まるで懐かしい旋律を耳にしているような意識の中で、僕は彼女を遠くに見つめた。
「遅くなってごめんね。」
彼女は片手にコンビニの袋を提げ、にっこりと微笑んだ。
「いいや、別にいいんだよ・・・・・。」
彼女に吸い込まれるように僕は彼女を見つめている。
彼女は僕の方を振り向きもせず、キッチンの立つと、
「何か作ってあげるわ。何にも食べてないんでしょ?そんなんで仕事に行ったら身体に悪いわよ。」
「えっ?そう・・・・・。何だか悪いな・・・・・。」
「いいのよ。気にしないで。さぁ、早く作らないとね。」
僕はソファーの上で彼女の言葉の優しげな甘さの中に寄り添い、縋るように眠ってしまった。
彼女に起こされたのは、それからちょうど一時間後だった。
会社には何とか間に合う時間だ。
「ご飯出来たわよ。早く食べて。会社に送れちゃうわよ。」
僕は、ぼんやりしながら頷いてご飯を食べた。
テーブルの上には、できたての朝食があった。
そして、テーブルの向こうには、美冬がいた。
彼女は何を考えているのだろう・・・・・?
まるで何も考えていないようだ。