肉親の事で、とても大切な話合いがあるからと上司に嘘をつき、残業分の仕事を部屋に帰ってからやるということにして、終業時間になると、急いで部屋に戻った。
日常の時間の流れより早く部屋に帰ろうと思いを馳せている僕には、電車の速度が、とてもゆっくりに感じられ、辺りの人混みの忙しさよりも僕の気は焦っていた。
僕は、早足で、そして部屋の近くに来ると走り出し、慌ててドアを開けた。
”ドウシタノ・・・・・・・?”
僕の耳元でそんな声がした。
取り乱している僕を不思議そうな顔で見つめる美冬が、僕の思いの中にいる。
だが、美冬は部屋にはいなかった。
置き手紙もなかった。
”部屋に帰ったのかな・・・・・。”
”いったいどうしたんだろう・・・・・・。 ”
美冬の部屋に電話したが、誰も出なかった。
どうしよう・・・・・・・。
僕は焦りはやる気持ちを抑えきれず、どうすべきか何ひとつ確かな手段が思い浮かばなかった。
彼女の部屋に直接行ってみようか・・・・・・?
もしかしたら剛造のところに行ったのかな・・・・・・・。
ケンと会っているのだろうか?
それとも買い物に出かけたきりなのかな・・・・・・。