『医者よ、老人を殺すな！』

和田秀樹著　2014年10月

　〈紹介文〉

歳をとればとるほど、病院のお世話になる頻度は高くなる。ところが、皮肉なことに、歳をとればとるほど病院や医者を信用できなくなる。残念だが、これが日本の老年医療の現実なのである。これはもう二〇年も変わっていない。どうすれば自分の親の世代、そして自分を含めた家族を守っていけるのかを考える。

〈個人の感想です⇩〉

精神科医として、高齢者専門の総合病院の精神科で長く老人医療に携わった経験を持つ著者の、1996年に出版された「老人を殺すな！」というまことに刺激的なタイトルの本を全面改訂したのがこの本。

当時は“痴呆”と呼ばれていた症状が“認知症”と呼び換えられたり、治療薬の開発があったり、介護保険の開始により家族の介護の場面に大きな変革があったり、、、などなど、「進歩」した面も大きいです、が。。。

けれど、オリジナル本で著者が『老年医学を研究面でも臨床面でもリードすべき立場にある大学病院の「老人科」という存在の中に、現在の老年医療の問題点や矛盾が集約されている』として、

〈勤務医から老年医学の権威ある先生方へ～【老年医学に関する十の公開質問状】〉を、「無作法を承知であえて」つきつけたのだけど、「残念ながらというか、予想通りというか」権威ある先生方からは一通の返事もこなかった、とのこと。

「しかしながら、このときの「10の質問」は現在の老年医学の世界でもほとんど改善されておらず、それどころか厚生労働省の方針で、高齢者も含めて、入院期間を短くするような方向性のもとで、余計にひどくなっている」面もある、、、と、和田先生憤っておられます。

おっしゃりたいことのひとつとしては、老年医学の最高峰である「はず」の「大学病院」って、はたして“ほんとうのお年寄り”が来ているのですか？

えらい先生方は、はたして“ほんとうのお年寄り”をホントに診ておられるのですか？？

、、、そんな質問に集約されているように思います。

以前も書いたけど、離れたいなか（隣は田んぼ＆前は畑）で一人暮らししてくれている夫の母がめっきり弱ってしまって、いまはなんとか週に一度、週末に帰ってできるお世話をする以外は、介護保険のもと「デイサービス」と「ショートステイ」と「訪問ヘルパー」さんのおかげさまで何とかやっていってます。

月に一度、「大量のおくすり」をいただきに(^^ゞかかりつけ医に介護タクシーをお願いして通院しているけど、もっと大きな総合病院や大学病院なんて、とてもとても、もう連れていけません。

「元気」じゃないと行けないところ、それが「大きな病院」です。

それなら、おなじみの「かかりつけ医」さんにならなんでも相談できるかというと…

いやいや、「こんなに大量のお薬飲んで大丈夫なのか？？」とか「だからソコやココが痛いって言ってるのに、痛み止め出しときますね～、で終わりなのかい？？」とか思わないでもないけど、なにかあったら介護保険の認定の診断書を書いていただかなくては…なんて思うと、「ものわかりのいい患者＆ヨメさん」でいるしかできないんですよね。

だから、本書ではホント正直に「自分で工夫して試行錯誤すること」、、、

調子が悪くなったら薬の飲みすぎや飲み合わせを疑って、「大事なおくすり」をやめてはいけないから「大事じゃないおくすり」（なんでそんなのあるんやー？って思うけど(^^ゞ）を減らすなどして調子が変わらなければそのまま減らして、調子が悪くなったらもとにもどす…なんて工夫のやり方も紹介されてたりします。

著者さんって、「老年医療の権威」に絶望しておられて、それならばと「自衛手段」を教えてくれてる、こじらせ老年医療精神科医の権威さんなんですよねｗｗ

（なんじゃそら～？？ｗｗｗ）

オリジナル版のときから「痴呆の“発見”は遅ければ遅いほどいい」と書いておられたけど、その認識はある意味では今も変わっておられません。

認知症と“診断”されることで、これまで閉じ込められがちだった認知症のお年寄りが、介護認定されてデイサービスなどで身体や心を使う場を提供されて、認知症の進行をある程度遅らせるという「早期発見のいい面」もあるけど、逆に“認知症”とレッテル貼られることで、たとえばお孫さんのお世話とか家事などを取り上げられてしまう（よかれと思って、だろうけど）ことで、認知症の進行を速めてしまう「早期発見のわるい面」もあるんですよね。

かくいう夫の母（これも以前書いたかも、ですが）

かれこれ5年くらい前かな？「あれ？こんなことも忘れちゃうの？？」ってギクっとすることが増えてきて、思い切って大きな病院の「物わすれ外来」を予約して、三か月待ちくらいで受診できたんですよね。

いろんな問診やテストなどがあって、結論…先生が「年相応ですね」っておっしゃったのです。

当時母は82歳くらいで、母本人はいっつも「年より若いわねー」って言われ続けてたらしく「ショックだ」って落ち込んでたけどｗｗｗ

わたしとしては「年相応ってことは…ふつうなんじゃん？よかったーーー」でした。

でもその診察をきっかけに地域包括センター⇒介護保険認定に結びつけることができて本当によかったし、なにより、あのときもし「認知症ですね」って宣告？されてたら、もう母を「認知症になっちゃったおばあちゃん」ってレッテル貼っちゃって接し方も違ってしまってたと思うんですよね。

いやー実際にはあれから、忘れることも出来ないこともやりたくないこと（やる気というか気力というか…）も増えて今にいたるけど、だんだん少しずつの進行だから、なんかちょっとずつ自然に「仕方ないよね～」って受け止められてるんですよね。

ハナシがそれましたが…

そんなこんな、いろんな対処の仕方とか、気の持ち方とか、ときには「老人性うつ」を疑ってみることとか（その場合は薬が効くから）現実生活に即した提言がいっぱい書かれてます。

刺激的すぎて「せんせい干されてるんじゃ？」って心配になるくらいだけど（実際どうなんでしょうね？ｗｗｗ）根底には、若い頃から多くのお年寄りを実際に臨床で診てこられた体験に基づく、お年寄り本人やご家族への愛情があるのが伝わるので、これからも続くであろう母とのおつきあいの手引書としてそばに置いておきたい…と思って、じつは図書館で借りたのだけどあまぞんさんで注文してしまいました。

じつは、ちょっと前にケアマネさんが「うつ症状かも」って心配になるような時期があって、そのときにかかりつけ医を通じて精神科の病院に予約してくれたんですよね。

家族同行が条件なので、平日に帰る都合がつかず、6月のはじめ頃になってしまったのですが。

ふつう「精神科！？？」ってビビりそうなところ、和田先生の本を読んでるので逆に楽しみだったりします。

なにかのご参考になるかもしれないし、また（いらんかもしれませんが）覚えとして書いておきたいと思ってます。

『医者よ、老人を殺すな！』読みました。