「何があるの?」
「えっ?… それがね、今日初めて作ったから、美味しいかどうか、わからないんだけど、食べてみてくれる?」
彼女は子供のように照れてみせた。
そんな普通の仕種がとても新鮮だった。
そして、その裏側に僕を驚かすものを感じてしまう。
彼女がテーブルに運んでみたものは八宝菜だった。
「美味しそうだね。」
「美味しいかしら?・・・・・味見したんだけど・・・・・。」
僕は彼女が受け皿に分けてくれた八宝菜を口にした。
美冬は僕をジッと見つめている。
「あぁ、本当に美味しいよ。」
彼女に向かって、そう微笑み返した。
彼女が今まで零してきた涙の味がした。熱い思いが胸に込み上げてくる。
「本当?!私、料理の才能あるのかな?」
「いつも、君の作る料理は美味しいよ。本当に・・・・・。」
彼女は冷たく鋭い眼差しを隠すように、瞳を伏せて笑顔を浮かべた。