
年末年始、仕事が忙しくてなかなか更新できないままようやく通常業務となった1月後半💧
不定期更新ですが今年もよろしくお願いいたします。
”彼のこと”の続きです。
上司の部屋から出るよう促され、静かに扉を閉める。ガラス張りの部屋だがブラインドオンにされて様子も伺えない。
自席でPCを開くと堤の秘書からチャットが来ていた。「上司からは問題無いと聞いているけど何か問題勃発?」どうやら会議後ろの予定をリスケして私の上司の元に駆けつけたようだった。
若い上司の一回り以上年上の堤だ。
年齢だけではなく、役職も上の上。
誤解だと逃れるはずはない。
堤の秘書へ「状況確認中」とチャットを手短に返したらコンプラ担当だけが部屋から出てきた。
「やばいねぇ。○さん(私の上司)が窮地に立たされてるよ」とそそくさと逃げるように出て行った。
続けて堤も部屋から出てきて、いつも通り優しい声でこう言った。
「誤解されて嫌な気分にさせたね。
居心地が悪ければいつでも僕のところへどうぞ。
彼とはもう話はついたよ」と。
何のことだかさっぱりわからず、堤が自室に戻るのを見届けて上司の部屋に入る。
上司はネクタイを外しながら全身で苛々を表している。詳細は省くが、要は堤は私の上司の弱みを何個も握っていたのだ。
私を支部所を超えて引き抜いても良いかと打診されたという。
若くして地位が上がると実力が伴っていたとしても敵は多い。
人は「正しさ」より「感情」で動く生き物だから。
自分が届かなかった場所に先に立たれると、怒りと嫉妬の置き所が見つけられないのか、窓の外を見ながらうろうろして文句ばかり言っている。
数年間、この上司とタッグを組んで上手くやっているつもりだったけれど、それは彼の自尊心の応急処置係として大事にされていたと思うと、ため息が出る。
同時に”信用”はされていても”信頼”はされていなかったのだと気がついた。
深夜早朝も問わず彼の業務要望に応えてきたが、それはやりがいではない。
20年の経験があるこの仕事は私のアイデンティティだった。
次の瞬間、私は後先考えずに窓側に向かって
「私、辞めます」と口にしていた。