先日やっと「牯嶺街（クーリンチェ）少年殺人事件」を観てきました。

正直おケツ平らになったんじゃねーかという長さでしたがw

伊達に４時間じゃないすね:(；ﾞﾟ'ωﾟ'):

この映画、実に難しくてですね、私には。

1960年代の台湾についての知識がほっとんど無いので←勉強キライ

観終わったあとに買ったパンフレットを読んで、やっと理解した点も多かったというていたらくw

でもなぜかわかんないまま観ていた上映中に、受け取るものはキッチリ受け取らされるという映画でした...。説明意味不明ですんません。

予備知識無しで観たかった、プラス、よそさまのレビューとか見たら感想書けなくなりそうな映画なので、解りづらさ丸出しの感想になると思われます:(；ﾞﾟ'ωﾟ'):←いつも通り

ネタバレせずに書くというのが非常に難しくて。なのでネタバレつつ書きますすみません。

「牯嶺街（クーリンチェ）少年殺人事件」

(英題：A Brighter Summer Day)←観終わると英題が心に染みるぜ

監督：エドワード・ヤン

出演：チャン・チェン、リサ・ヤン、ワン・チーザン、クー・ユールン、タン・チーガン、ジョウ・ホェイクオ、リン・ホンミン、チャン・ホンユー、ワン・ゾンチェン、タン・シャオツイ、ヤン・シュンチン、ニー・シュウジュン、ワン・ウェイミン、チャン・クォチュー、エレイン・チン、ワン・ジュエン、チャン・ハン、ジャン・シウチョン、ライ・ファンユン、シュー・ミン、シュー・ミンヤン

あらすじ↓（ほぼストーリー全部なのでリンクにしときます）

http://movie.walkerplus.com/mv16294/

そもそも何故観ようかと思ったかというと。前からタイトルは聴いたことがあったのに、なぜかどこでも観られない映画で。日本で配給した会社が倒産したり、権利関係が複雑でDVD化されてなかったそうです。

なのにいろんな人が凄いおススメしてる映画だったんですね。

ポンジュノ監督の10選にも入っていて、いつか観たいなあと思っていたら、デジタルリマスター化されて日本で上映されるという話が去年末あたりに聞こえてきました。ツイッターのトレンドに入る勢いで広まったので、こりゃ今観とかなくちゃいけないという焦燥感www

というわけで観てきましたw

なんていうかもう本当に、確かに凄い映画でした。でも好きかって言われたら、凄く人におススメしたいのに好きじゃない映画ですw

なんていうか痛ましいし、苦いし、ツライ。

でもなんかすげえ映像がカッコいい。

でも一度は観といて欲しい。

（ひどい感想すぎる件）

この時代の台湾は日本統治が終わったばかりで、主人公小四（シャオスー）が住んでるのもその名残の日本家屋なんですね。事件に繋がる凶器も日本人が屋根裏に置いていった日本刀だったりするわけです。シャオスーの一家は中国本土から移住してきた「外省人」と呼ばれる人たち。そしてそれに対してずっと台湾に住んでいた裕福な「本省人」たちがいるわけです。太平洋戦争で日本が負けたことによって、昨日の敵同士が同じ国ということになって、同居することになったわけですよね。

シャオスーの父は公務員、お母さんは元教員というインテリ一家ではあるんですが、お母さんの就職はなかなか決まらないし、生活は貧しいし、外省人として暮らす息詰まりがあります。シャオスーのお母さんの愚痴「日本と8年も戦ったのに日本家屋と日本の歌...」っていう台詞、日本人の私としてはそこもすごく響きました。

そんななか、お勉強が出来るシャオスーはお父さんの期待の星でもあるんですが（長女賢い、長男いまいち、次女敬虔なクリスチャン、次男シャオスー、次女という兄弟姉妹構成）勉強は出来るんだけど実は学校さぼったり悪いやつとお付き合いあったりする子なわけです。お父さんは期待の星であるシャオスーを夜間中学じゃなくて昼間部に転籍させたいと願っていて、試験の点数で先生に直談判しにいくくらいシャオスーに期待してるわけです。

子供たちの間にもものすごいヒエラルキーがあって、それが常につきまとっている。そんななかシャオスーはそのあたりのグループのボス（わけありで逃亡中）のハニー（なんで名前がハニーとか可愛いのかわからん）の女である少女小明（シャオミン）と出会います。結果、最終的にシャオスーはシャオミンを殺してしまうという暗澹たる結末なんですが...。

それが普通に若者の恋の揉め事とかで語れるものではなくて。出口を求めた世の中への鬱憤と少女への愛憎が「殺人」という形で出てしまったという感じ。

少年たちが妙にピュアなのに対して、出てくる少女たちは非常に逞しく思えます。もちろん彼女たちの持つ鬱憤や悲しみも相当なもんなんですけども。

うろ覚えですが、シャオスーがシャオミンに

「ボクは全部知ってる。ボクだけが君を救える」と言うんですね。するとシャオミンは
「私を変える気？　この社会と同じ、何も変わらないのよ」

バッサリですわ:(；ﾞﾟ'ωﾟ')::(；ﾞﾟ'ωﾟ')::(；ﾞﾟ'ωﾟ'):

そしてｶﾞ━━(;ﾟДﾟ)━━ﾝ!!となったシャオスーはシャオミンを刺してしまいます。

もうへヴィすぎるー！

ものすごくリアリストな女の子と、夢見がちな男の子という痛ましさ。

この映画闇と光がすごく印象的だったんですけど（これについてはまた後で書く）、息が詰まる闇のような世界の中で、一見シャオミンだけ真っ白な感じなんですよ。色白ちゃんで。

どこか謎めいていて大人びていて白い。しかし本当は諦めていて解りすぎていて黒い。そんな少女なわけですシャオミンは。

そしてもう一人出てくる少女小翠（シャオツイ）。彼女もまたシャオミンと同じようなことを言うんですよ。ちょっとシャオツイといちゃつこうとしたシャオスーに、

「私のこと軽蔑してたでしょ。私が変わらなければ相手にしない。自分勝手ね」と。

女の子たちはある意味柔軟にしたたかに生きているんだけど、実は芯の部分は変わらない、あんたら男が変えようなんて甘いのよっ！って感じ(；・∀・)

私は女なので、シャオミンのしたたかさが凄く目に留まるんかなあ。

まあそうじゃなくてもそもそも恋人ハニーが逃亡したのも全217グループ（ハニー率いる小公園グループと敵対してる）のボスとシャオミンを獲り合ったからだし、次にボスになりそうな子やお金持ちの子、果ては学校の医師とまで上手くやって生き抜いてるという凄さ。

しかし悲しいけど、いや悲しいから、シャオミンは黒いんだけど魅力的なんですよこれが...。意味解らん書き方しか出来ないけど。

私印象に残ってるシーンがあって。

脚を怪我したシャオミンが学校の医師に手当てしてもらうんですが、あの生々しい白い脚のエロスｗ

生き抜くために無意識なんだか有意識なんだか、本当にエロティックに医師に脚を投げ出すんですよね。美しかったわあそこのシーン。

ふと「海にかかる霧」のホンメの脚と三つ折ソックスについて熱弁ふるったことを思い出しますww

恥じらいのエロスのホンメ、無邪気を装った下のガチンコエロスのシャオミンというかw

あと切なくなったのはシャオスーの兄。お勉強のできるシャオスーと違ってお兄さんは家族の問題児と位置づけられちゃってんですね。本人もそれをよく解っている。でもシャオスーがお金が必要だと知るとこっそり何も聞かずに手渡してくれたりする優しい兄でもあります。

シャオスーがお母さんの大事な時計をお金のために持ち出してしまうんだけど、父と母はためらいもなく兄のせいにするし、兄は最後まで弟を庇って自分が代わりに父に殴られまくるんですね。真実を知っている次女は止めに入ろうとするシャオスーを引き止める。あんたがやったと知ったらお父さんはもっと悲しむと。切ない....お父さんの辛さも理解していて、自分たちも追い詰められてるのにまだ思いやるんだよね。子供って時として親のためにすごく自己犠牲する....

さきほど書いた「光と闇」ですけど、凄いなあと思ったのは懐中電灯。

映画の撮影所から盗んだ懐中電灯をシャオスーは寝床である押入れで愛用してるんですが。押入れって子供のとき入るじゃないですか。入って自分だけの世界作ったでしょ！？ふすまを閉めて、真っ暗な押入れのなかでポチっとともる懐中電灯。外では両親のシリアスな会話が繰り広げられているんだけど、それが聴こえてはいるんだけど、あの閉じた押入れの中はシャオスーの小さな安全圏というか....なんか子供時代を思い出した。守りきれない自分だけのほんの一時の世界みたいなさ。

それと学校でシャオスーに向かって真っ暗なトンネル（？）からボールがポーンと飛んでくるシーン。（そのあとその相手とシャオスーは喧嘩する）

あそこも好きだなあ。あれ観てポンジュノ監督の「追憶の殺人」のトンネルを思い出したのは私だけかな。

そしてなんといっても殺されたハニーの仇討ちにハニーの仲間が217グループを闇討ちにするシーン！ほとんど真っ暗な中で凄惨な殺し合いが展開するんだけど、時々照らされる殺戮と闇のコントラストが超迫力。

とりとめもなくしか書けなかったけど。

大人社会の閉塞感をもろにかぶり、好きな女の子は他の男と関係しまくり、父の期待に押しつぶされぎみであり、なんの躊躇いもなく好きな女の子を軽く扱う友達もあり、悪にもイイ子にもなりきれず、優しい兄を身代わりにすることになり....なんとか好きな女の子に「俺だけはお前をわかってるぜ！守ってやるぜ！」ってヒーローになって自分を奮い立たせようとした挙句、女の子には「アタシも世の中もアンタの思い通りになんて変わりゃしないわよ！ガキね！」と罵られ。

刺しちゃったんだなと。

救いがないよ...........(´；ω；｀)

という「牯嶺街（クーリンチェ）少年殺人事件」でした。

機会があったら観てみて下さい。

おすすめしたことになってんだろうかこの感想..........

この感想を書くのがヘヴィで、ぶっ飛んでて面白いときいた映画「地球を救え！」に逃げてたんですけども、この映画も凄かった件。

これについてはまた後日。

追記

あとこれ切なかった、なんだか。

小四（シャオスー）のお姉さんへの最後の手紙の自分の名前のサイン。

警察は顔の絵が描いてあると思うんですよね、サインではなく。

ああ、子供だったんだよ、本当に。しょうがないくらい幼かったんだと思えて。

こんなやつね↓（変な線は無視してね）

悲しすぎたーーーーー！

「牯嶺街（クーリンチェ）少年殺人事件」ネタバレ感想