朝日はゆっくりと、その光の強さを増してゆく。僕たちは思い思いに心を象りながら、静かに、その光が強くなったゆくのを見つめていた。こんな自由な気持ちになれるのも不思議なことだと思った。
「ねぇ、私もレッドアイ飲もうかしら?」
「いいよ。ワインクーラーも出来るし、カクテルもカルアミルクティもあるよ。女の子が飲むには、ぴったりなお酒が、この部屋にはたくさんあるんだ。」
「何だか若者向けのお店みたいね。」
彼女の笑顔に応えるように僕はおどけた。
「ようこそ!ヒロユキカフェへ。心ゆくまで飲んでください。」
僕は笑いながら彼女の頬に口づけした。
「じゃあ、私も飲もうっと。えっと、何にしようかな?」
「当店自慢のカルアミルクはいかがですか?それとも何かご希望に沿うものがあれば、仰って下さい。」
「じゃあ、これと同じものをください。」
彼女はそう言って、僕の飲みかけのグラスを片手に持って喜んだ。
「かしこまりました。それでは、しばらくお待ちくださいませ。」
そう言ってふざけながら僕の気持ちは少しづつ冷めていた。
美冬は台所に立つ僕の側に寄り添っていた。
「何かつまむもの作る?」
「えっ、うん。」
僕は彼女を思わず抱き締め、彼女の温もりを感じていた。
「何かあるの?」
彼女は冷蔵庫の中を、ぼんやりと見つめていた。
「気のきいたものは何もないんだ。えっと・・・・・ツナの缶詰とスパゲティーと、それと・・・・・。」
僕が戸棚の中を探していると、実冬は泣き出しそうな笑顔で僕に抱きついた。