「美冬かい?どうしたんだい?」
美冬は、なかなか話し出さなかった。ようたく涙をこらえてポツリポツリとしゃべり始めた。
「やっぱり、あの人に新しい女の人がいたの・・・・・。」
「そうなのか。」
「私にはわからないようにしていてくれればよかったのに・・・・・。」
「うん。」
僕は晴美の言葉を思い出した。
「ねぇ、これから部屋にいってもいい?お願い。会いたいの。」
僕は断りきれなかった。
「あぁ、いいよ。」
「じゃあ、今から行くね・・・・・。ごめんね。」
美冬はそれから30分もかからないで部屋に来た。泣き疲れているようだった。
「入りなよ・・・・・。」
僕は、いつもより少しだけ冷たく彼女を部屋に招いた。
彼女は力なくハイヒールを脱ぎ、倒れこむように部屋に上がり込んだ。
「どうしたんだい?何か飲むかい?」
美冬は首を横に振って涙にくれていた。
「剛造さんに他の彼女がいたんだ。」
彼女は静かに頷いた。そしていつものようにポツリポツリと喋り始めた。
「いったい、私、どうすればいいのかしら・・・・・。やっぱり他に女の人がいたのよ・・・・・。私に、わからないように付き合ってくれればよかったのに・・・・・。それに、もう私と別れてくれればいいのに・・・・・。」
僕は遠い目で彼女の泣き崩れている姿を見つめていた。