持たざる者は、いつだって奪うことに無頓着だ。
140ページ。
その膨大な教科書のデータを「送れ」と強要し、断れば逆ギレをする。
その神経の図太さに、私はある種の感動すら覚えた。
搾取する側の人間は、される側の疲弊など想像もしない。
だが、それだけならまだ「性格の不一致」で片付いたかもしれない。
決定打は、もっと静かで、陰湿な形でやってきた。
私の送った重要な業務連絡は、デジタルの海を漂流し続けている。
返信はない。既読すらつかないかもしれない。
しかし、彼のSNSのストーリーは数分おきに更新されている。
ランチの写真、仲間との笑顔、どうでもいい独り言。
彼はスマホを見ている。
画面に張り付いている。
ただ、私の存在だけが、意図的に視界から除外されているのだ。
優先順位の最下層。あるいは、透明人間扱い。
そう理解した瞬間、怒りは霧散し、乾いた笑いだけが残った。
これ以上、ここに留まる理由があるだろうか。
理不尽な要求に消耗し、無視という名の暴力に耐えてまで守るべき場所なんて、どこにもない。
「退部」。
頭の片隅に浮かんだその二文字は、今の私にとって、唯一の希望の光のように思える。
ログアウトする準備は、もうできている。