(前回のつづきです)

さらに本家の応接間で、フユは
刑事たちから、大勢の大人の前で尋問される。

フユが、スカートの中に青年の手が入ってきたことを
曖昧に済ませようとすると、
刑事はあれこれ具体的に答えさえようとして
容赦がない……


なぜ、その時、声が出せなかったの?

爆弾を仕掛けられたと思って、
恐怖心でいっぱいになった?

スカートの中に?
それで何があったの?
どこをどんな風に触られたの?

どうして逆らわなかったの?

本当に爆弾があると思っちゃったの?

義伯母までが、「そんなこと信じたのかぃ!?」と
うすら笑いを浮かべて、口を挟む。


なんでこんな思いをしなければならないのだろう。(>_<)

くまち~


年配の刑事は、
フユから答えられた断片的な情報を、
その場で見事に綴っていく。φ(.. )

一篇の小説のような被害届が、
見る間に出来上がっていく。

「……一刻も早い検挙をお願い致します」

フユの使わない言葉で、しめくくられた文章。
知らない誰かが主人公の物語みたいだ。


犯人は捕まってほしいが、
今一番フユが望んでることは、
そっとしておいてほしいことなのに。。

そして確かめさせられた膨大な若い男の写真。

誰が一番似てるのなんて、わからない。

クミちゃんのお母さんも、今同じ思いをしているという。
ポロシャツを着てたという証言が出たらしい。


フユには、そんなことはわからない。

襟はついてたかもしれないが、
どんな色のシャツかさえ分からないほど
恐ろしかったのだ。

思い出そうとしても、白黒にしか見えない風景。

思い出す……そういえば、クミちゃんは
あの夏の出来事を知っている!

どう思っているだろう。
こんな目に遭った私を、軽蔑しているかもしれない。



夜になって、やっと帰宅が許された。

迎えにきた母は、疲れ果てた10歳のフユに
吐き捨てるように言った。

「あんたにスキがあったからよ!」


【つづく】
注 昭和45年頃の設定です。現在の警察の話ではありません。

皆さん、もうちょっとのご辛抱です。
フユは強く成長している最中ですよ。きっと。


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