漫画家の内田春菊さんが大腸がんになられて、人工肛門を造設するまでと、その後のあれこれをえがいた続編の、コミックエッセイ2冊を読みました。

①内田春菊　著

『がんまんが　私たちは大病している』2018.1

〈紹介文⇩〉*****************************

革命的育児漫画「私たちは繁殖している」や幾度もテレビドラマ化された「南くんの恋人」など多数のヒット作を飛ばしている漫画家・内田春菊に、2015年突如大腸がんとの告知が……!
発覚から入院・手術に至るまでのドタバタないきさつ、抗がん剤の仕組みや副作用、わき起こる体や環境の変化、そして術前術後の子4人との激動の日々……。

がんと真正面から向き合いセキララに描く、著者ならではの闘病コミックエッセイ!

〈週刊文春 2018年3月15日号掲載分文⇩〉

漫画家・内田春菊さんが人工肛門(ストーマ)をつけるまで

2015年冬、56歳で直腸がんが見つかった内田春菊さん。

そこから翌年の春に人工肛門(ストーマ)を造設するまでをユーモラスに描いたのが『がんまんが』だ。

京都の大学に通う息子が帰省、すっかりスリムになっているのに驚き、彼が成功した「糖質制限ダイエット」に内田さんも挑戦するところから話は始まる。

みるみる痩せていくが、同時に便秘がひどくなる。お尻の肉が薄くなったせいか、硬い椅子に座るのも苦しくなり受診したら、肛門から2センチ程のところにがん。
ダイエット前から密かに進行していたのだ。

「診察結果を聞きに行く前、俳優やってる娘から“かあちゃん、がんと言われたら、ひと間おいて『ガーン! 』だよ"と演技指導が入りました(笑)。

病気は漫画家として大ネタですが、描く気になるまでに手術から1年かかりましたね」

結婚は3度、離婚も3度、子供は4人、うち第2子から第4子までと暮らしている。

がん判明の直前に年下の恋人と別れたばかりだった。

冒頭に「今回ほんっとに(男が)いなくてよかったと思ってます」とある。

16歳で家を出てから働き続ける内田さんは、男性を食べさせても食べさせてもらったことはない。

車の運転だけは男任せだったが、恋人との別れを機に、当時18歳になったばかりの娘と自動車学校に通い始め、抗がん剤投与中も諦めず手術直前に仮免許を取得、その後見事に本免許も取った。

～中略～

病気になる前は、ストーマはお尻にぶらさげるもの、くらいに思っていた。

実際は腹部に穴を開け腸からの排泄物が入る袋を装着する。

「中学生の息子はネットで『ストーマ』と検索し“梅干しみたい! "と叫んでた(笑)。

私はその時は怖くて、画像見られませんでした」

担当医が、お気に入りのへそピアスの邪魔にならない位置に施術してくれた。

へそ出しの衣裳で歌手活動も続けられそうだ。

ストーマのある日常は次作「すとまんが」で明らかになる。

評者:「週刊文春」編集部

②内田春菊　著

『すとまんが　がんまんが人工肛門編～』2018.10

〈紹介文⇩〉***************************

2015年の大腸がん告知、抗がん剤治療を経て、人工肛門を造設した漫画家・内田春菊。前作「がんまんが」では人工肛門になるまでがセキララに描かれたが、その後も目まぐるしい日々は続いていた――!?
手術後の体や環境の変化と不安、日常における人工肛門の反応や装具の取り付け方、障害者申請や保険金のシステム、再びの抗がん剤治療などがん治療にまつわるアレコレが重なりつつも、生活を守るため相変わらずの仕事量&免許取得へ慌ただしい毎日。

その一方で、子4人も不安を抱え、時には大ゲンカも…。

この大腸がんで内田春菊は何が変わり、そして何が変わらなかったのか。

病と家族と真正面に向き合った、闘病エッセイの新たなバイブルです。

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以下、2冊とおしての〈個人の感想です⇩〉

さいしょ1冊目を読んだきっかけは、以前読んだ内澤旬子さんの複数のご本にご友人として内田春菊さんのお名前がときおり出て来てたこと。

くわえてとくに、内澤さんの『ストーカーとの700日戦争』で「がん闘病中の友人」として、手術前後の大変なときなのにヤツ（←ストーカー野郎）のせいで迷惑かけてしまうのではないかと心配して連絡したところ、「内澤さんの身体は大丈夫？」と優しい言葉をかけてくださった友人として登場していたこと。

そこに「春菊さんはすでに『がんまんが』というコミックエッセイでがんを公表されている」とあったので、ぜひ読んでみたいと思ったのです。

近しい家族もがん闘病を経験していた、ということもあり。（大腸がんではなかったけど）。

“内田春菊”といえば、わたしが若い頃（いつ頃や？ｗｗ）サブカルチャーの女王として、マンガ家としても作家としても女優としてもミュージシャンとしても、プラス「恋多き女」の代表のようにもマスコミに出ておられたことを思い出したのでした。

いや～闘病中も寛解してるいまも、「4児の母」として（みなさんティーンエイジャーになってるけど）家事をこなして作品書いてライブやって舞台にかかわってトークショーやラジオ出演などなど、ほんっとーーに忙しくパワフルに活躍しておられるのね～⇩

えっ！？？まさか車の免許まで取っちゃうのっ！？？

そりゃーームリでしょーーー！？？

・・・・・

なんてまぁ、ひと言で言って、尊敬しかなかったです！

それと、マンガがおしゃれｗ
春菊さん自身の髪型やファッション（着物多し）も楽しめます。

もちろん「ストーマ」（←人工肛門や人口膀胱の総称）のこと、ぜんぜん知らなかったことばかりで、それをとっても細かく具体的にわかりやすく描写してくださってて、いやーーー興味深かったです。

2冊目は1冊目の続編（人工肛門編）なのですが、おへそ（へそピ有ｗ）の横のほうにとりつけられたｗストーマちゃん（表情があっておもわず“ちゃん”付けしたくなる）がなんとも可愛らしい。

↑

なんてつい軽く言いたくなっちゃうけど、ご当人としてはそりゃー、特に慣れない頃は取り扱いも処理もタイヘンで「これが一生続くのか…」と落ち込むのも無理はなかったけど、でもだんだんと慣れるにしたがって、たとえばYouTubeで世界のいろんなストーマや装具をファッショナブルなファッションの一部として紹介してる動画を見ていろいろ取り寄せて試してみるくだりなど、わたしはいま必要なわけではないのに、なんかわくわくしてしまった。（フキンシンならすみませんｗ）

とてもとても細かく実感に満ちた絵と文章が続くので、もしあたらしくオストメイト（←病気や事故などによって腹部に人工的に排泄口（ストーマ）を造設した人のこと）になった方がおられたら、なにはともあれこの本をご紹介ですね。

もちろんそうなる前の、まだぜんぜん自覚症状がなくて、でも今思えば「ちょっと出血してたな～」の頃からが順を追って書かれてて、そんな経緯も「そうだったのかー」の連続です。

そんなこんなで夢中で2冊読み終わる最後の最後に…

主治医のCT検査での「胸に腫瘍がありますね」…って言葉で終わってる……

えぇーーーー！？？？そんなぁ…

それでどうなったのっ！？？？

その続きは「わたしたちは増殖してる」（春菊さんの子育てマンガ）の18巻に書いておられるそうで、、、

気になって仕方ないので（注：いまもお元気で活躍中でおられるので「ダイジョウブ」だったとは思いますが）

ついそちらのマンガも読まねば！と思っておる次第ですなうｗ

〈追記〉

そういえば『がんまんが』って回文なんですね～

気づかなかったわ。

（続編の『すとまんが』は回文に出来なかったーーと作者さん悔しがっておられますｗ）

〈追記2〉

最後、胸の腫瘍が見つかったところはもちろんだけど、定期的なCT検査のたびに、ずっと、つねに、「再発」や「転移」の不安がぬぐえないんですよね。

春菊さんが基本明るくて前向きで、辛かったことも痛かったことも可愛いイラストでユーモラスに描いておられるので、それをついつい忘れてしまう。

子どもちゃんたちとのケンカや、一杯いっぱいになっちゃって爆発したくだりとかも、基本がユーモアとウィットに富んでるのでついつい笑っちゃうのだけど。

女性として貪欲なまでに、病があろうと、やりたいことをぜんぶやっちゃう彼女の生き方…、子どもちゃんたちとの関係も含めて、素敵です。

『がんまんが』『すとまんが』読みました。