ローマ・オリンピコでの開幕セレモニーにおけるアンドレア・ボチェッリのトゥランドットに続いて行われたオープニングゲームで、トルコに快勝したイタリアが、フルマークかつクリーンシートでグループリーグ1位で通過し、決勝トーナメントでは、楽な試合は一つもなく、かつ攻守に大活躍のスピナッツォーラを、ベスト8のベルギー戦でアキレス腱断裂の負傷で失っても、一度もリードされる事なく勝ち上がり、決勝はウェンブリーで、ホームのイングランドに開始2分で先制ゴールを許したが、粘り強く愚直に攻め続け同点に追いつきPK戦の末、53年振りのEURO制覇、34戦無敗のオマケまでつく、サクセスストーリーは、劇的な復活といって良いだろう。
何せイタリアは、3年8ヶ月前は、ロシアワールドカップの欧州予選プレーオフで、スウェーデンに敗れ、ワールドカップにすら出場できず失意のどん底であったのだから。
そこからマンチーニ監督のもと、ソリッドで狡猾な守備はそのままに、攻撃時は左サイドバックをFWの位置まであげ、かつ右サイドバックを含めた3人のDFもハーフウェイライン近くに陣取り、チーム全体でコンパクトな陣形を保ち高いポゼッションを武器にした攻撃的なサッカーにモデルチェンジしての、EURO制覇は、見事という他ない。
過去のイタリア代表に比べると、真のスーパースターと言える選手はいないが、誰がでても高いレベルで同じスタイルのサッカーができる戦術理解度と、高い団結力と献身性で、チームとしてのクオリティを、かつてない程に高めた好チームである。
スーパースターがその名に恥じず活躍して、ビッグトーナメントを勝ちぬくのも良いが、チームの力で、個の力の差を埋め勝ち抜くのも、また良いではないか。
今大会は、中堅国であるデンマーク、スイス、チェコ、ウクライナの躍進が目立った大会でもあった。どのチームも、単純な個の力では劣っても、相手や局面に応じて、戦術やフォーメーションを試合中に変化させる戦術理解度とスキル、団結力で、チームとして上回れる事を証明してくれた。スイスが、フランス3対1から追いつきPK戦で下し、スペインにはPKで敗れたとはいえ、1対1に追いつきフロイラーを退場で欠いてからも耐え抜いた戦いは、象徴的な試合であった。
またコロナ禍特別ルールで、90分間で5人、120分間で6人まで増えた交代枠が増えた事により、アグレッシブな交代を行う監督も多く、最後までゴールを目指すスリリングな試合が増えたと感じた。結果的に1試合当たり最高のゴール数を生んだことからも、エンターテイメント性をあげることに繋がったと実感している。特にEUROやワールドカップのような過密日程では、体力的にも厳しく、3人の交代枠はゲームのクオリティを落とし、選手の怪我にもつながると、随分前から感じていた。是非ともこのルールを恒久化してもらいたい。
さてカタールワールドカップまで1年5ヶ月、まだ予選も終わっておらず出場国が決まっていないのだが、個の力を全面に出すタレント軍団が勝つのか、チームとしてのクオリティが高いチームが勝つのか、この構図は一つの軸になるのではないか、ここ数大会続くヨーロッパ圧倒的優位の状況を覆すチームが現れるのかも大きな焦点になるだろう。今から開幕が待ち遠しい、それまでにコロナウィルスが収束している事を願うばかりである。