「もう起きたの?」
美冬が寝ぼけた声で、そう呟いた。彼女の言葉の響きは寂しく愛に渇望して冷え切っていた。
「うん、・・・もう眠れなくて・・・。」
「そう・・・・・。」
彼女は、その寂しさに包まりながら、まだ半分眠っていた。それとも目を開くのが怖いのだろうか・・・・・?
「まだ眠いのかい?」
僕の言葉に安心したように彼女は頷いた。
「なんだか、時間の過ぎてゆくのがとても早く感じるわ。ねぇ、今、何時?」
「今は、えっと八時ちょっと前だよ。」
彼女は寝ぼけた眼差しで時計のある場所を探していた。
「もう起きようかしら・・・。」
「眠たいのなら、まだ寝てればいいよ。」
僕は彼女の肩に、もう一度、シーツをかけてあげた。
「ありがとう。」
美冬は今にも泣き出しそうな小声で、そう答えてから僕の手を握り締めた。
僕がいなくなったら、君はどうなってしまうのだろう?悲しい考え方なのだろうが、人が独りで生きてゆけぬ限り、例え僕と別れても、彼女は誰か別の人を探すのだろう。そして、それは僕もまた同じことだ・・・・・。
僕もまた別の誰かを探すのだろう・・・・・。
彼女は寝返りを打って、窓辺にたまった朝陽を見つめていた。
「私って矛盾しているわよね。」
「えっ?」
僕は美冬の言葉に戸惑いを覚えた。