それに彼女を忘れるいい機会だ。このまま思い出の中に閉じ込めてしまおう。

喪失したものに対する深い思いは、まるで人生の教訓のように重く、そして意味のあるものだ。僕は理解のもとに涙を流し、眠りについた。


それから僕は彼女を忘れるように努力した。

ケンの言うとおりなんだと。

剛造の周りに集まってくる女性は皆、自己満足を満たすことしか考えていないんだ。もう忘れよう。もう美冬のことは忘れよう・・・・・・・。


僕は昔、付き合っていた晴美に電話した。

晴美は僕のことが好きだったのだが僕は遊び半分の気持ちだった。晴美と出会ったののは、六本木のディスコだった。

友達とナンパしたんだ。その時、ケンもいたっけな・・・・・。

晴美の他にも付き合っていたじょせいは二人いた。晴美以外の二人の女性にも電話したけれど、”もう、真剣に付き合っているから”と言って、あっさりと断られた。


晴美だけがデートの約束に応じてくれた。

まだぼくのことが好きなのだろうか・・・・・?会わなくなってから半年にはなるけれど・・・・・。


晴美とは青山のイタリア料理の店で九時に待ち合わせた。晴美が、今、いったい、どんな女になったのか、期待してみた。



”いい女になっていればいいのにな・・・・・。”


晴美は九時半になって、ようやく現れた。肌に張り付くような黒いワンピースを着ていた。


”何だかあんまりあの頃と変わっていない。少し化粧が上手くなったかな・・・・・?”













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