僕は、そう言ってふてくされる晴美が可愛く思えた。
「わかったよ。じゃあ明日はどうだい?」
「無理しなくったっていいのよ。明日は・・・・・。」
晴美はそこまで話して言葉につまったようだった。
「明日は何にもないよ。それとも、君の都合が悪いのかい?」
「違うけど・・・・・。本当に明日、大丈夫なの・・・・・?無理しないで。」
「無理なんか何もしてないから。明日は豪華なディナーを食べようよ。僕が奢るよ。」
「えっ?本当・嬉しい。・・・あっ、でもヒロの誕生日を祝うのに、あなたにごちそうしてもらったら何だか変だわ。」
「構わないよ。どうせ誕生日はもう過ぎちゃったんだから。」
「うう~ん。じゃあ、私がごちそうしてあげる!」
「いいんだってば。それだったら、君の得意のロールキャベツでも作ってもらおうかな・・・。」
「うん、それでもいいわよ。そういえばヒロと付き合っていた頃は、色々な料理を作ってあげたわね。覚えてる?」
自分の言ったことと晴美の話すことが僕に妙な寂しさを感じさせた。
急に美冬のことが気になって、しょうがなくなってきた。
晴美はそれに気付いたのか、心配そうな声で僕に尋ねた。
「どうしたの?やっぱり、明日は都合悪いの?」
「えっ、いや、そうじゃなくて。やっぱり僕がごちそうするよ。誕生日を思い出させてくれたお礼にね。」
「うん・・・・・。」
晴美は心細い声を出した。
「じゃあ、明日、麻布のハリスってお店に七時に待ち合わせようよ。」
晴美は少し黙っていた。