特定保健指導のセッションに、
クライアントとしてお見えになった、
不動産会社の営業職に就かれているTさんと
お目にかかりました(50歳代男性。一人暮らし)。
ここ2~3年で体重が約5kg増加し、
中性脂肪や血糖値の上昇が気になっているとのこと。

 

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原因として思い当たることを伺うと、
「わからない」とのご返事。
そこで、普段の食生活について詳しくお聞きしました。
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Tさんは毎朝ご自身でお米を2合炊き、
半分をおにぎりにして朝食に、
残りを夕食として召しあがるそうです。
昼食は、主に外食。出先でさまざまなお店を利用。
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夕食のおかずは冷凍食品を活用され、
1~2人前のパックは1日で召しあがり、
3~4人前のものは2日に分けて召しあがるとのことでした。
冷凍野菜も利用されているそうで、
レンジ加熱で温野菜にして召しあがるとか。
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現在の体重や体型、食事量などから推察すると、
エネルギー過多の傾向が伺えましたが、
お一人暮らしでお忙しい中でも、
3食をきちんと摂り、
栄養バランスにも配慮されていることに、
むしろ「よく工夫されている」と感じました。
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そこで、あえて問題点には触れずに、
「上手に工夫されていますね。
そうしたお食事法は、どのようにしてお考えになったのですか」と
お尋ねしたところ、
Tさんは少しお考えになってから、
次のように話してくださいました。
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「いまは一人暮らしですが、妻がいたんです。
何年も入退院を繰り返して、3年前に亡くなりました」
「妻の入院中は、
自分の食事がいい加減になってしまって……。
ついカップラーメンだけとかね」
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「妻が一時退院したときには、
ボクの食事を見て、『カップラーメンだけじゃダメよ』
『野菜も食べなくちゃ』なんて言いながら、
心配してくれたんですよ」
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「心配をかけたくないけれど、料理は苦手で……。
そこで2人で考えたのが冷凍食品だったんです」
「食卓にご飯とおかずが並ぶのを見て、
妻はとても安心していたようでした」
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「奥さまとご一緒にお考えになられた食事法だったのですね」
と申しあげると、
Tさんは笑みを浮かべながら、
「そうですね。ただ、食べることだけに一生懸命になって、
量を気にはしていなかったかも……」
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そして、こうおっしゃいました。
「いま考えると、『太る食事法』だったかなぁ」
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お話し合いの結果、
お米は1日1.5合とし、朝食のおにぎりはこれまでどおり、
夕食のご飯を控えることになりました。
Tさんは「健康で長生きしないと妻に怒られそうだから、
がんばってみます」と、
にこやかに宣言されてお帰りになりました。
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食事の背景には、
人それぞれに物語がある。
その方にとって、それは大切な人生の1コマでしょう。
「健康支援」「食事相談」とは言っても、
その方のヒストリーや心情に目を向けない支援は、
擦り傷に絆創膏を貼るだけのようで、
その方の今後の方向性について、
なんのヒントもお伝えできません。
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今回の事例では、奥様を亡くしても、
お2人の食習慣が踏襲されていることがわかり、
Tさんの微笑みは、こちらの笑みを引き出してくれるのでした。
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