語り賢者の日記

語り賢者の日記

賢者がただただ語っていくだけです。

見上げても君に繋がる糸なんてどこにもなくて
ほんの数ミリ先の未来を

あんなに疑わずにいたのに
指の間から

全部こぼれ落ちてしまったんだね

合鍵を返したあの部屋の窓に

今は知らない誰かの灯り
僕がいた場所なんて

上書きされるためにあったみたいだ
君が投げつけた棘だらけのあの言葉も
「無駄だった」と吐き捨てたあの不器用な日々も
今となっては僕を形作る唯一の宝石なんだ

「もしも」なんて言葉を どれだけ並べてみても
時計の針は 僕の情けなさを笑って通り過ぎる
戻れないから美しいなんて誰が決めたんだろう
戻れないからこんなに胸がひきつるのに

もし僕らがあのぬるま湯のような

心地よい幸せに浸かったまま

歩けていたとしても

君の笑顔を枯らしてしまっただろう

冬の自販機 掌で転がした温かい缶コーヒー
指先だけを温めても 心の芯まで火は灯らなくて
結局僕は君の体温が欲しかったんだ

温かかったはずの缶コーヒーが

冷たい夜風に熱を奪われていく


僕が選んでプレゼントした

普段の君なら絶対に手に取らないような
ピンクと白の可愛すぎるマフラー 
「私っぽくないよ」って照れてたあの顔を
今は僕じゃない別の誰かの前でも見せているのかな
僕があげた あの色を纏ったままで

さよなら それもひとつの答えなんだろう
どこかの街で 君が誰かの「特別」になれていれば
……なんて そんな綺麗事 まだ本気では言えないけど
僕もなんとか生きていくよ 君がいないこの世界で
息の仕方を 一から思い出しながら

さよなら 僕の半分だった人
「もう平気だよ」って

笑えるくらいには強くなったつもりだけど
君が僕を忘れるスピードに

追い越されるのが怖くて
わざと足跡を深く残して

情けなく歩いているんだ
「幸せになってね」なんて

やっぱりまだ言えないから
せめて僕が君を忘れるまでは

君も僕をほんの少しの罪悪感と一緒に覚えていてよ