「もう帰るの?」
「あぁ、だって今日も仕事だからね。」
「そうね。」
「晴美は仕事じゃないのかい?」
「今日は仕事休みなの。ずっと家にいるから・・・・・。」
僕からの電話を待っているという意味なのだろう。なんだか少しだけ、そのいじらしさが可愛くて僕はおでこにキスをした。
それから慌てて部屋に帰り、シャワーを浴びて服を着替え会社に出勤した。身体は昨夜の酒が残っていたのと、夜更かしとで、クタクタだった。仕事なんてこんなもんかな。いつになく僕の気持ちは全てを見つめる視線が冷めていた。ようやく美冬という精神的な錘から、解き放たれたからだろう。
僕は久しぶりに自由な気分だった。何だか仕事にも身が入った。
今夜、もう一度、晴美に電話してやろうかな・・・・・。女性の事を考えると、まだ美冬の事を思い出してしまう。
仕事時間も終わり、僕は真っ直ぐ自分の部屋に向かった。晴美に電話しようと思った。
昔、晴美と撮った写真を探した。”晴美に見せてやろう。きっと晴美なら喜んでくれるだろう。”
そんなことをしている内に二時間が過ぎた。慌てて慌てて晴美の部屋に電話した。
が、晴美は電話に出なかった。
どうしたんだろう?もしかして、まんまとはめられちゃったのかな。
何だか、おかしな気分になったが、とりあえず、もう一度電話することにして、昔の写真を眺めていた。
すると電話が鳴った。
晴美だろうと思った。何だかそんな気がしたからだ。
僕は慌てずに少しからかってやるつもりで電話に出た。
電話の向こうは美冬だった。
美冬は泣いていた。