えっ?美冬?


僕には信じられなかった。

寝ぼけて間違えてかけたのかもしれんし。

そう思って丁寧に相手の名前を聞いた。


「もしもし?こんな時間に申し訳ありません。川島さんのお宅ですか?」


しばらく電話は無言のままだった。

そして、しばらくしてから女性の声が、こう答えた。

「私よ。」


僕の胸には悲しみと怒りが溢れてきていた。


「いったいどこに行ってたんだい?」


彼女は何も答えなかった。


「どうして黙って出ていったんだい?何か不満があったのかな?話してくれればよかったのに。」

「そう・・・・・。でも、そういうわけにはいかないものでしょ?」

「何故だい?」

「だって、あなたを悲しませない方法を選んだのよ。」

「部屋を出てゆくことかい・・・・・?」

「そうよ・・・・・。」


僕の目には涙が溢れてきた。












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