○空回りする猫様からのリクエスト小説です。
遅くなってしまい申し訳ないです;; リク、ありがとうございました!
○暇潰しにでも
○短編
○読みやすいよう改行多めかも
○ほわほわ系目指しました
*奏多(カナタ) ((かなって呼ばれることも
*結香(ユイカ)
―――――――――――
うっすらと目を開けた。カーテンの隙間から覗いている日の光。
「……朝、だ…」
眠い。乾いた目をごしごしとこする。空いているもう片方の手で体を起こす。
あれ、ここはどこだっけ?
紺色のカーテンで塞がれている大きめの窓。
漏れた光の先にある真っ白の本棚。
私が寝ているベッドは本棚の隣にある。毛布がカーテンと同じ色だ。
下には小さい台が置いてあり、その上にはプリントやノートが散らばっている。多分、私のだ。
「かな、た…?」
そうだ。思い出した。
昨日は奏多の家でレポートを仕上げていたんだ。
それでそのまま寝ちゃったんだ、私。奏多が相手してくれないから。
奏多というのは、私の彼氏だ。一応。
そして私は、結香。同級生で同じ大学。
奏多は、小さい台の向こう側にいるヤツ。
「もう起きてたんだー、早いね」
ベッドに座ったまま声をかける。寝起きだからか少し声がかれている、気がする。
「…ん、おう」
適当な返事が返ってくる。しかも、こっちに背中を向けているもんだから、声が余計小さく聞こえる。
パラ…と、時々紙をめくる音が聞こえてきた。
「また、マンガ読んでたんだー?」
無意識に声にトゲが入る。
昨日だって、私がレポートしてる横でずっと読んでるんだもん。
彼はレポートを早々と終わらせマンガを開いていた。
どんだけ好きなのよ。
何とかっていう題名のマンガが凄く面白いらしい。彼は全て揃えているようだし。
それに出てくる主人公キャラの何とかっていう名前の女の子。
主人公ちゃんが奏多は一番好きなんだそうで。世界中のどのキャラクターよりも。
密かにグッズを買っていたのを目撃してしまった。
その子のことになると私なんて彼には見えてない。
時々不安になる。
奏多の彼女って、あの主人公ちゃんだっけ、って。
そりゃ、私だって彼女扱いされるわけだけど…主人公ちゃんに対する愛情の量が気になる。
だって、だって、だって、だって、さ。
主人公ちゃんって現実にいないわけで、二次元という遠い存在であって、生きていないんだよ?
思うことは沢山あるのだけれど、私が奏多を好きなことに変わりは無いのだから、まあいいや。
いつも結論はそこに至る。
いろいろ考えていたら彼の声が聞こえ、現実に戻される。
「……あ、結香、朝飯食う?」
私が問いかけたマンガのことなんて、スルーする奏多。当たり前だ、とでも言うように。
何なの。
「ね、こっち向いて」
話が噛み合っていないのは分かっている。
でも、目ぐらい合わせて話して欲しいに決まってる。
「かーなー?」
おかしいな。声は聞こえているはずなのに、返事がこない。
もしや…と思い、私はベッドの中から出る。
こういう時、奏多は大抵マンガに夢中になっている。
よく分からないが、"いいところ"らしい。
真っ直ぐと歩いて行きちょこん、と彼の右隣に腰を下ろした。
体育座りをして膝の上に頬を乗せる。少し上の方にある彼の目を見つめてみる。
じー…と見つめていると、その先にある目が忙しなく動いているのが分かった。
私の姿なんてこれっぽっちも映ってないや。
左手でアリほどの隙間を作ると、自分と彼の間を行き来してみる。
こんなに近いのになあ。
いつ気付いてくれるんだろう。
そう思っていると奏多がこっちを向いた。目が少し大きくなってびっくりした顔になる。
「…っ。結香、ごめん。気付かなかった…」
少しだけ、申し訳なさそうに目を伏せて言う。
けど、それじゃあまだ許したくなかった。
むうぅ…と思いっきり頬の中に空気を詰める。私だって甘えたりしたい。
主人公ちゃんに負けてられない。
「奏多のばか。許してあげないもんねーだ」
ふいっとそっぽを向く。
今日は何されても許さない。少しは反省すればいいんだ。
そう決心して、彼から何かしてくれるのを待つ。
「…………」
沈黙が2人を包み込む。まだ5秒と経っていないのだけれど、何故か長く感じる。
両足の親指同士をぶつけて暇潰しにしてみる。
親指の先にクッションが見えた。そろーっとクッションを取り、それを抱いて、また体育座りをする。
「…………」
しばらくして、すぐ近くで紙をめくる音がした。
は…?もしかして今、マンガ読んでるの?
こちらからは何もしたくない。なので、訊けないし、見ることもできない。
仕方なくそのまま待つことにする。
「…………」
パラ…。
一枚ページがめくられる度に思いが蓄積されていくようだった。
何で何も言わないのよ。少しはこっちも気にするもんでしょ。
どんだけそのマンガが大事なの。
「もう、奏多?!」
とうとう我慢しきれずに、声を出してしまった。
発した声と同時に顔も彼の方に向ける。
彼は、先程より大きく目を開いた。やっと、マンガを読むのを止めた。
「何、してたの?」
もう怒りなんかより、寂しさが大きくなっていた。
抱いていたクッションを隣に置いて、彼と向き合う。
私の目より大きくなっていた彼の目がだんだんと元に戻る。
そして、ゆっくり口を開いた。
「結香、ごめん。いいところだったからさ…」
"いいところ"
何回その言葉を聞いただろう。いつもそう言う。
会話を遮ってまで読むものなの?
「そのいいところってさ、そんなに大事…?」
俯いて、けれど彼には聞こえるようなはっきりとした声で聞いた。
彼の目が見られない。
もし、うんって頷かれたらどうしよう。
そんな、ほんの少しだけの不安だったのに、彼の言葉を聞いた瞬間、本当になった。
「うん、大事」
本当に、本当にどうしよう。
顔の血の気が引いて、言葉が発せなくなる。
明らかに様子が悪くなった私を見て、彼はいつもしてくれるように頭を撫でてくれた。
大きな温かい安心する手だった。
「けどさ、それ以上に結香が大事だよ」
ほっと思考を取り戻しかけていた私に彼がそう言った。
まるで、恋愛マンガとか小説とか物語で出てきそうな言葉。
「へ?」
まだ理解できてない脳。思わず、聞き返してしまう。
彼は、少し頬が赤くなったように見えた。
「一回しか言わない」
小さな声で返ってきた言葉に、私は聞こえてて良かったって思った。
「ね、奏多、さっきのほんと?」
我ながら単純だな、と思う。彼の一言でこんなに幸せになれるんだから。
「んー…ほんと」
彼はそう言うと、私の頭の上に乗せていた手を下ろし、軽く抱き締める。
ぶかぶかのパーカーを着ている彼に包まれる。
大好きな匂い。奏多だ、って思った。
「ふふ」
自然と笑みが零れてしまう。
奏多の背中に腕を回して、ぎゅうっと抱き締める。
何秒だったか何分だったか分からないけど、そのまま抱き締めていたが、彼がそっと離れる。
頬が緩んでいる私の顔を見て、彼が微笑んだ。
「なあ、ちょっと続き読んでもい?」
「…え…?」
さっきまでが嘘のように彼はマンガを読み始めた。
理解が追いつかない。
とりあえず、思う。私をほったらかすんじゃない。
「ねえ、かなー。朝ご飯はー?」
彼の左腕に頭を傾けて、猫なで声で言ってみる。
「ん、ちょい待ち」
これは一時無理そうだな。
そう感じた私は、奏多の後ろに回る。彼の背中に後ろから思いっきり抱き着く。
彼の背中は大きいので、抱きつきやすい。
「主人公ちゃんばっか相手してないで、私の相手もしてよー」
頬を摺り寄せる。
「奏多のこと嫌いになるよー?」
そう言いながらも私の頬は緩んでいた。
はいはい、ゆいちゃん。ちょっと待っててな、と奏多の声が背中越しに聞こえてくる。
こんな日常も幸せだな。
どうでもいいようなやり取りが楽しいな。
そう思いながら、奏多の背中に抱きついていた。
***
終了でございます!
少しでも楽しんでもらえていたら嬉しいです♪
読んでくださった方、ありがとうございます。
ただ幸せなリア充が羨ましいです(((
その幸せを分けてくれたら皆が幸せになれるのになって思います。
それじゃあ
(次はいつ会えるか分かりませんが…)
またいつか!