バイト先の上司。
副店長の彼は、30代半ば。
仕事中の彼の動きがオラウータンに似ていた。
そこで愛嬌こめて、ウータンと名付けた。
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「ウータン、おはよ」
「おはよう‥」
今日の彼は機嫌があまり良くなかった。それはよくある事。
「どした?」
僕はこの言葉を何回使ったことか。何回使わされたことか。
「んーとね、怒られたの」
「誰に?」
「店長に」
店長だとは分かっているが、僕は一応聞く事にしている。
「なんて言われたの?」
「ちゃんと人の話聞いてる?って」
「いつも聞いてないから怒られるんでしょ」
「聞いてはいるんだよ。耳に入ってこないんだよ」
彼が人の話を聞いていないのは、従業員の中でも有名な話。僕からしてみれば、店長は今までよく何も言わなかったと思うくらいだ。
「ボイスレコーダー買ったよね?」
「うん、買った。3万円の」
「せめて、それ使えばあとで聞けるじゃん」
彼は、あまりの人の話を聞いてないぶりに自分自身に嫌気がさし、ペン型のボイスレコーダーを買ったのだ。
「でも、難しいの。8時間しかもたないから」
「じゅうぶんだよ!休憩の時は電源切っておけば仕事中はもつでしょ!」
「大事な事言うなーと思ったら電源入れるんだけど、間に合わないの」
「バカだな。だったら、聞こえない時は聞き返せばいいだろ?」
「言えないよ〜、怖いよ〜」
「あっそ」
つまり彼は小心者。良く言って、心優しい、相手のことを考えたら何も出来なくなってしまう、小心者。
「店長言ってたよ。仕事は報連相。報告して連絡して相談する。忘れるんだったらメモを取る。文字に残しておけば少なくともあとで見ることが出来る。人間、すぐ忘れるんだから。って」
「ちょっと待ってね、今電源入れるから‥‥。はい、もう一回お願いします」
「もー絶対言わねー!」
「‥‥もー絶対言わねー!」
「再生すんじゃねーよ」