぐ言葉は心に響く重みがある。

 

ユキコはDr.EKOの真っ直ぐな言葉を静かに聞いていた。

 

まだまだユキコの固定概念は奥深くにたくさん潜んでいる気配がある。

 

この8週間コースで自分が想像していた量を遙かに超えるネガティブ達が顔を見せ始めているのではないか、とユキコは胸がざわついていた。

 

 

 

 

…つづく。