「あなたに任せるわ。」
その言い方は、あまりにも投げ遣りな言い方だった。
「もう、北海道は雪が降っているんだってね・・・・・。旅行代理店の人が教えてくれたよ。」
「そうね・・・・・。雪よ。」
美冬はナイフとフォークを置いて、ワインを一口くちにして、食事をやめてしまった。
どうしても北海道には行きたくないのだろう。
「出発の日まで後、十日あるから、何を持っていったらいいか、準備してくれないかな?すっごく寒いんだろう?暖かい手袋とか、ダウンとか持っていった方がいいかな?」
「北海道の札幌市内は、そんなに寒くないわ。どこの建物にも全部、エアコンが効いてるし、タクシーで移動しちゃえば、ダウンなんて暑過ぎるわよ、きっと。」
「そう・・・・・・・じゃあ、東京とあんまり変わらないね。」
「うん。でも、路面が凍りついているから滑っちゃわないようにしないと、危ないし、人前で転ぶと恥ずかしいわよ。」
「じゃあ、どうするんだい?」
「靴の裏に金具を付けるのよ。どこの靴屋さんでも売っているから平気よ。」
「さすがに詳しいね。あとは、心の蟠りなく北海道に行けたら最高なんだけどな。」
「・・・そうね・・・・・。」
その最後の彼女の受け答えに、僕はいやらしい想像を植え付けられた。
もしかしたら、剛造とどこかに行くのではないか?ということだ。
それともケンだろうか・・・・・?
そのことは、前から考えていたことには違いないけれど・・・・・。