僕は、いったい何を演じているんだろう?
彼女の悲しみを拭うはずだった。
なのに、いつの間にか、自分のしている事が何なのかわからなくなってしまった。
自分の心を放棄するようなまねをするつもりはなかったんだ。
もし、自分の心を偽ったら、全ての時間は無駄になると思う。
ただ、いつの間にか、本当に、僕自身でさえ気付かないうちに、自分の不安を取り除くために美冬を必要としていた。
いつの間にか逆さになったいたんだ。
この不安は”愛”というものへの代償なのか?
「寂しい人ね・・・・・。」
「あぁ・・・・・。」
「待っていて。今すぐ着替えてあなたの部屋に行くわ。
いいんだ・・・・・。来なくてもいいんだ。
・・・・・そう言えなかった。
「あなたは私の事を愛しているのかしら?」
僕は笑った。
悲しみが最高潮になると笑いになると言うが、そんな笑いだった。
そして、こう答えた。
「君の思っている通りの僕がいる・・・・・。それだけだよ。」
夜が明けようとしていた。
夢は、まだ覚めない。
「じゃあ、待っていてね。」
彼女の口調が柔らかく囁いた。
その時、彼女の肉体と心が風に靡く激しい炎のように僕の脳裏をかすめ、憎悪と愛とが交互に揺れ動いていた。
「あぁ、本当に愛しているよ。」
彼女の唇は僕の心に口づけるように呟いた。
「ありがとう。私もよ・・・・・・・。」