「ゆかるさん、ゆかるさん!良かった!起きました」
(久々によく寝れたぁ。起きたくなーい)
「ーん…?」
…あれ?
手首が動かせない…
寝る前となんか違う…
手首の点滴、短すぎーーー!
「あ、これ、気になります?」
…うん。
「お名前お願いします。ここどこかわかります?何日でしょう?」
目を開けると、大学の先輩男性看護師Oさんがいた。
「ゆかるです…⚫⚫病院の病室…何日だったかなぁ?」
「そうです!今日ね、ゆかるさん、肝性脳症を起こしたんですよー....1日ぼんやりウトウトしていて…覚えてます?」
「いやぁ…ただなんか、眠いなぁって。で、結構寝れたので、意識なくなる時にすごい気持ち良かったことと、Oさんに呼ばれてたこと、あと意識ないのに手首の点滴がめちゃ痛くてヘタクソやと思ってた事くらい…」
「ほんと良かった!でもちょっとでもおかしいと思ったらすぐ教えてくださいよ。ほんと危険なんで!」
熱血先生、剣道先生、イズミン達も来てくれる。
「覚えてる?傾眠傾向でね。確かにたまにアンモニア高値だけど…元々脳症を起こしてたのかもね。ない人もいるから鑑別難しいよだよ。さて、国家試験でもでたよね。ここで問題です!肝性脳症の1の症状を上げなさい。」
…先生?
いや、マークシートなんで…
肝性脳症から復活して…ここで問題…?
やっぱこの人もなんかアレやねん…
「えっと…昼夜逆転とか、不動不可とか、こむら返りとか?」
「そうそう!ね、それって不定愁訴と鑑別が難しいのよ。2になって羽ばたき振戦がでるのが客観的なわかり易い指標なんです。」
剣道先生「今はまだぼんやりしてます?」
「いや。あの点滴入るとすぐ意識スッキリです。」
「え、良かったけど、あの点滴って、そんなに効くんだ?!」
「ああ、あれない日はずっとぼんやり記憶がないですもん。経口のアミノレバンはダメですね。こんなこと言ったらアレですけど、肝性脳症て、いっぱい寝れる感じがめっちゃ気持ち良いんですよね…」
「え、そーなの?でも脳症で脳の機能障害起こしたら嫌だから、部屋とかご飯とか安定するまで変えていくねー。」
ふわっとして眠くてこのまま死ねるなら、ちょっと幸せかも…と思った肝性脳症でした。でも、他の人は暴れたり、噛み付いたり、点滴引きちぎったりする感じで意識なくなる人もいるらしい。
これは一種の臨死体験なのかなーって思いつつ、死ぬほうの人間としては、生きるか死ぬかなんて選べないし、どうしようもない事なんだなぁと何かを悟った出来事でもありました。
それと同時に死ぬって、私にとっては正直ダメージのない事なんだけど、私の周りにとっては大きな打撃になる。例えば、家族だし、入院病棟の看護師の同級生だったり、がんばってくれた医師や、研修医だったり…大学の先生だったり。
「それはイヤだな」と思った。
死んでしまったら「もう選ばれへんかってんし、しょーがないやーん!」って直接言えないし。
誰も傷付けたくないなと思った。
生きなきゃと思い、その時に臓器移植手術を受けることに決めた。