彼女は、剛造にもケンにも、僕にも同じような思いを寄せている。
その狭間を行ったり来たりしている。
彼女は恋愛の放浪者なんだ。
都合よく人を愛し、その手探りの優しさを伝って彼女は生きているようだ。
「あなただけを愛しているに決まっているでしょ?」
息を詰まらせながら、彼女は、そう言ってベッドにもぐり込んだ。
僕といる時は僕だけと言い、他の人といる時は、その人だけと言うんだろうか?
「ねぇ。」
僕は彼女が、もう、この部屋から出ていってしまうんだろうと思った。
「黙ってて。」
「ごめん・・・・・。」
人には誰にも一度の過ちでさえ許せないものがある。
そして、その過ちは形を変えてゆくだけで、決して消えてゆくものではない。
人を愛することだって、そうだ。
愛は形を変える。
そして、時には罪にさえなるものだ。
愛が罪になる時、それは一番の重罪になるのだろう。
僕は美冬の首筋を見つめ、ワインを一口、くちにしながら、愛の罪を背負い始めていることに気付いた。