今日は久しぶりに身体を張ったお仕事。

いつものコンビニでHさんと待ち合わせをして、そのままホテルへ。

少しお茶がてら近況を話して、やることをやって「手間賃」をいただく。

そんな間も、私はぐるぐると彼女のことを考えてた。

 

 

いつ、彼女への気持ちが変わったんだろうかと思う。

ずっと、ごく普通の「友だち」でしかなかった。のに、どこかでフィルターが掛かった。

この気持ちはなんなんだろうなって、いつもふつふつ考える。

異性に自然に抱くような「愛情」なのか、それともアイドルへの「憧憬」のようなものなのか、

彼女に一体なにを求めているのか、彼女とどういう関係を築きたいと思っているのか。

まだ、自分の中でよくわからずにいる。

薄いシフォンのベールがまとわりついているように、透けて見えるようで、大事なものが見えない。

ただ、日に日に大きくなっていく執着心に、自分のことながら少し怖いと思っている。

世で言えば、「ストーカー気質」に当てはまるんだろうな。

もちろん、彼女を尾けたり、待ち伏せしたり、そんなことはしないけど。面倒だし。

でももっと知りたいと思う。

もっと、その中を覗いてみたいと思う。

自分が男だったら良かったのに。

そうしたら、踏み込めたかもしれないのに。

決して踏み込むことのできない、たしかに世界を二分する何かが目の前にあって、それがもどかしくて仕方ない。

 

今日、彼女に会った。

借りたいものがあって、彼女の家に取りにいく約束になっていたんだけど、

「彼と外でご飯食べるから」って、ご飯食べてるお店に。

 

 

小汚い居酒屋で、暖簾をくぐると彼女と彼の姿があった。

彼とも、直接の知り合いだ。行きつけのバーで二人並んだ姿をよく見ていたし、珍しくもなんともない。

でも、たしかに何かが違って見えた。

夫婦のにおいが、生活のにおいがした。

「あー、わざわざごめんねー」と駆け寄ってきた彼女は、いつもの彼女なのに、何かが違う。

 

 

あぁ、と思った。踏み込めない何かがそこにはあるんだなって思ったんだ。

目の前にいるのはたしかに彼女なのだけれど、私の知らない彼女がそこにいる。

彼だけが知っている彼女が、そこにいる。

私がどれだけ彼女を想っても、決して見ることのできない顔がそこにはある。

 

 

ものだけ受け取って早口でお礼をまくし立てて、逃げるように店を出た。

そして、無性に悲しくなった。

あんな二人を見たくなかった。あんな彼女の顔を見たくなかった。

私はひとりぼっちなんだなって、急にさめざめとしたんだ。

 

 

駅のホームの傍に立ったとき、暗闇の向こうから近づいてくる電車の灯がやけに幻影のように見えて、

眩しくて、美しくて、

思わずその光の中に飛び込んでしまいたくなった。

ほんの一瞬のことで、すぐに我に返ったけれど、

ふっと曲がり角を曲がるって、ああいう瞬間なのかなって思ったな。

飛び込む、飛び降りる・・・

それはたぶん、一瞬の心の隙のような気がする。

 

 

彼女が手に入らないことに絶望したんじゃなくて、

単に寂しいんだと思う。

いつもずっと寂しい。

それが、はっと可視化されて覆いかぶさってきたから、きっと消えたくなった。