幼少時代に
親に連れられて入ったスーパーの店内で
一目散に駆け寄った場所は
子供向けお菓子コーナーだったのは
私だけではないと思うが
何が目当てだったかと言われたら
付録付きお菓子一択。
そして、お菓子についてくるおまけのおもちゃやカードを
欲しがっていて
お菓子がむしろおまけであった。
メインがおまけでおまけがメイン。
今にしてみても不思議な感覚である。
お菓子メーカーにしてみれば
お菓子作りこそ本業なので
「お菓子こそメインです」
立場的にもそう
言わなければならないとは思うが
子供の気持ちとしては
食べれば無くなってしまうものよりも
残り続ける現物のほうに
心踊らされる子も多かったと思う。
私が子供の頃に流行っていたおまけは
当時Jリーグ発足に伴い販売された
Jリーグチップスの
Jリーガー、選手たちのカードである。
何が入ってるかは買って開けてみないとわからないという
ガチャ要素もあったが
なぜかクラスに一人二人は
レアカードや人気の高いカードをコレクションしている
子が必ずいた。
私は当時、そういう同級生の事を
「資金力の差だな。
親が金持ちだからたくさん買ってくれるんだろ」と
ジェラシー全開の眼差しで
自分が持っていないレアカードを見つめていた。
まったくもってひねくれた子供である。
私は当時読売ベルディが好きで
特に三浦知良選手 通称 カズのカードが
最もほしいカードだった。
ある日
私と同じ団地に住んでいた
おそらく親の財力も同程度であろう
友人が少ないガチャで
カズのカードを引き当てたという
話を小耳にはさんだ。
私はダブったカードもいくつか所有していたが
私の手持ちのダブったカードで最も大事にしていたカードが
カズと同じ位の人気があった
同じくベルディ所属の
ラモス瑠偉選手のカード。
当時の私にとっては
命の次に大事なカードであったが
二枚もあると
嬉しい反面、カードとしての価値も半分のように感じる。
私はカズの所有者である友人に直談判しに
家まで行って交渉を始めた。
「トレードしようじゃないか」
カズのカードと
ダブっているラモスのカードを交換するという
決して悪くない等価交換のはずだったが
友人はノーだと言う。
やはりキングカズのブランド力の前には
もう一つ他のカードも必要か。。
そう考えていたのだが
友人はこう言い放った。
「俺もラモス一枚持ってんだよ」
なんと
カズにとどまらず
ラモスまで所有しているとは驚きだった。
憧れのツートップのカードを2つ所有している事に
正直悔しさがこみ上げてきた。
確率とはいえ
こんなにも私はベルディのチップスを買いまってはダブったり
(北沢選手のカードを3枚も持っていた。)
自分があまり関心の無いチームの誰かのカードを
集めてばかりの私からすれば
理不尽極まりない仕打ちのように感じた。
そしてその憤りはついに
私を凶行へ走らせてしまった。
私は友人がトイレにいったスキを見計らって
友人が持っているカズのカードと
私が持ってきたラモスのカードを
すり替えた。
そのままトイレから戻ってきた
友人とそれとない話をしてから
「そろそろ帰るわ」と
友人の家からしれーっと退散しようとした矢先に
友人が叫んだ。
「ちょっとまて!ラモスが増えてるぞwww
カズがいない!!お前カードすり替えたな?」
私「、、、カズって確かヒゲ生えてましたよ?(震え声)」
私の悪行を颯爽と看破した同級生の察知能力もすごいと思うが
そんな同級生とは今でも飲み友達。
未だにネタにされるわけだが
時にはこんなに純粋で無垢な少年すら
悪行に走らせてしまうほどに
お菓子の付録というのは
魅力が詰まっていたという事を
私は伝えたい。
そして時々
いつのまに無くしてしまった
子供の時にしかなかったあのトキメキを
大人になった今
スーパーのお酒のコーナーから
垣間見えるおもちゃのコーナーを見るたびに
懐かしさを感じざるおえない。
欲しくないモノをつけて値段を釣り上げて
買わせるのは
こういってはなんだが
それは「抱き合わせ商法」である。
時にはメインすら食ってしまうほどのおまけの存在感。
大人になってからは抱き合わせを見る事は増えたが
願わくばもう一度
少年だった頃のおまけこそメインという
あの感覚をどこかで味わいたいと思う。
終わり。