投資銀行部門の仕事は激務であるというのは言われて久しいです。毎日3時帰り、3日帰ってない、2ヶ月以上休みなしetc...といった激務エピソードには事欠かず、それを様々な場で披露している方々もたくさんいるため、その実態についてご存知の方も最近では多いかと思います。
一方で、なぜそんなに働く必要があるのか、そんなに長時間なにをしているのかといった点についてはあまりイメージのない方も多いのかなと思います。以下、主にM&A案件の観点からが中心ですが、その理由について思うところです。
まず、何故これほどまでに仕事が長時間なのかですが、これは仕事の性質によるというところに尽きるかと思います。
投資銀行での仕事はざっくり言ってしまうと、クライアントに対しての提案と、その実行サポートに尽きます。プロダクトとしては大きく、M&A、株式、債券があり、部門内のプロダクトチームも概ねその区分になっているかと思います。
例えば、M&A案件で買収提案をする場合、対象会社はどんな会社か、その会社を買う理由はなにか、買ったらどんな良いことがあるのか(定量的/定性的)、なぜ今買うべきなのか、買うまでのプロセスはどうなのか、いくらなら買えそうか、なぜそのサポートを我々がするのか、等をクライアントに納得してもらう必要があります。
さらにその案件がエクセキューション段階に入ると、対象会社の詳細、買収の妥当性、価格の水準、等についてさらに突っ込んで詰めていく必要があり、それらについて相手と交渉していく必要があります。実際に案件がはじまると、相手が非協力的、他の買収候補者の存在、思わぬ市場の動き、対象会社の抱える想定外のリスク、対象会社経営陣とクライアントの相性の問題、折り合いのつかないタフな交渉、等様々な問題が噴出してくることとなり、それらに対しての対応を考え、クライアントにそのサインオフをもらう必要があります。
このような、投資銀行に求められる問いの大半には明確な答えはなく、そのクライアントの性質や置かれている状況等、様々なファクターによって最適解は変動します。したがって、バンカーは日夜その状況に応じた最適解を求めて、チーム内やクライアントとディスカッションするわけです。
そして最終的にはそれらについてクライアントに納得してもらう必要があり、そのための資料作りにジュニアは没頭します。投資銀行ではエクセル、パワポ作業が鬼のように降ってきますが、それは基本的にクライアントからの納得感醸成を目的としたものだと思っています。具体的な作業で言うと、ピッチ作成、各種のディスカッション資料や説明資料、参考資料、バリュエーション、DD、ドキュメンテーション等々あげるときりがないです。そして、重要なこととして案件は基本的に時間と人が圧倒的に足りないことが多いため、その労働時間は殺人的なものとなっていきます(なぜその状況を改善できないかは別のお話)
一方、投資銀行に近くて遠い存在として弁護士、会計士等の専門家がいます。彼等も投資銀行に劣らずの激務ではあると言われていますが、その時間の使い方はかなり異なります。
まず、これら専門家は使った時間と、クライアントから求められている専門性に基づいた付加価値の相関性が比較的高いので、報酬も時間ベースであり、それ故に業務上時間の効率性を高く求められる傾向にあると思います。したがって、基本的に無駄な作業というのはあまり発生しないことが原則です。
一方で、アイデアが付加価値の源泉として求められる投資銀行は時間が結果と連動しないことが多く、報酬も基本的には成功報酬となっています。したがって案件成立のため、より良いアウトプットに向けて時間を湯水のようにかけるインセンティブが働きがちなのかなと思います。また、その使った時間が無駄に帰すことも頻繁にあります。
この専門家と投資銀行の働き方の違いというのは、私が会計士出身ということもあり、様々思うところがありますが、本質的には上記のところにあります。その他詳細についてはまた別途、ブログに書いていければと思います。
この業界を目指されている方、興味のある方が、その向き不向きを判断する参考になれば幸いです。
