二本目のビールを二人で空けた後、彼女はステーキを焼き始めた。
彼女の後姿には、いつも寂しさがあるのを、今日はとても強く感じてしまう。
多分、それは、美冬がこの部屋に来て、いちばん優しく振舞おうとしているからだろう。
「はいっ!出来たわ。」
彼女は僕の目の前にステーキをのせた皿を置きながら、
「上手に焼けたかしら?」
と、そう首をひねり、
「ねぇ、赤ワインある?」
と、僕に尋ねた。
「う~んと・・・・・・・。多分あると思うよ。」
「あっ、本当だ。あったわ!」
彼女は戸棚の中から赤ワインを取り出してきて、テーブルの上に置いてある、この間買ったワイングラスに注いでくれた。
その時の彼女の笑顔は、本当に今まで見たこともないように、一番、鮮やかに輝いていた。
僕らは、もう一度、乾杯をして、ステーキを食べ始めた。