これが最期なんて、思っていない。

 

五月六日朝、住宅地に幽かに響く衣擦れの音。

近眼というのは、接近すればする程良く見える。

棟方志功の亡霊の様な視線で、二、三本飛び出した和毛を凝視する。

 

あの時の夜を憶えているのは、本当に自分だけなんだろうか。

 

花見シーズンに再び出会った彼ー眠いフリが得意なーは、済まなさそうに私に日本酒を酌んだ。

私は王選手と長島選手が兄弟の契を結んだように、

「よお!兄弟----。」

と声を掛けた。

出逢った時から「そういう女性だ」と判っていたので、他に「兄弟」が居たとしても、私としてはお構い無しだ。

 

ただ、◯◯を飲まさせないやら、指輪を強要するやら、その「兄弟」は近頃穏やかでは無い。

やはり、男は女を「嫁」や「家内」にしたいのだろうか。

「女」を「家」の「中」に閉じ込めたいんだろうか。

本名で呼んでいる以上、恐らくそうなんだろう。

 

 

 

才能を一切認めていないのだろう。

 

 

 

大事な人だから、二回しました。

勿論これが最期なんて、思っていない。