デジャブーは本当は20年前に書いた短編

ロンドンで何本も書いていたから、もう一度、書き始めようとした


若かったな(*^.^*)

京都三条の小さなバーばかりが入っているビルの3階、
酔っ払い連中を避け、エレベーターを使用せず、外付けの階段をのぼっていった。
夜のお出かけ用にはいた高めのヒールの音が響いていく。

ピアノバー デジャブー

重い扉を引くと、そこには、古いアンティークのようなカウンターとスポットライトに照らされたグランドピアノがスモーキーな光の中にあった。

美しいどこかで聞いたバラードの曲に心奪われ、すぐには席につけずに、立ちすくんでいた私に、バーテンダーが「お好きな席にどうぞ」と声をかけてくれた。

友人の未樹が口コミで聞きつけてきたこのピアノバーの目玉は、このピアニストのかっこよさにあるという。

彼の目の前に座った私たちに、彼は会釈をしてきた。確かに、彼は、正統派なアメリカ人ぽく、金髪の少し巻き毛がかった髪に、優しい笑顔を持ち合わせていた。彼の奏でるピアノの旋律は、どれも、近年のヒット曲であったが、彼のアレンジが入り、ポップにもジャズにも形を変えていた。

先に来ていた客よりリクエストが入った。彼は笑顔で応じ、うれしそうに、ジャケットを脱いで、その曲をはじめた。彼はピアノだけでなく、彼の隣に置かれたシンセサイダーも巧みに使いこなし、曲はギター音もドラムも、ポップ調にアレンジされた。
彼が歌いだした。その声は、高い教会でのコーラスの少年のようにも聞こえるが、引っ張るような甘い声は、少年にはないセクシーさを備えていた。
パーフェクトな演奏と歌声だった。
彼は、リクエストをした客に礼をしたのち、それが彼のオリジナル曲で彼の作詞作曲で、彼はアーティスト志望だと、私たちに教えてくれた。

未樹は始終、彼のかっこよさに感嘆していた。私は彼女に同意するものの、自分の意見を言えずにいた。言葉にできずにいた。ただ、彼に、感動している自分に驚いていた。私はもともとかなり冷めた女だったし、ミーハー曲がりにキャーキャー言っている未樹と自分を同様に思いたくなかった。でも、私の熱い視線は、きっと彼にも伝わったはず。


だんだんと先客が帰っていった。ピアニストが私たちの席にやってきた。
「はじめて来られたのですか?僕はトーマスといいます。名前は?」と聞いてきた。
未樹は自分を名乗り、私が綾香だと伝えた。彼は、丁寧に未樹にも私にも軽いお辞儀をしてみせて、「宜しく」と握手を求めた。未樹は満面の笑顔で、彼のピアノと彼の容姿をかっこいいと褒めながら、両手で握手に答えていた。私に向けられた手に、私は軽く握手を返し、「宜しく」とだけ答えた。軽くにぎった私の手に、彼の長い指が絡むように感じたのは、私のおごった気持ちからなのか、単なる勘違いなのか、わからずにいた。

未樹は私が聞きたかったことを私の心を読むように、聞いてくれた。それによると、彼は半年前にこの店のオーナーに呼ばれて、日本にやってきたこと、アメリカのボストン出身で年は22歳になったばかり、バスで15分くらいの今出川に一人暮らし、日本語学校に通っていること、アメリカにいた時からミュージシャンとして活躍しており、何回かの賞を取っていること、趣味はもちろん音楽づくりで、今、弾いているシンセサイザーは自分で組み立てて、作曲していること、そして、彼女はいたが最近別れたことも。

彼は執拗に質問攻めにする未樹に、半分、あきれた様子で、それでも笑いながら、答えていた。その間、私に笑顔を向けながら、私の視線を捕らえようとしているのがわかるだけに、私はツライ笑顔を時折、見せなければいけなかった。未樹の手前、私が彼の視線を独占するわけにはいかない。

彼がピアノに戻ったときには、内心、ほっとしていた。彼がリクエストを聞かずに、自作の曲を弾き語りしていく。彼の感情が先ほどの曲のときよりも入っているようで、目を閉じて、歌っていた。彼の視線が来ないその彼の横顔を、みつめているとき、彼の目が開いた。私は視線をわざとそらすタイミングを逃してしまい、そのままみつめた。彼はもう私の視線をはずさなかった。その曲が終わるまで、私に向けて歌ったといってよいほど。

未樹がため息混じりに、「あ~あ、せっかくいい男みつけたのに、綾香にプレゼントした気分だよ~、OK、私は手を引くわ、これは高くつくからね!」と私の肩をたたき、帰る準備をしはじめた。「待って、私も帰るから」と急いで、ジャケットを着ようとすると、「だめだめ、綾香、あんたあと3日したら、ロンドンにいっちゃうんだから、時間ないんだよ。いい男はゲットして!後でメール頂戴ね!」と私を席に押し返した。

未樹がドアの外に出てから、彼は私の隣に座り、「3時で終わるから、最後まで聞いていて」とささやいた。私は、未樹に申し訳ないという気持ちがあったが、彼の言葉にどきどきして、この後、どうなるのかをあれこれ空想した。

私は、大学を卒業したばかりで、3日後にはロンドンの大学で勉強する予定でいた。学部は英語だったが、特に、興味があったわけではない、親にはもう少し、英語を極めてみたいと説得したが、それはあくまでも表向きの理由で、本当は、もう少し、学生気分でいたかっただけ。日本では、就職した友人たちが毎日朝早くから遅くまで、学生の時からはまるで違う生活を強いられているのに、自分だけここで遊ぶわけにもいかず、遊ぶ友達もいない、だから、海外で自由に気ままに生きたいというのが、本音だった。

私はあと3日ということで日本をたつということで、気分は最高に浮かれていたし、遊び心がいっぱいだったことは確か。ただ、あくまでも、遊びであって、真剣な恋は出来ない日数という意識はあった。だから、トーマスをみた瞬間に心奪われた自分を否定続けていたかもしれない。

彼はラブソングを3曲、私のためだけに弾き語りしてくれた。彼の視線がこっちしか来ないので、他の客にはおもしろくなかっただろう。私一人がその店に残っていた。

店が閉店準備を始め、トーマスが「待ってて」と奥に入ったとき、年配の店のオーナらしき女性が、話しかけてきた。「彼、あなたに惚れたようね、あの顔、隠せない性格しているわ」と笑った。私は、彼女が彼とどういう関係かを疑いながら、にが笑いしていた。そのオーナーは「時々ね、彼に、こうして恋愛させているの。そしたらいい曲書いてくれるからね。」とタバコをふかしながら話した。

彼がジャケットとかばんを持って、戻ってきた。「じゃあ お先に失礼します」とその女性とバーテンダーに挨拶して、私の背中を押して、店の外に出た。来た階段を足早に下りていく。トーマスは、改めて、私の方に向かい、「ごめんね、これからちょっと僕につきあってもらえる?」と聞いてきた。私はうなづきながら、「どこに行くのかな?」と聞いた。彼は、はにかみながら、「僕のマンションでもいい?」と聞いてきた。その恥じた様子に、私も同じくらい恥ずかしく思えた。うなづくだけの返事をした。

彼は、マンションに着くなり、私に一目ぼれしたこと、どうしても今夜抱きたいと、私の両手を握り締め伝えた。そして、私を抱き、キスをした。彼の切羽詰った感のあるディープキスに、驚いたものの、それに答えようとする私がいた。なんて熱い抱擁と言葉なんだろう。君のすべてを知りたい・君の指も首も、胸も、腰も、全部キスしたい・こんなに美しい腰のラインは見たことがない・君は僕のために生まれてきた身体をしている・僕の目から離れないで・・・
こんなにきれいな英語の愛の表現があるなんて。私は、その言葉に酔っていた。彼が待ちきれずに、私を求めてきたとき、自分も同様に求めていた身体に気づく。
何度も愛し合った。数時間前に会ったばかりの男性とこんなに情熱あるセックスをしたことははじめてだ。朝日が差し込んできても、私たちは、抱き合った。だんだんと明るくなり、恥じらいが増してくるが、それとは裏腹に、もっともっと大胆に動く裸体があった。

気がつくと、午後2時になっていた。朝方より熟睡していたようだ。隣には、昨夜会ったピアニストが無邪気な顔をして寝ていて、私には不思議な感じがした。もうずっと知っているような、懐かしいような気持ちすらある。彼の手が私の胸に触れていたので、ゆっくり彼の手を動かす。長い指を一本一本なぞった。すると、その指が、突然、私の胸の上に戻り、ピアノを弾くように動いた。
「何を弾いているの?」「今、作曲している」そう言うと、彼の指が本当に曲を奏でるように動き始めた。そして彼が歌詞をつけていった。
私は幸福感に包まれた気分でいた。

シャワーをして、彼のTシャツとジャージを借りて、出てくると、彼は、小型のエレクトリックピアノで作曲していた。手には、鉛筆を持ち、楽譜に書き込んでいた。
さっき、私の胸で弾いていた旋律。アーティストという人たちは、なんて恵まれた才能を持っているのだろう。自分が感じたもの、自分の気持ちをこうして曲に、歌詞にして作り出せるなんて。絵を描くアーティストを見ていても思う。ものを作り上げる情熱、それを見せた時、相手におこる感情、心を揺さぶることが出来る職業の人を、心から尊敬している。私には、何か特別な才能があるのだろうか。
大学を卒業して、これといった目的もなく、仕事に打ち込むパッションもないから、ここから逃避する私に。

「どうしたの?嫌い?」、悩んでみえた私に彼が問う。「ううん、すごいなと思って」彼は、私を、ひざに乗せて、今出来上がったばかりの曲を、歌ってくれた。
昨日からのささやきがそのまま曲になったような、私の耳に、はずかしさを残しながら、私のおなかの下を刺激する曲。私たちは、もう一度、愛し合った。

彼は、私のことを、未樹に聞かれたときのように、いろいろ聞いてきた。

春まで学生をしていて、今はバイト以外何もしていないこと、バイトは電話のオペレータを学生時代から続けている、年齢は彼と同じ、家族は父、母、妹、彼は今はいないと。そして、「もう質問コーナーななしだよ」と打ち消した。これからロンドンに発つことを言うのがはばかれた。3日しかいれないのに、抱かれた軽率な女という見方をされたくなかった。激しく愛し合ったあと、自分のために曲も書いてくれたのに、遊びのためだけに抱かれたとも思われたくなかった。

その日はゆっくりと食事をして、家でお互いをもっと知り合いたいという彼だったが、私はあせっていた。あと2日しかない!2日一緒にいて、さよならするとき、どんなにつらくなるかを想像しみると、心が苦しくなった。だからといって、時間のことを話す勇気もない。私は、「遊園地に行きたい」と子供のようにねだってみた。
「OK、綾香の行きたいところなら、どこへでも行こう」と彼は、ジーンズをはいて外出の準備をしてくれた。

遊園地に到着したのは、もう既に夕刻で、人がまだらで、たくさんの乗り物に待ち時間なしに乗れた。彼は、始終、私に人の目もはばからず、外人だからというのでなく、恋した少年そのものの視線で、キスしてきた。ジェットコースターでも、幽霊屋敷でも、私たちは、じゃれあった。観覧車に乗ったときは、もう暗くなった夜になっており、私たちは愛し合った。

夕食はおしゃれな中華のレストランでした。ワインで二人が会えたことを祝い、彼はこれからの私たちに乾杯と述べた。私は、あと2日で言ってしまうことに、心が割れるように苦しかったが、まだ言えずにいた。その夜も、彼のマンションで愛しあった。私は、行くときに、涙がでてきたが、本当は、黙っている苦しさの涙だったと思う。彼は私の涙をキスでぬぐいとってくれた。

次の日、彼は最初から、彼の母親の知り合いを空港まで迎えに行くという予定を入れていた。私は迷惑だし、いったん、家に帰ると言ったが、彼は、私を帰さなかった。
彼に連れて行かれるまま、成田空港に行き、その知り合いの男性にあった。
年配の研究者の人で、彼女だと紹介され、一緒に食事をして、彼をホテルまで送っていった。その間、自分の知らない人ということもあり、黙って微笑んでいる私に、始終、笑顔で手をさすったり、肩を組んだり、やさしいジェスチャーをトーマスは繰り返してくれた。そして、その夜、彼は、ピアノバーの仕事が入っていた。彼は、やはり、ピアノバーに一緒に来るように勧めたが、私は、自宅に帰ると彼の言うことを聞かなかった。

その夜、彼から電話があった。電話に出ると、彼の声はなく、彼のピアノが流れてきた。私のためにつくったあの曲。彼の歌声も聞こえてきた。

君の胸の上で奏でるピアノの旋律
この世で一番美しい音
あいしてる 心から


携帯には、彼のセクシーな響きが伝わってきて、胸がいっぱいになった。泣いていると、彼が電話口に出た。「聞こえた?綾香、なんで泣いているの?泣き虫だね。綾香、僕、知っていたよ。明日、行くんだろ?ロンドンに。バーテンダーがあの日君たちが話しているのを、僕にそっと教えてくれたんだよ。」私は、びっくりした。なぜ、わかっていて、一言も言わなかったのか。「恋をするのに時間はいらないよ。それを証明したかった。でも、今は時間がほしい。こんなに愛してしまっているのに。」彼の言葉に涙は止まらなかった。「明日、何時に出発?成田から?じゃ新幹線で東京まで行くんだね。僕も行くよ。一緒に。送りにいくよ。」と彼。

私はうれしかった。最後の日まで一緒にいられる。

明日の正午に電話すると、電話を切った。

夜は寝付けずにいた。彼のことを考え、なぜ、自分は発つのかと考えたり。

彼は夜中まで仕事のため、正午の約束にしたが、待てなかった。
彼のマンションに今すぐ行きたい気持ちをこらえながら、お昼になるのを待った。

彼からの連絡はないので、私から電話した。長いダイアルの後、電話口にでたのは、女性の声だった。「あなた、あつかましいわよ。トーマスには時々 恋が必要と言ったけど、それには、時間限定なのよ。あなたも3日で行ってしまうのわかっていて、抱かれたんでしょ。あきらめなさい。」あの年配のピアノバーのオーナーだった。
「彼の携帯に電話したのですが、彼と話させてください」と願い出た。
彼女は含み笑いをして、「フフ、あなたね、この携帯も私がトーマスに持たせているものよ。このマンションも私のもの、つまり、彼も私のものよ。さっさと行きなさい。」と自信満々に言い放つと、一方的に電話は切れた。

唖然として、しばらく動けずにいた。力が萎えていく無気力感を感じた。

彼にとって私は時間限定の恋の相手・・・悲しかった。
でも、私も最初から3日とわかっていて、抱かれた。オーナーのいうとおり。


スーツケースを持ち、私は成田へ向かった。

その夜、彼の電話番号が携帯の受付画面に光った。すぐに電話にでた。
「綾香、ごめんね。僕は自由を奪われたピアニストだよ。でも、あの曲を書いたときは、僕の指は自由に走っていたよ。元気で。さよなら」

彼のクリエイティブな才能に、彼の優しさに、彼の愛に、泣いた。

仕事決まったヾ(@°▽°@)ノ

長い夏休みが終わったってかんじ。

小学校も中学校も前期が終わり、後期が来週から始まる。

ちょうどいいタイミングかな?

がんばるぞニコニコ 


ブログも毎日、更新できるように時間調節しなくちゃね(^O^)