雨上がりの帰り道 | 名古屋千種今池ネイルサロン「ネイリストゆきぷぅのネイル部屋」

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主婦ネイリストゆきぷぅのネイルに関するあれこれを色々と綴っているブログです

9月1日。
新しい月がスタートする日は何だか気が引き締まる。

なのにそんな日に、ワタシはサロンで大きな問題を起こしてしまった。


その日、二人目のお客様から発せられた強い口調の言葉。
「スタッフ交代してちょうだい」と。


ほんの一瞬、自分の耳を疑って時間が止まった気がした。
そしてお客様が続けて強い口調のままでその理由を述べた。

ホントは説明したかった。
なぜ自分がそのように施術を行ったのかを説明したかった。
しなければいけない状況だったと思う。

でもこれ以上拒否されることが怖くて言えなかった。
ワタシは、ただ怖くて逃げ帰るようにその場を離れた。

バックルームへ向かい、幸いその時間に入客していなかった店長に報告をし
お客様のご要望通りに施術を交代することになった。

施術を引き継いで下さった店長の後についてテーブルに戻って
自分の道具を引き上げる時に
「ここで失礼します。どうもありがとうございました。」と言って頭を下げた。
でも、お客様が再びワタシと目を合わして下さることはなかった。


再びバックルームへ戻ったワタシは、正直ホッとしてた。
恐ろしい場所から離れられた気持ちになって、とにかく安堵した。


でもスグに後悔が全身を駆け巡った。
「どうしてあの時ワタシは理由を説明して、理解を得ようとしなかったのか。」

決定的な失敗があった訳ではない。
技術的に何か問題ある行動をした訳でもない。
笑顔で接してお客様の意向をくみ取ろうと頭も必死に動かした。

自分の施術に自信があったのなら、ちゃんと理由を説明できたはずだ。
どうして何も言えなかったのか。

それは、やっぱり自分に自信が持ててないからだ。
自分のネイルに自信がないから
だから理解を得るための一言を出せなかったんだ。


もし、あの時。
ちゃんと説明が出来ていたら?
お客様は理解してくださったかもしれない。

もし、あの時。
細かく事前に説明を行いながら施術をしていたとしたら?
お客様は感情を爆発させなかったかもしれない。


決定的な失敗はなくても
ワタシはお客様の心の動きに沿えてなかったんだ。
空気の読めないネイリストだったに違いない。


空気が読めない上に、怖くて逃げ帰ったんだ。
なんて不甲斐ない。
そして、なんて情けない。


ワタシは怖さに怯えて、大切な努力を怠ったのだ。




バックルームに引き上げてきたワタシを他のネイリストは励ましてくれた。

恐怖。
悔しさ。
情けなさ。
不甲斐ない自分への苛立ち。

色んな気持ちが錯綜して泣きそうだったけど
何とかその場では涙を我慢した。


その後も、仲間のネイリストは色々と気を使ってくれた。
たくさんの励ましの言葉をくれた。
そして今後ワタシがどう努力したらいいかアドバイスもくれた。
ホントにたくさんの気を使ってもらった。

施術を終えた店長に、どのようなことがあってそうなったのか再び詳しく説明した。
幸いなことにそのお客様は次回予約を入れてからお帰りになられたと聞いて
最悪の結果は免れたのだと思ったら、少しだけホッと出来た。
ワタシが作ってしまった険悪な空気の中、施術を引き継いで下さった上に
お客様が次回予約を入れて下さるような接客と施術をして下さった店長。
本当に感謝の気持ちでいっぱいになった。




その日は、夜遅くまでサロンに残らせてもらった。
9月からの新しいデザインの練習をしたり
先輩に自分の右手にジェル乗せてもらったり
先輩の手を借りて練習もさせてもらった。
付き合ってくれた先輩に感謝でいっぱいになった。


そして夜遅く帰宅。
最寄駅に到着したのが深夜11時を過ぎていた。
カバンから定期入れを取り出そうとしたら1枚のメモを見つけた。
今日、先輩から言われたアドバイスをメモした紙だった。

その時、これまで抑えていた感情が急に溢れ出した。
雨上がりで肌寒い深夜の帰り道を、嗚咽をこらえて泣きながら歩いた。
涙を拭うのに眼鏡が邪魔で何度も何度もずらさなくちゃいけなかった。

感情が爆発している最中なのに
人通りの少ない深夜で良かったと冷静に考える自分もいた。
こんな時も周りの目が気になってしまう弱い自分が更に嫌になった。


なんて自分は弱くて未熟なのだろうか。
ワタシは本当にネイリストを名乗って良いのだろうか。
サロンに迷惑を掛けてばかりの存在ではないのだろうか。
努力しているつもりなだけで実際は足りてないのではないだろうか。
ワタシはこのサロンにこのまま居てもいいのだろうか。

グルグル考えているうちに、いつのまにか眠ってしまった。




翌日は午後からネイルモデルの友人が自宅に来てくれる日だった。
落ち込みそうな気持ちをどうにか抑えて笑顔で玄関を開けた。

でも施術の最中にポロっと弱音を言ってしまった。
愚痴を言ってる自分が恥ずかしくなって慌てて取り繕うとしたら
友人でもある彼女がこう言ってくれた。

「私、ゆきちゃんのしてくれるネイル好きだよ。」
「だって私の爪の事、私よりも大切に真剣に考えてくれて感謝してるよ。」


昨日の件で、こんな自分が嫌いだって思ったばかりだったのに
彼女は私のネイルが好きだと言ってくれた。
正直、嬉しかった。
また泣きそうになったけど、恥ずかしいから必死に我慢した。

彼女のネイルを仕上げている時間はやはりとっても楽しくて
仕上がったネイルを嬉しそうに素直に喜んでくれる彼女の姿を見て
やっぱりネイルが好きだ、この瞬間がたまらなく幸せだと思った。

諦めたくない。
諦められない。
そう思った。

それなら、今まで以上に頑張ろう。もっと努力しよう。
もっともっと勉強して、練習もして、ネイル技術も接客技術も成長させよう。
今のワタシでは努力が全然足りてないから、こんなことになるんだから
もっとストイックにネイリストという職業に向き合わなくちゃいけないんだ。


今の自分に何が出来るのか。
今の自分に何が足りないのか。
今の自分がすべきことは何なのか。


考えて考えて考えてみよう。
やれることからどんどん始めて、言い訳するのはナシにして
もっと勉強して練習して努力して
そして成長して、もっと強くなる努力もしよう。


夢を叶えるため、また明日から頑張ろう。