『うかつだった。』

そう思った時にはもうあとの祭りだった。

『まさかここに賊のアジトがあるなんて。』

丘を登ってきたエレナは賊たちとそこで鉢合わせをしてしまった。

ざっと二十人ほどがエレナの目の前にいる。

近くにいる仲間とエレナを指差して談笑している者や、

じろじろとなめるように見る者やみな思い思いに見ている。

エレナは蛇に睨まれたカエルのようにその場から動けずにいた。

背中を嫌な汗が流れていく。

目だけを動かして逃げ道を探す。

左側は急な斜面で草木が生い茂っているため登るのに手間取りそうで、

すぐに追いつかれそうだった。

右側は崖になっていて道なんてない。

『とすると後ろか。

来た道を引き返せば下り坂だから逃げ切れるはず。』

目の前の賊たちに気付かれないようにそっと重心を後ろに移動する。

「よう、おめえら。

客人か。」

突然エレナの後ろから男の野太い声がする。

反射的にエレナは右の崖を飛び降りた。

「おい、おめえら。

下だ。

追いかけるぞ。」

後ろから声をかけてきた男が賊たちに命令している。

『あいつが賊のカシラか。』

エレナは落ちながらそう思った。