“月が綺麗ですね”
情緒を重んじる日本文学に舞い込んできた西洋文学。“I love you”を当時、直接的な言葉「愛してる」ではなくて「月が綺麗」だと訳した明治時代の大文豪・夏目漱石。
たくさんの名作を世に出した彼は、また多くの小説家を自分の門下から出しました。その中の一人が女性作家・野上弥生子です。
当時は少なかった女性作家であり、有名な文豪の門下生だった野上弥生子。直接的な表現をしなかった当時の日本人女性はどのような恋愛観を持っていたのでしょうか?
“いかに見栄えしない草でも春と共に花になるように、人は恋することによってそれ自身を花咲かせる。”
“愛と憎しみは双生児である。愛すればこそ憎むし、憎むほどの想いがあって初めて愛するのだ。”
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やはり情緒を重んじる当時の人というだけあって比喩表現が使われているんですね。
花は綺麗な花を咲かせるのに、1年を通して夏には水分不足に耐えたり、秋には腹を空かせた害虫に危険をさらされたり、そして冬には厳しい寒さを乗り越えていきますね。
恋愛はどうでしょうか?
好きになると、毎日会いたくて仕方ないのにいざ会うと
「あー顔強張って一言も話せない・・・」という切ない気持ちに胸を焦がしたり、
強力なライバル出現に
「もたもたしてる場合じゃない!」と焦って空回りしたり、
せっかく付き合えたのに、なかなか会えなくて恋愛氷河期に突入して
「も゛、も゛、もうダメがもじんない゛・・・!」と
そうやって様々なことを乗り越えて恋を成就させるのを花の一生と例えるのは、とても分かりやすいですし、また作家さんらしい表現でもありますね。
そして「憎らしいほど愛してる」ではないですが、喧嘩や些細なことでの言い合いが増えていくのもまた相手のことを真剣に好きになっているからだということでしょうか。
日光は花が育つのに必要ですが、強すぎれば枯れてしまいます。野口弥生子の言葉を借りれば、暖かい光は愛ですが、強すぎると憎しみ。でも、それもまた2人のオリジナルの花を咲かせるのに必要だと言えますね。
日の光が強すぎるのなら、2人で影を作ってあげてもいいと思います。
害虫が多くなってきたと思ったら、一緒に駆除して守ってあげましょう。
そして、寒そうだなと思ったら2人で包んで温めてあげればいいんです。
そうやって一緒に育てた花が綺麗じゃないはずないですね!
「地味」「パッとしない」という人もいるかもしれないですが、そこまでの花を咲かせるのにどれだけの時間と努力を2人で掛けてきたのか思い返してみましょう。そんな努力をしていない人には絶対に咲かせられないものです。

情緒を重んじる日本人。その特色が文学に強く表れていた明治時代に、女性作家という花を咲かせて輝いた「野口弥生子」。
女性の感性はどんな時代も複雑で深い、でも常に思いを貫こうと必死である女性の姿を、厳しい四季を乗り越えて自身を咲かせようとする花に例えて伝えようとしていました。
よく「女の心は山よりも高く海よりも深い」と昔のことわざを冗談めかして言いますが、明治を生きた文豪なら「女の心は月のように眩く、野花のように凛と咲く」と訳したもしれませんね!