息子が生まれた日のことは、昨日のことのように覚えている。
いつものように朝起きると、妻もほどなく起きてきて、
「なんか今日生まれそう…」 と。
職場と妻の母に電話をして、休みをとる段取りをしつつ病院へ。
通された仮の部屋で横になって待機することに。
妻は違和感を訴えつつも、はっきりとした陣痛がまだ来ていない状態のまま30分から1時間くらいは経っただろうか。
その間、
「どうですか?」
と、何度も様子を見に来てくれていた看護師さんがあまり変わらない状況を見て、
「今までの経験上、今のような状態だと、このまま落ち着いて今日はまだ生まれないと思いますので、いったんお帰りになったほうがいいと思います。」
と言ってきた。
でも、妻の不安や違和感は続いていて、帰ることを決められずにいると、ほどなく妻の母が到着。
ちょうどその日が診察の予定だったので、一度先生に見てもらってから決めようということになり、産婦人科の待ち合いへ。
ちょうどそのあたりから、様子が変わり妻が痛みを訴え始めた。
情けない話、男の僕には何もできず、義母がそばでつらそうな妻の腰をさするのを見ていることしかできなかった。
でも、そこからの展開が速かった。
妻が診察室に入って3分としないうちに、車椅子に乗った妻が看護師さんに押されて慌ただしく飛び出してきた。
「〇〇さん、緊急分娩です…!」
ついて行こうとした僕に看護師さんが、
「入院の手続きをしてください」
と言ってきたので、言われるまま手続きのため妻とは別の場所へ。
義母は妻に付き添ってくれていた。
ばたばたと手続きをして分娩室へ向かって、そのまま義母と部屋の外で待機。
部屋の中からは妻の息む声…
どれだけ経ったか正確な時間は覚えていないが、部屋の中から赤ちゃんの大きな泣き声が聞こえてきた。
その声を聞いた瞬間、涙が出てきたのを覚えている。
義母の手をとって泣いた。
単純に嬉しいなんて気持ちだけで出た涙ではないのはわかった。
部屋から出てきた看護師さんが
「おめでとうございます。無事に生まれましたよ。」
「ありがとうございます。どっちですか?」
「男の子です。」
息子が生まれた日。
朝起きてから、ほんの3〜4時間ほどの間の出来事だ。