四月二日(2)
『いくら陽射しが強いとはいえ、さすがに水着1枚で外に出るのはちょっとつらい』
『プールサイドに出たら、真っ先に水に飛び込んだ方がいいだろう』
……そんなことを思っていたが、予想に反して、外気は嘘みたいな暖かさだった。
かと言って、じめじめした汗ばむような暑さなんかは感じることなく、いたって快適な温度、といった感じである。
周りに張り巡らされている垣根が、実は防風林のような働きをしていてくれているかもしれない。
「いやぁ~しっかし良い天気でよかったねぇ~」
ふいに、慎哉がまぶしげに太陽を見つめながら、そんなことを口走った。
「それに、優架ちゃんにも感謝しなくちゃいけないなぁ~」
「え?……なんで、私に?」
不思議そうに、そう返答する優架。
「だって、合宿前の電話連絡で、言ってくれたじゃないか?」
「『必ず水着を持参すること!』ってさ」
「あ、ああ……」
「いくら海のそばだからと言っても、この春先のこの季節じゃ、泳ぐわけにもいかないし、なんで『水着持参』なんだろう?って、ちょっと不思議に思ってたんだ」
「そ、そうだよねぇ……」
「けれど、これで納得がいったよ。まさか温水プールがあるとはねぇ~」
「……………」
慎哉の言葉に対して、なんやら、返答に困っている優架。
「なるほど。確かに優架に言われなきゃ、水着なんか絶対に持ってこなかったもんな」
オレも慎哉の意見に同調する。
「そう。そういうこと!」
「だけど優架、なんで近くに温水プールがあるなんて知ってたんだ?」
疑問に思ってたことを、オレはふと優架に尋ねてみた。
「それは……その……」
「?」
「……知らなかった」
「へ?」
予想だにしない優架の返答に、思わずまぬけな言葉を発してしまうオレ。
「温水プールがあるなんて知らなかったの!」
「えっ!?ってことはひょっとして、海で泳ぐために『水着持参』って言ってたの、優架?」
信じられない優架の言葉に、驚きを込めて、信乃が尋ねてしまった。
「だって、……ここって結構南の方だし、もうとっくに海開きをしているもんだとばっかり……」
「はははははっ♪」
思わず、笑ってしまう信乃。
「なんで笑うのよぉ」
「ねえ、優架? 海水の温度っていうのはね、空気の温度よりも1ヶ月から2ヶ月くらい遅れて暖かくなるのよ?」
「え?……そう…なの?」
信じられないといった感じに、戸惑ってしまう優架。
「そうなの! つまり、今は『1年の中で最も海水の温度が冷たくなる時期』っていうわけ!」
「へぇ~、よく知っているじゃない、信乃ちゃん?」
おっとりとした口調で、紗映さんが言う。
「この時期に海に入るなんて、自殺行為だよ」
紗映さんに感心な言葉で誉められたせいか、信乃が少し鼻を高くして、そう付け加えた。
「まあ、どっちにしろ、結果的には良かったわけだから……」
「僕は優架ちゃんに、感謝してるよ?」
ご自慢の長い髪をかき上げながら、フォローのつもりなのか、慎哉が優架に流し目を送った。
「ああ、さんさんと降り注ぐ太陽の光……」
と訳のわからないセリフを言いながら、両手を天に広げ、慎哉は天を仰ぐような行動をした。
「それじゃあ、諸君、アディオース!」
慎哉はそう言い残して、いきなりプールサイドを駆け出して、水面に向かって飛び込んだ。
が、見るも無残な、腹から落ちるダイブ……。
『バチン』という痛々しい音とともに、豪快な水しぶきが舞い上がる。
それは、まるで飛込みが苦手な小学生のような不恰好な飛び込みそのものだった。
ただし、小学生のような愛らしさは、微塵も感じることはなかったけれど……。
ふと、ホテルの壁に掛けられたアナログ時計を見ると、針はちょうど正午を指し示していた。
天気は、相変わらず良い状態のままだ。
みんなは、プール内のあちこちへと散り、思い思いの事をしながら、それぞれに楽しんでいるようだった。
さて、オレは……
とにかく、がむしゃらに泳ぎまくりたくなった。
何故だろう?体がうずうずしていた。
春だからだろうか……?
先ほど、慎哉が口走った言葉の気持ちが何となくわかるような気もしてきた。
オレは、早速水の中へ飛び込んだ。
飛び込んだスピードを殺さないように、すぐに水面へと浮上して、クロールの形をとる。
頭の先からつま先へ、さらさらと水が流れていく感じがする。
端から端へ泳ぎきり、息つく間もなくクイックターン……。
自分でも驚くほどに、なんだか体が軽かった。
朝に体のだるさを感じていたのとは大違いだった。
まるで、水面を滑っているかのように感じていた。
「プハーッ!」
スタート地点へと戻り、大きく息を吐き出す。
そして何気なく上方を見上げると、一段高くなったプールの縁で、誰かがオレのことを見下ろしていた。
『プールサイドに出たら、真っ先に水に飛び込んだ方がいいだろう』
……そんなことを思っていたが、予想に反して、外気は嘘みたいな暖かさだった。
かと言って、じめじめした汗ばむような暑さなんかは感じることなく、いたって快適な温度、といった感じである。
周りに張り巡らされている垣根が、実は防風林のような働きをしていてくれているかもしれない。
「いやぁ~しっかし良い天気でよかったねぇ~」
ふいに、慎哉がまぶしげに太陽を見つめながら、そんなことを口走った。
「それに、優架ちゃんにも感謝しなくちゃいけないなぁ~」
「え?……なんで、私に?」
不思議そうに、そう返答する優架。
「だって、合宿前の電話連絡で、言ってくれたじゃないか?」
「『必ず水着を持参すること!』ってさ」
「あ、ああ……」
「いくら海のそばだからと言っても、この春先のこの季節じゃ、泳ぐわけにもいかないし、なんで『水着持参』なんだろう?って、ちょっと不思議に思ってたんだ」
「そ、そうだよねぇ……」
「けれど、これで納得がいったよ。まさか温水プールがあるとはねぇ~」
「……………」
慎哉の言葉に対して、なんやら、返答に困っている優架。
「なるほど。確かに優架に言われなきゃ、水着なんか絶対に持ってこなかったもんな」
オレも慎哉の意見に同調する。
「そう。そういうこと!」
「だけど優架、なんで近くに温水プールがあるなんて知ってたんだ?」
疑問に思ってたことを、オレはふと優架に尋ねてみた。
「それは……その……」
「?」
「……知らなかった」
「へ?」
予想だにしない優架の返答に、思わずまぬけな言葉を発してしまうオレ。
「温水プールがあるなんて知らなかったの!」
「えっ!?ってことはひょっとして、海で泳ぐために『水着持参』って言ってたの、優架?」
信じられない優架の言葉に、驚きを込めて、信乃が尋ねてしまった。
「だって、……ここって結構南の方だし、もうとっくに海開きをしているもんだとばっかり……」
「はははははっ♪」
思わず、笑ってしまう信乃。
「なんで笑うのよぉ」
「ねえ、優架? 海水の温度っていうのはね、空気の温度よりも1ヶ月から2ヶ月くらい遅れて暖かくなるのよ?」
「え?……そう…なの?」
信じられないといった感じに、戸惑ってしまう優架。
「そうなの! つまり、今は『1年の中で最も海水の温度が冷たくなる時期』っていうわけ!」
「へぇ~、よく知っているじゃない、信乃ちゃん?」
おっとりとした口調で、紗映さんが言う。
「この時期に海に入るなんて、自殺行為だよ」
紗映さんに感心な言葉で誉められたせいか、信乃が少し鼻を高くして、そう付け加えた。
「まあ、どっちにしろ、結果的には良かったわけだから……」
「僕は優架ちゃんに、感謝してるよ?」
ご自慢の長い髪をかき上げながら、フォローのつもりなのか、慎哉が優架に流し目を送った。
「ああ、さんさんと降り注ぐ太陽の光……」
と訳のわからないセリフを言いながら、両手を天に広げ、慎哉は天を仰ぐような行動をした。
「それじゃあ、諸君、アディオース!」
慎哉はそう言い残して、いきなりプールサイドを駆け出して、水面に向かって飛び込んだ。
が、見るも無残な、腹から落ちるダイブ……。
『バチン』という痛々しい音とともに、豪快な水しぶきが舞い上がる。
それは、まるで飛込みが苦手な小学生のような不恰好な飛び込みそのものだった。
ただし、小学生のような愛らしさは、微塵も感じることはなかったけれど……。
ふと、ホテルの壁に掛けられたアナログ時計を見ると、針はちょうど正午を指し示していた。
天気は、相変わらず良い状態のままだ。
みんなは、プール内のあちこちへと散り、思い思いの事をしながら、それぞれに楽しんでいるようだった。
さて、オレは……
とにかく、がむしゃらに泳ぎまくりたくなった。
何故だろう?体がうずうずしていた。
春だからだろうか……?
先ほど、慎哉が口走った言葉の気持ちが何となくわかるような気もしてきた。
オレは、早速水の中へ飛び込んだ。
飛び込んだスピードを殺さないように、すぐに水面へと浮上して、クロールの形をとる。
頭の先からつま先へ、さらさらと水が流れていく感じがする。
端から端へ泳ぎきり、息つく間もなくクイックターン……。
自分でも驚くほどに、なんだか体が軽かった。
朝に体のだるさを感じていたのとは大違いだった。
まるで、水面を滑っているかのように感じていた。
「プハーッ!」
スタート地点へと戻り、大きく息を吐き出す。
そして何気なく上方を見上げると、一段高くなったプールの縁で、誰かがオレのことを見下ろしていた。
