(前回のつづきです)

歯医者帰りのN街の美容室Aには、何度か通った。
銀座よりは低価格だが、下町にしては、
(新規客の割引が使えないと)ちょっと高め。
N街のマダムが集っていた。

担当のスタッフは、高校時代、陸上をやってたとかで
チャーミングな若者。
カットのセンスも、毛先にニュアンスを
感じさせてくれるほど。
アシスタントも美容学校出たての
フレッシュジュースのような女の子。

要するに、若さあふれるコンビであった。
そして若さと健康を兼ね備えた人ゆえに、
マニュアルどおりの 残酷な質問を、くり出すのであった。

まずは、今度のお休みの「ご旅行先は ?」のお尋ね。
私が杖をついて来店し、シャンプー台への移動も
足をひきずっていたのを、見てたであろ~~!?

なるたけ、さりげなく 
人混みは苦手なので、連休中に遠出の予定はない旨、答え
「私にとっては、美容院が貴重なレジャーですよー♪」
と言い添え、さっと雑誌のページをめくる。

が、インタビューは続き 
「そろそろ、バーゲンですね~。
どちらのバーゲンとか行きます?」

……バーゲン会場? 女の戦場だろうが!!! 
この身体能力で飛びこんだら、私もつらいが
周りの人たちにも多大な迷惑をかけるのじゃ~~。

それでもポーカーフェイスで 
「バーゲンは行かないんですよー。
わ・た・し・は……(さすがに察しろ、の間)」

「えっ? なんでですか?」 

来たか~~。
そこで仕方なく、若いお二人に母のような心持ちで、

脳こうそくの後遺症があり、
ご覧の通り、誰かにちょっとでも押されたら倒れてしまう。
しかし年寄りには見えないので、相手もよけてはくれないし
そんなところに行ったら、私もみんなも危険なんですよー、
と遠慮がちに説明。

「そーなんですかー」と答えながら、作業を続ける二人。
(同時に聞かれたというより、
それぞれ微妙にズレたタイミングで 
このフルコース×2回のお尋ねなのだった)

傷ついたわけではないけれど、、ただただ、面倒くさい。
せっかく日常を離れ、ひとりの女として美しくなるため(希望?) 
夢の時間に浸ろうと、ここに座ってるのに。 
私を現実に引き戻さないでくれ~~。

しかし、私は寛容な女。(で、ありたい)
若い二人に悪気がないのはわかっている。
とても仕事熱心で、良い子たちなのだ。
せっかくの夢の時間を壊したくないので、
なにも言ったりはしない。

なのに、そのようなことが毎回続くので (きっと定番の質問)
価格面でも、もっと節約できるところを探したくなり、
結局  美容室を変えることとなった。 

(つづく)

P.S.一瞬で、「お足もとに気をつけて」と言った、
あの銀座の美容師。そういう意味ではプロだったわー。


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