現在、一部の界隈では「ロシアピアニズムなど存在しない」という見解が飛び交っている。
中身を覗くと非常に限定的な見識で、「現在のロシア」を軸に捉えてしまっているか、或いは限られた流派のテクニックだけを見ているか、と言ったところである。

ダンタイソン「私がベトナムから留学した時、V.ナタンソン教授がテクニックをゼロから作り直してくれた。それを見たT.ニコラーエワが、ロシア教育システムの優位性を論文にした」

A.ガヴリーロフ「私は最後のロシアピアニズム継承者です」

D.トリフォノフ「今やロシアピアニズムも多様化し、一言で言えなくなっています」

例えば上記のような、ロシアのテクニックや音色の作り方を明らかに示唆する証言が、特に往年の時代を知るピアニストたちによって語られているという現実がある。私もマスタークラスを受講させていただいたD.ヨッフェ先生も、「私たちのピアニズムを実践すればいい」といった、誇りを持ったニュアンスで発言されていた。

そもそも、モスクワに留学してきた外国人に対して自国のシステムを事細かく説明する教授など殆どいない。況してや音色で作品を解釈する僕のメソッドの概念は、ロシアピアニズムの中でも更に少数派な部類であり、ごく一般的な「ロシアピアニズム」で比較しようのない奏法である。

だからこそ一般的な奏法書籍や、「ロシア奏法」という定義で測れない内容だ。(これは以前から何度も発信してきたので、かなり浸透されてきたようにも感じる)

しかし基礎の根底は、確実にロシアの教育を採用しているため、実践された方が従来の奏法と違いを感じるのは当然。

私が「ロシアピアニズム」を正式なタイトルに使わないことにしたのは、ロシアの教育システムを確実に踏襲した上で自分の感覚を信用できるようになったからである。
素晴らしい伝統があり、レッスン受講生にはこの歴史と奏法の中身をしっかりとお伝えしている。

「ロシアピアニズムが無い」というのは、どこまでも外側からの意見でしかなく、中身を実践してみればすぐにわかるシンプルな話なのである。