けれど、部屋の前に辿り着くと、僕の気持ちは安堵し、高揚した。
ドアを開けると美冬が夕食の支度をしている。
僕が帰ったことに気付いた美冬は笑顔で僕を迎えてくれた。
「あっ、お帰りなさい。」
「ただいま・・・・・。」
「どうしたの?なんか元気ないみたいだけど。」
「・・・・・・・・・・。」
だけど僕は、そんな優しい言葉をかけてくれる美冬の瞳の中に冷たさを感じている。
僕は平静を装うと無理に笑おうとした。
「そうかい?仕事疲れかな・・・・・・・。」
彼女は僕の言葉を見透かしたように呟いた。
「やっぱり、変よ・・・・・。」
僕に背を向け、食卓に色々な料理を並べながら、その表情は、段々と冷めてゆくようだった。
フッと一息、溜め息をつきながら、スーツからパジャマに着替え、冷蔵庫からビールを取り出し、コップに注いで一気に飲み干した。
「ふぅ・・・・・。」
何だか一日が、ようやく終わってゆくようだ。
窓には夜と夕暮れが、二つに分かれて映し出されていた。