「あなたのことを好きになったり、他の男の人を好きになったりして、何だかとても矛盾だらけだわ・・・。このままじゃ、私・・・自分一人のことすら、わからなくなりそう。」

「自分がわからないのは君だけじゃないよ。僕だって自分の事なんか、何ひとつわかっていないんだから。」

「慰めてくれなくてもいいのよ。あなたのことだって、本当は、もっと大切にしてあげなければいけないのに、私ったら、いつの間にか、あなたにあまえてばかりいるわ。」

「いいんだよ。人間、そんな簡単に心の悲しみには耐えられるものじゃないし、それに君を慰めるつもりで言ったんじゃないんだ。ただ、君の言い方じゃ、僕たちの関係があまりにも惨めに思えるんだ。辛いよ・・・・・。」

「そう・・・・・。」

彼女は自分の非を認めまいとするように頷きながら、僕を遠くへと追いやる視線をしていた。


「だったら、どうすればいいのかしら?教えて。」

「僕に君の気持ちの全てを話してくれないか?」


僕は彼女の心の扉を、そっと開いてみたかった。そこにあるものが、ただ、漠然とした彼女の言い訳にすぎないとしても・・・・・・・。


「いいわ・・・・・でも、いったい、なんて言えばいいのかしら・・・・・?」

彼女は、そこで言葉を詰まらせ、遠い目をしてみせた。きっと彼女の、その視線の向こうにあるものが、彼女の背負う偽りの答えなのだろう。

”心を開いておくれ・・・・・。”・・・・・僕は、そう願った。


そして、ポツリポツリと美冬は話し始めた。












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