その日の獲物がどんな料理に化けるかというのも狩りの楽しみである。
夕食を作る段階になって、光啓は鍋に湯を沸かす傍ら、堀り上げてきたノビルを洗い始めた。
「それ、どうするの?」
「たまには包丁使ってみる?」
光啓の訊かれて、何となく挑発されている気分になった。たまには、という言い方が煽っている。
梶は嫌いだが包丁も持てないほどオンチというわけではない。
「いいよ」
顎を突き出すように答えると、光啓は小さく笑って私に包丁を持たせた。
意地を張ったのは読まれている感じだ。
ノビルの球根から生えていたひげ根や枯れ葉は、光啓が洗うときに取ったらしい。
そのうえ球根側を揃えてまな板の上に並べられているとなると、後の作業は本当に切るだけ。
「切り方は?」
「まず球根切って」
言われるままに切り落とした球根は光啓がざるの中に回収した。
「それから残った葉っぱを適当に四、五cmくらいに」
葉の中央を切り、全体の長さを半分にして揃え直してから言われた長さに切っていく。
「何だ、巧いじゃない」
「バカにしてんの!?確かに家事嫌いだけど、これくらいはできるよフツーにっ」
「ごめんごめん。じゃあ切った葉っぱもザルに入れて」
指示に従うと、「これは待機」と光啓がザルを流し台の隅に置いた。
次はセイヨウカラシナだ。
これもやっつける気になっていたのに
「あ、お湯沸いてきたし急ぐからいいよ。代わって」
あっさり降板宣言され、ふくれながら包丁をまな板の上に置いた。
光啓はセイヨウカラシナの葉を太めのざく切りにして、ツボミ一掴みと一緒に別のザルで水洗いする。
沸いた湯を待たすこともなく、スタンバイしたセイヨウカラシナを投入。
茹で時間は勘だろう。
流しの中に置いたザルにセイヨウカラシナを茹でこぼす。
アクを抜いたのだろうと言うことが、分かる程度には料理の手順を見覚えた。
「千晃、冷蔵庫のベーコン取って」
私がベーコンを出している間に、光啓が流し台の下から取り出したのは、パスタである。
「え、パスタになるの?」
「うん、今日は一品料理。けっこう美味いよ」
光啓が作るのだから、それは鉄板だが意外だっただけだ。
菜の花の仲間と言うからセイヨウカラシナはおひたしか何かになるのかと思っていた。
光啓が中華鍋を出して水を張り、塩を適当に振り入れて火にかけた。
塩を入れたということは、これでパスタを湯がくのだろうが