【回答】「徹底抗戦・軍事解決」論をめぐって | ロシア・CIS・チェチェン

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おいプーチン、チェチェンから撤退しろ!今ならまだ間に合うぜ by アンドレイ・バビーツキ

 

佐藤です。

 

紹介して頂いたコメント等、ざっと読みました。大前提ですが、やはり久下さんら「徹底抗戦・軍事解決派」は、ウクライナをめぐる現実が分かってませんね。例えば、ミンスク合意1・2は、「ウクライナ軍増強のための時間稼ぎだった」と、メルケル、オランド、ゼレンスキーが開き直って告白しましたが、ドンバス戦争中、親ロ派住民は、シェルター生活を余儀なくされたり、ロシアなどへの避難民になったりしました。当然、死傷者も多数出ていますし、捕虜虐待や住民虐殺も行われています。これは、国連人権高等弁務官事務所も、認める事実です。また、OSCE停戦監視団の資料によると、2022年2月14日から、ウクライナ軍が猛攻撃を開始したことが分かります。ドネツク・ルガンスク両人民共和国の要請にもとづく、ロシア「平和維持軍」派遣(集団的自衛権)は、2月24日です。あと是非知って欲しいのは、ソ連邦崩壊後のウクライナでは、親ロ派政権と親EU派政権が、交互に政権交代していたという事実です。要するに、票が拮抗している。そこで地域別投票行動を調べると、親ロ派支持者と親EU派支持者が、かなり入り組んで分布しています。たしかに、親ロ票はクリミア95%以上、東部2州は60~70%程度ありますが、他の地域は入り組んでいて、キエフにだって親ロ派住民は存在します。それゆえ私は2014年以降、「軍事的に争うぐらいなら、国を東西に2分し、住民は好きな方に移住してはどうか」と、ウクライナ人に提案したことがあります。「それは、分離主義だ」と、一蹴されましたがw。

 

前置きが長くなりましたが、結論的に言うと、私は「即時停戦・交渉解決派」ですね。双方の占領地域には、国際社会が停戦監視団として入り、双方ともに住民虐待などやらせない。ロシア軍の撤退に関しては、交渉の中で決めればいいことです。ただし、西側による「ミンスク合意」(停戦合意)を守る気はなかった、という深刻な国際法違反は、悔い改めさせる必要があります。アゾフスターリ製鉄所をめぐる攻防では、国連監視下で、市民が人道回廊で避難し、アゾフ連隊は投降し捕虜になり、後に「捕虜交換」で生還しました。私は当初、徹底抗戦主義のアゾフ連隊が「玉砕」し、市民は「集団自決」するかと思ったのですが、こうした愚かな展開にならず良かったです。いずれにせよ、この事例で分かるのは、国連監視もそれなりに機能しているということです。逆に、ウクライナ兵がロシア人捕虜を次々と射殺する動画が出回り、国連人権高等弁務官事務所が、本物だと認定しました。したがって、国際機関の監視下に置くのがポイントかと思います。撤退に関しては、私も一旦は撤退した方がいいと思います。「一旦」というのは、交渉内容や再住民投票の結果によっては、ロシア「平和維持軍」の駐留はあり得るからです。

 

とにかく、外交努力によって戦争は避けるべきで、不幸にして戦争勃発となった場合は、可能な限り早期に停戦を目指すべきです。久下さんら「徹底抗戦・軍事解決派」は、様々な戦争の例を出していますが、例えばベトナム戦争の場合、今でも枯葉剤という化学兵器被害は続いています。意識不明の子どもが多く生まれ、親に捨てられ、平和病院で植物人間状態です。米国は、枯葉剤による環境破壊は認めますが、人的被害との因果関係は認めないので、国交回復しても、一切保障はありません。「ベトコンが徹底抗戦して米国に勝利した」とよく言いますが、早期停戦していれば、こんな事態にはなってないでしょう。第二次世界大戦も、その末期において、日本も停戦を模索していたのは有名な話です。この時点で停戦が実現していれば、沖縄戦やヒロシマ・ナガサキの悲劇は、避けられたでしょう。

 

補足しますが、久下さんら「徹底抗戦・軍事解決派」がいうレジスタンスは、市民が銃を取って戦うことも含んでいると思います。現在、ウクライナでもそうなっていますが、非正規軍が私服で戦えば「便衣兵」になり、それだけで国際法違反です。「軍民分離」していませんから、敵に攻撃されても仕方ない。これはインフラを含む建物も同じで、「軍民分離」していなければ、攻撃されます。米国もウクライナもロシアも国際刑事裁判所に加盟してないとはいえ、こうした国際人道法の発達は重要で、遵守させる必要があります。民間人に、戦闘行為を呼び掛けてはいけない。国際人道法は、まだまだ未確立ですが、その根底には「非戦」の思想があり、市民には「非暴力抵抗」権のみ認めているように思います。

 

最後に、木村公一牧師は、「公正と信義に信頼し」(憲法前文)という言葉を大切にしているようですが、世界宗教者平和会議の提唱者でもある、立正佼成会の庭野日敬氏は、「危険をおかして武装するのではなく、平和のために危険をおかすべき」と言っています。私は経営と対立していますからw,こんな言葉は忘れていたのですが、「戦争に反対する在日ロシア人の会」で、似たような議論になりました。

 

「プーチンによる侵略戦争反対!」―戦争に反対する在日ロシア人らがアピール行動 (labornetjp.org)

 

こうした、覚悟・勇気は必要です。しかし現在のロシアでは、反戦行動=>逮捕=>戦場送りとなり、「良心的懲役拒否」さえ出来ない状態です。動員された若い兵士が、戦場に送り込まれる直前、「ウクライナ人を殺したくない」と、自殺したというニュースがありました。私はこのロシア兵の死を、無駄にしたくない。他方、在日ウクライナ人の行動は鈍く、募金集めが中心ですが、相変わらず、「戦争勝利」「ロシア人の排除・殲滅」を叫んでいて、最近は日章旗を持った右翼と一緒にデモをやってます。さらに、私が連絡を取っているベラルーシ労組の仲間は、軍事物資を運ぶ列車を止めた「罪」でで12人逮捕され、懲役10~15年を求刑されています。それでも、ドイツに避難した臨時労組幹部と、サイバーパルチザンは、今後もロシア軍のベラルーシからキエフへの進軍を、阻止するつもりです。

 

とにかく、双方の「正義」と「正義」がぶつかり、戦争ともなれば、非人道的行為が双方に発生します。双方が熱くなり、「憎しみの連鎖」に陥ってますから、喧嘩を止める仲介者が必要でしょう。どちらかに、「寄り添って」はいけない。むしろ、日清・日露戦争と1・2次大戦を経て、戦後平和憲法を手にした日本の教訓を伝えるべきです。核の危険を知っている私たちが、絶対平和主義の意義を、世界に向かって発信すべき時です。そもそも、戦争当事国の損害は大きく、この場合、笑うのはアメリカと中国だけです。「即時停戦・交渉解決」で、当面は「民族共存」にもっていく。ロシアは多民族国家ですが、ウクライナはバンデラに英雄の称号を授与し、ユダヤ人に抗議されてるぐらいですから、「民族共存」は困難かも知れません。その場合は、ウクライナでも反政府運動をするしかなく、既にそうした動きもあるようです。

 

2023年3月9日