あっ、と思ってチャンネルをBS1にあわせる。

その画面は、サングラスの下に流れ落ちる水分をリストバンドで何度も拭うアップの映像だった。

印象的だ。

もちろん汗もあるだろう。
しかし、あれは間違いなく涙。
  

先週から時間が合えば中継を見るようにしていた。
3000本が近づいてからの解説はオリックス時代の打撃コーチであり、「イチロー」の名付け親でもある新井宏昌さん。そこにMLB経験者が絡むという粋な人選。
技術的にも、選手が何を狙っていてそうなるのかも、よくわかる新井宏昌の解説は僕は大好きだ。
 
そんな中で、
普段のイチローなら簡単にレフト方向にヒットの打てるボールなのに、右足がやや開き気味に出ているので力を入れて引っ張りにかかってますね。
という言葉をよく聞いた。
 
僕もなんであのやや外角高めのイチローなら一番ヒットの打ちやすそうなボールを簡単に見逃すんだろうと不思議に思って見ていた。


そこで僕の勝手な想像。

イチローは3000本目をホームランで決めようと考えていた。
そのための練習だった。
2999本目は、ある意味イチローらしい3塁内野安打だったが、引っ張りにかかってバットの先にかすったものだったのではないか?

そして今日の3000本目。
惜しくもフェンス直撃の3塁打。

そこでイチローの涙。
3000本目をホームランで決める。

ダメなら引退。
 
イチローはそんな気持ちを固めていた?
 
「終わったな。」
 
の涙。
  
 
そこまで感じ取れてしまうイチローの非常に珍しい涙だった。

それ以後守備についてもサングラスを外すことはなかった。
  
もちろんまだまだ続けてくれるだろうし、僕も続けて欲しい気持ちはだれにも負けない。

中継に後ろ髪を引かれつつ涙ながらに出勤。
ずっと生で見ていたかった。